13 大型アニマ
突然現れたレンに、ハルたちは驚いていた。
「彼は俺が預かってもいいかな」
「レンさん、どういうことですか?」
「俺の知り合いの研究所に、連れていこうと思う」
研究所と聞いて、ハルは青ざめた。
そして、イグを守るように覆いかぶさった。
「イグさんを、どうするつもりですか!」
「君はなにを怒っているんだい?」
ハルの行動が理解できないのか、レンは首を傾げる。
「その研究所には、アニマ専用の病院もあるんだ。普通の病院では、アニマは診れないからね」
「そ、そうなんですか?」
「だが、急いだ方がいい。早く治療しないと、彼が危ない」
ハルはじっとイグを見つめる。
やがて強く頷き、レンに視線を移した。
「わかりました。よろしくお願いします」
「あぁ、任せてくれ」
レンはイグを背負い、地面を蹴り屋根の上を走っていった。
「大丈夫かな、イグさん……」
「あいつに任せておけば大丈夫だろう」
ハルはまだ心配な顔をして、レンたちが去った方を見つめていた。
マサはそれに気づき、ハルの隣に立つ。
「俺たちアニマは、普通の人間より頑丈だから心配いらないさ」
「えっ、そうなの?」
マサは頷いたが、あごに手を当て考えだした。
「それよりも、あいつらが大型アニマに襲われた、ということの方が気になるな」
ふとマサが空を見上げ、眉間にしわを寄せる。
「嫌な気配が近づいてきている……」
「マサ、それって……」
「多分、大型アニマだ」
ハルは驚き、急いで家を出て周りを確認した。
しかし、数人が歩いているだけで、大型アニマの姿はどこにもなかった。
「ハル、一旦中に戻れ。誰が見ているかわからないからな」
「わ、わかった」
ハルは頷き、マサとともに家の中に入る。
「気配はまだ遠いが、いずれはここに辿り着く」
「そうなると、問題なのは……」
「戦いになれば、ハルの家が壊されてしまうかもしれない」
「そっ、それは困るよ!」
「だろうな。俺たちも困る」
ハルが慌てたのがおかしかったのか、マサは苦笑してハルとユキを見つめた。
「だから俺たちは、なるべく人が来ないところまで移動するぞ」
マサの言葉に、二人は頷いた。
「でも、人が来ないところって、どこかあったかなぁ」
考えこむハルを見て、マサは口角を上げた。
「ユキには悪いが、あの廃ビルに向かおうと思う」
ユキは少し顔を引きつらせたが、すぐ頭を振り頷いた。
「構いませぬ。そこなら、思う存分戦えますぞ!」
「よし、話は決まったな。すぐ移動するぞ」
★★★
ハルたちの家からだいぶ離れたところに、大型アニマと桂木たちがいた。
「さぁ、もうすぐですよ。次の獲物はこいつらにしましょう……くくく……」
桂木の手には、マサとユキの写真が握られていた。
「そいつらの場所なら、俺に任せときな」
一緒にいたネイが、意地の悪い笑みを浮かべながら言った。
「お前も楽しみだろ?」
ネイは大型アニマに話しかけたが、大型アニマは曇った空をずっと見上げている。
「なんでぇ、無視かよ」
「ネイ、そんなすねないでください」
「だってよー、話しかけても全然反応ないんだぜ?」
「仕方ありませんよ。まだ実験中なのですから」
ネイたちが話していると、数羽の鳥が羽ばたいていく。
すると、大型アニマはそれに手を伸ばした。
「なんだ? 鳥でも捕まえたいのか?」
「もしかしたら、核になっている少女のせいかもしれませんね」
「あぁ、あのユミってアニマのことだろ?」
「くくく……面白いですねぇ」
桂木は楽しそうに笑い、スマホを取り出して、どこかに電話をかける。
「私はこれから用事があるので、後は頼みましたよ、ネイ」
「おぅ、任せとけ」
そして、桂木は別の方向へ歩いていった。
大型アニマは、ゆっくりとその姿を見送る。
「おい、なにしてるんだ。早く行くぞ」
ネイに呼ばれ、大型アニマは静かに従い歩きだした。
★★★
家を出たハルたちは、ユキと契約した廃ビルに到着する。
「一応廃ビルのところに来たけど、本当に来るの?」
「あぁ、どんどん気配が近くなってきてるぜ」
ハルは心配な顔をして、マサを見つめる。
マサは頷き、曇っている空を見上げた。
「ここに来るのも、時間の問題だな」
「やはり、大型アニマでござろうか」
「おそらくな。次の獲物は俺たちってことだ」
マサは、ビルの敷地内の入り口を見つめる。
すると、ズシン、ズシンと音を立てて、大型アニマが姿を現した。
その横にはネイの姿もあった。
「やっと見つけたぜ。さっさと、こいつに取りこまれちまいな!」
「やれるもんなら、やってみろ!」
そう言って、マサは地面を蹴り、大型アニマに向かっていった。




