↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/130

15 桂木という男

 大型アニマが消滅し、ネイは焦りを見せ始めた。

「ちっ、邪魔しやがって。こっちには、あいつの人質がいるっていうのに」

「それは、彼のことかな?」

「なに?」

 ネイが振り向くと、レンが高木を背負ってやってきた。

 高木は気を失っているのか、ぐったりしていた。

「なっ、見張りがいたはず……なんで、そいつがここにいるんだよ!」

「あぁ、見張りの者たちなら、今頃ぐっすり眠っているだろう」

「くそっ、やっぱり人間は役に立たないぜ!」

 あてが外れたネイは、強く歯を食いしばる。

「どうする? あとは、あんた一人だぜ」

「はっ、なめるなよ。俺一人でもやって……」

 ネイが戦闘態勢に入った時、『ピピピッ』という音が聞こえてきた。

 それは空から聞こえ、全員が空を見上げる。

 そこには、小鳥のような物体が飛んでおり、スピーカーがぶら下がっていた。

「な、なんだあれ……」

「ごきげんよう、そしてはじめまして」

 スピーカーからは、男性の声が聞こえ始める。

「だ、誰?」

「私は桂木と申します。うちの大型アニマがお世話になったようですね」

 桂木の言葉に、ハルたちは驚き言葉を失った。

 それを無視して、ネイが不満をぶつける。

「おい、博士! 邪魔すんなよ。今いいところだったのに」

「だめですよ、ネイ。少し状況が変わりました。今すぐ戻ってきなさい」

「なんでい、俺だけだと心配なのかよ」

「そんなことはありません。ですが、彼らと戦うのは得策ではないのですよ」

「へーい、わかりましたよ」

「ちょっと待って!」

 桂木とネイが話していると、ハルが間に割って入った。

「あなたが、ユミちゃんをあんな姿にしたの?」

「おや? あなたは彼らの契約者ですね。お名前は?」

「……神崎ハルです。質問に答えてください!」

「あぁ、そうでしたねぇ。まだ実験中でしたが、彼女はいい働きをしてくれました」

 桂木の言葉を聞いて、ハルの顔が青ざめていく。

「いやぁ、いいサンプルが取れましたよ」

「なんで、あんなひどいことを……なにが目的なの!」

「それを教えるのは、まだ先ですねぇ」

「はぐらかさないで!」

「ハル、落ち着け」

 興奮しているハルの肩に、マサが手を置く。

 すると、桂木の笑い声が聞こえてきた。

「くくく……」

「なにがおかしいの?」

「いいえ……なぜ、あなたはアニマのために、そこまで怒るのですか?」

「なぜって……友達だからです!」

「ほぅ、友達……面白い答えですね」

 そして、桂木はまた笑い始める。

「くくく……あなたとは今度、直接会って語り合いたいものですねぇ」

「それは、お断りすることは可能ですか?」

「はははっ、嫌われたものですねぇ」

 明るかった桂木の声だが、少し間をおいて話しだした。

「私も、あなたみたいな正義感のある女性は、嫌いですよ」

 先ほどの声とは違い、とても低い桂木の声に、ハルは言葉が出なかった。

「話はここまでです。ネイ、待ってますよ」

「あっ、待って!」

 ハルはまた話そうとしたが、スピーカーは切られてしまう。

 そして、それを持った小鳥は、どこかへ飛んでいってしまった。

「さて、俺もそろそろ退散させてもらうぜ」

 ネイは、巨大な蛇を出現させた。

「毒霧!」

 すると、蛇が大きな口を開けて、紫の霧を吐いた。

 すぐに、霧がハルたちの周りに広がっていく。

「くっ……これを吸ったらまずい!」

「はははっ、またなーっ!」

 それからネイは、木を伝いながら逃げていった。

「逃げられたか……」

 レンは目で追っていたが、ハルたちに視線を向ける。

「ひとまず、ここから離れよう!」

 その言葉にマサたちは頷いたが、ハルは動こうとしない。

「ハル、なにしているんだ。早く行くぞ!」

 マサはハルの手を引っ張るが、それでも動こうとしない。

 やがて雨が降りだし、霧がなくなっていく。

「ふぅ……これで呼吸をしても大丈夫だな」

「しかしハル殿、なぜ動かなかったのでござる?」

「……」

 ユキの問いにも、ハルは答えようとしない。

 それにしびれを切らしたマサは、ハルの肩を強く掴んだ。

「おい、ハル! さっきからなに無視して……」

 振り返ったハルの目は、涙であふれていた。

 そして、もう一度ある場所に目を向ける。

 そこは、大型アニマが倒れた場所だった。

 泣いているハルを、マサたちはなにも言えずに見ていた。

 それから少したって、レンがマサたちに話しかける。

「じゃぁ俺は、この契約者を一般の病院に連れて行こうと思う」

「あぁ、頼んだ」

 レンは行こうとしたが、マサに近づき耳元で囁いた。

「彼女のこと、ちゃんと見ていてやれ。あのままじゃもたないぞ」

「わかっている。ハルのことは任せろ」

 レンは頷き、その場を後にした。

 ハルは、まだ大型アニマがいた場所を見つめている。

「ハル、そろそろ帰ろうぜ」

 もう一度声をかけるが、ハルは俯いたままである。

 そんな彼女に、雨はずっと降り続けたのだった。

 それはまるで、ハルの涙を洗い流すかのように……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
跡形もなく消滅ですか… これではユミさんを弔ってあげるにしても、埋めてあげる事も出来なさそうですね。
桂木って誰なんだろう?何の目的があってアニマの実験を… とにかくめちゃくちゃ酷いやつ!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。