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16 もう、悲しまないで

 大型アニマの戦いから数日後、ハルは熱を出して寝こんでいた。

「ごほっ、二人とも入ってきちゃだめだからね」

「わかった、ゆっくり休んでいろよ」

「うん……」

 頷いたハルは、ゆっくりとドアを閉めた。

 そしてマサとユキは、リビングへと向かう。

「ハル殿、大丈夫でござろうか……」

「さぁな……ユミのこともあるから、相当こたえているのかもしれないな」

「俺たちには、なにも出来ないのでござろうか」

「まぁ、後で粥でも持っていくか」

 二人が話していると、玄関のインターホンが鳴った。

「誰だ、こんな時に……」

 マサは文句を言いながら、玄関のドアを開けた。

 そこには、手土産を持ったレンが立っていた。

「あんた、どうしてここに?」

「いやぁ、ちょっと近くまで来たから、寄っていこうと思ったんだ。ハルはいるかい?」

「ハルなら、あの一件以来、熱を出して寝こんでいるぜ」

「なんと! それなら、水菓子の方がよかったな」

「まぁ、ここで話もなんだから、中に入れよ」

「うむ。では、そうさせてもらおうか」

 マサに促されて、レンは中に入っていく。

 リビングに通されたレンに、ユキがお茶を持ってくる。

「どうぞ」

「おぉ、すまない」

「それで、用件はなんだ?」

 マサの問いに、レンは少しお茶を飲んでから話しだした。

「実は、大型アニマの一件について伝えにきたんだ」

「今のハルに、そのことを伝えるな」

「そうでござる! ただでさえ、弱っておられるのに……」

「これ以上、ハルに負担をかけたくない。内容なら俺らが聞く」

「それは構わないが……」

 それからレンは、今までのことを話し始めた。

「ユミって子の契約者は、目を覚ましたよ。命に別状はないらしい」

「それはよかった」

「そして、大型アニマを作り出した研究所は、一応見つけたんだが……」

 レンは、腕を組んで眉間にしわを寄せた。

「中は、もぬけの殻だったよ」

「なんだって?」

「彼らは、何の痕跡も残さずに姿を消したんだ」

「そうか……」

「まぁ、見張りをしていた奴らに聞いてはみるが、多分得られるものはないだろうな」

 話し終わったレンは、ゆっくりと立ち上がる。

「おい、どこに行くんだ?」

「少し、ハルの顔を見ようと思ってね」

 そして、レンは二階に行こうとする。

 それを制するように、マサが肩を掴んだ。

「それは無理だぜ。ハルの部屋には誰も近づかせねぇ!」

「そうか、それは残念」

「なんだ、あっさりとやめるんだな」

「ハルに迷惑はかけられないからね」

 やがてお昼になり、マサはハルのために粥を作っていた。

 そして二階にあがり、ドアをノックする。

「ハル、一応粥を作ったんだが、食べられそうか?」

 マサの呼びかけに返事はない。

「ハル?」

 マサは、静かにドアを開け中に入る。

 部屋に入ると、ハルが唸りながら寝ていた。

「なんだ、うなされているのか?」

 マサが近づこうとすると、ハルのそばに白い光が漂っていた。

「なんだ、あれは……」

 やがて、その光は形を変え、ユミの姿になる。

 それに気づかず、ハルは寝言を言いだした。

「ユミちゃん、ごめんね……私があの時、助けられていたら……」

 ハルは静かに涙を流す。

 それを見たユミは、ハルの額に手を当てて微笑んだ。

「ハルさん、もう悲しまないで。私は大丈夫だから……」

 ハルの額から手を離し、マサの方に振り向く。

 ユミは、そっと人さし指を口に当てて微笑む。

 マサは息を飲んで立ち尽くしていた。

 やがてユミの姿は消え、静寂が戻った。

「うぅん……あれ、なんでマサが部屋にいるの?」

 ふとハルが目を覚ますと、マサがいることに驚く。

「いや、粥を持ってきたんだが……それよりも、さっきここに……」

 珍しくマサが青ざめていることに、ハルは首を傾げる。

 ハルがベッドからおりると、一枚の白い羽根が落ちていた。

「あれ、この羽根って……」

 羽根を拾いあげたハルは、一人のアニマの少女を思いだす。

 白い羽を持った、可愛らしい笑顔の少女のことを。

「さっき、ユミがハルのそばに立っていたんだよ」

 マサは微笑み、ハルを見つめる。

 ハルは羽根を握りしめ、胸にあてた。

「……ありがとう。来てくれたんだね」

 ハルの様子に、マサはほっとして胸をなでおろした。

「じゃぁ、粥はここに置いておくから、ちゃんと食べろよ」

「うん。ありがとう、マサ」

 マサは、少し微笑んで部屋を出ていく。

 それから、粥を食べ終わったハルは、リビングへと向かった。

 そこでは、マサとユキとレン、三人が談笑していた。

「なに、この状況は……」

「おぅ、ハル。もういいのか?」

「はい。なんか熱下がったみたいで、もう元気です」

 ハルが笑うと、三人はほっとした顔をする。

「どうしたの?」

「いえ、ハル殿が元気になってよかったと、皆が思っているのでござるよ」

「そっか……心配かけてごめんね」

 苦笑したハルだったが、ふとレンがいることに首を傾げる。

「それより、なんでレンさんがいるの?」

「ちょっと近くまで来たから、寄っただけだよ」

 その答えにハルは頷き、手をパンッと叩いた。

「なら、今日泊まっていきませんか?」

「えっ、いいのかい?」

「もちろんです!」

 そしてハルたちは、賑やかな食事を楽しんだ。

 次の日、ハルは工作をしていた。

「なにしているんだ、ハル」

 ハルのしていることが気になり、マサが手先を覗きこむ。

 そこには、白い小鳥とイルカが描かれており、フェルトに縫いつけられていた。

「すごいな……あんたが作ったのか?」

「えへへ……あのキーホルダー、ひびが入っていたでしょ? だから、代わりの物が作れないかなと思って……」

 ハルは苦笑いを浮かべながら、手元に視線を移す。

「あまりうまくできなかったけど……」

「いいや、ユミも喜ぶんじゃないか?」

「そうだといいな……」

 ハルは、出来上がった作品を白い羽根の隣に置いた。

 それにハルは微笑み、部屋を出ていくのだった。

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― 新着の感想 ―
霊体か、或いは残留思念か… 確かにユミさんとしても、自分の存在や最期がハルさんの精神的負担になるのは耐えられないでしょうからね。 こうして一言伝えられたのはお互いにとって良い結果になるでしょうね。
うなされていたハルちゃん… ふと現れた幻のようなユミはなんだろう?? でも、ハルが元気になってよかった…♪
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