12 予期せぬ来訪者
家に帰り着いたハルは、マサの背中からおりた。
「ハル、救急箱はどこにあるんだ?」
「えっと……確か棚の中にあったはず……」
「では、俺が持ってくるでござる!」
そう言ってユキは、奥に走っていった。
「じゃぁ、俺たちは風呂場で傷を洗うとするか」
マサはハルの手を引き、風呂場に連れていく。
そして、シャワーの水で傷を洗っていく。
「ひゃっ、冷たい!」
「少し我慢しろ。菌が入ったら大変だからな」
「うぅー……」
ハルは我慢しながら、傷を洗うマサを見つめる。
「……ありがとう、マサ」
「別に、お礼を言われることはしてないぞ」
「ふふっ、そう言うと思った」
「なんだそれ」
だんだんおかしくなり、二人は笑いあった。
すると、激しい足音が近づいてきた。
「マサ殿ーっ、救急箱ありましたぞーっ!」
「ここじゃなくて、あんたはリビングで待っていろ!」
「なぜ怒っているのでござる?」
いい雰囲気を邪魔されて、マサは不機嫌になった。
それを感じたハルは、苦笑しながらユキに振り向く。
「ユキ、ありがとう。すぐ行くから向こうで待っててね」
「承知!」
頷いたユキは、また足音を響かせながら走っていった。
「もう少し大人しくならないのか、あいつは」
「ふふっ」
風呂場から出てきたハルたちは、ユキが待っているリビングに向かった。
そこで消毒してもらったが、あまりの痛さにハルは涙をこらえる。
「ひぃーっ、しみるーっ!」
「ほら、これで大丈夫だろ」
ハルの腕と足には、あちこちに絆創膏がはられていた。
「さて、これからのことなんだが……」
マサが話そうとした時、庭の方からドサッという音がした。
「なんか今、音がしたよね」
「庭の方から聞こえたでござる!」
三人が庭に出ると、倒れている人物がいた。
「えっ、あなたは公園の時の……確かイグさん!」
倒れていたのはイグであり、傷だらけで右腕を失っていた。
「ひどい傷……マサ、ユキ、運ぶの手伝って!」
マサたちは頷き、イグを部屋まで連れていく。
「ちょうど救急箱あってよかった。でも、早く止血しないと……」
「俺はタオルを持ってくるでござる!」
「ありがとう、お願い!」
それから急いで止血をしていると、微かにイグが目を開ける。
「イグさん、しっかりして! 私の声聞こえる?」
「あぁ……」
「この傷はどうされたんですか?」
「お……大型アニマに、やられた……」
「大型アニマって、あの……」
ハルたちが顔を見合わせていると、途切れ途切れにイグが話しだす。
「ユリアが吸収されて、タカトは俺たちを見捨てて、逃げていった……」
「そんな……」
イグは、大型アニマとの戦いを思いだしていた。
★★★
とある路地裏で、タカトたちは大型アニマと戦っていた。
大型アニマは、ゴリラのような体で、白い羽が生えており、巨大であった。
だが、ユリアはすでにボロボロで、イグは右腕を失っていた。
「まったく、歯が立ちませんわ……どうしてそんな力持っているんですの……」
ユリアは、大型アニマを睨みつけた。
「こんなの、アニマの力じゃありませんわ……」
「それは私の研究が、上手くいった証拠ですよ」
そこに現れたのは、細身で眼鏡をかけた男性だった。
「誰ですの、あなた……」
「はじめまして、私は桂木と申します。皆からは『博士』と呼ばれていますね」
桂木は大型アニマに触れ、誇らしげに笑う。
「どうです? すごいでしょう。これは、私の傑作ですからね」
そして、ユリアたちに視線を向ける。
「さぁ、あなたの獲物ですよ。終わらせてしまいなさい」
大型アニマは、ゆっくりとユリアに近づいていく。
「まっ、待って! そ、そうですわ、あなたたちの仲間になってあげます!」
ユリアは震えながらも、交渉を試みる。
「だから見逃してくださいまし! お願いですから……っ!」
しかし大型アニマは、その体を強く握りしめた。
「ひっ……タカト様、タカト様ーっ!」
「う、うわぁーっ! 俺はまだ死にたくないーっ!」
必死に助けを求めるユリアだったが、タカトは指輪を捨てて逃げていった。
「そ、そんな……い、いやぁーっ!」
絶望したユリアの叫びが響き渡る。
ユリアの体は、どんどん大型アニマの中に吸収されていく。
そして、落ちていたユリアの指輪は、音を立てて砕け散った。
「まずは一体、吸収完了ですね」
桂木の視線は、イグに向けられる。
「さぁ、残ったアニマも取りこみなさい」
「くっ……」
イグは最後の力を振りしぼり、指輪を掴み飛び去った。
★★★
「薄れる意識の中、気配を辿っていたらここに着いたんだ……」
ハルを見て、イグは微かに微笑んだ。
「それが、お前たちの家だったとはな……」
「だが、よく逃げてこられたな」
「なぜか、大型アニマは追ってこなかったからな。まぁ、そのおかげで俺は命拾いしたんだが……」
「でも、早くちゃんとしたところで手当てしてもらわないと……」
「それなら、俺に任せてほしい」
ハルが振り向くと、庭にレンが立っていた。




