11 私、最低だ……
「もしかして、ユミちゃんたちがさらわれるのを、見ていたんじゃないんですか?」
ハルに問われたレンは、黙ったまま動かない。
「どうなんですか」
「俺はその場にはいなかったよ」
「本当ですか?」
「俺がその件を知ったのは、公園で人だかりができていて、話を聞いたからだよ」
「ハル、レンを疑っているのか?」
「そうでござるよ。確かに研究所の者と、つながりはあるかもしれませぬが……」
「そっか、そうだよね」
ユキに言われ、ハルはレンに頭を下げた。
「レンさん、ごめんなさい……」
「いや、気にしていないさ」
また俯いているハルの肩に、レンは優しく手を置く。
その行為に、ハルは顔を上げた。
「レンさん?」
「あまり自分を責めてはいけないよ。君はなにも悪くないのだから」
「でも……」
泣きそうになっているハルの頭を、優しく叩く。
「俺も少し調べてみるから、外出は控えるんだよ」
そしてレンは、マサとユキに視線を送る。
それに気づいた二人は、リビングにハルを残し、玄関にレンを連れていく。
「では、俺は行くが、君たちはなるべく、彼女のそばにいてあげてくれ」
「言われなくてもわかっている」
「彼女の精神は、今かなり弱っている」
「ハル殿は優しすぎるのでござる……」
「そうだな……だから気にかけてやってくれ」
レンの言葉に、マサとユキは強く頷く。
それを確認したレンは、静かに出ていった。
リビングに残されたハルは、強く手を握りしめていた。
「レンさんを疑うなんて……私、最低だ……」
★★★
あれから三日が過ぎ、ハルはテーブルに突っ伏していた。
「ハル、そんなところで寝てると風邪ひくぞ」
「そ、そうでござる! 今なにか面白いテレビがあるのでは?」
ユキはリモコンを取り、テレビをつける。
すると、ニュースが流れ始めた。
「ただいま入ったニュースです。謎の大型アニマが出現しました」
「おい、早くテレビを消せ!」
「う、うむ」
しかし、ユキの手元が狂い、音量を上げてしまう。
「バカ、誰が音量上げろって言った!」
「も、申し訳ございませぬーっ!」
マサとユキの言い合いを無視して、顔を上げたハルはテレビを見つめる。
「なんだろう……どこか見覚えがあるような……」
ハルは首を傾げながら、じっとテレビを見ていた。
テレビの女性は、まだニュースを読み上げていた。
「なお、この大型アニマに襲われた場合、取りこまれ吸収されるという情報も入っています。近くのアニマや契約者の方は、外出を控えるようお願いいたします」
「取りこまれて吸収……」
「ハル、今のは忘れろ」
マサはユキからリモコンを取り上げ、テレビを消す。
しかし、ハルの顔はどんどん不安な表情になり、勢いよく立ち上がる。
そして、一目散に玄関へと走っていった。
「ハル?!」
「ハル殿?!」
慌てた二人は、急いで後を追いかけた。
★★★
「はぁ、はぁ、はぁ……」
ハルは無我夢中で走っていた。
目的などなく、ただただ全速力で走っていく。
「ユミちゃん……どこにいるの、ユミちゃん……あっ!」
あまりに全速力で走っていたため、盛大にこけた。
「ハル、大丈夫か!」
マサたちも追いつき、ハルに駆け寄る。
ハルはうつぶせになったまま、声を殺して泣いていた。
「うっ……うぅっ……」
「あんたは悪くない。レンも言っていただろう」
マサはハルの頭を撫で、ゆっくりと起こした。
「まったく……傷だらけじゃねぇか。ほら、さっさと帰るぞ」
「う、うん……」
それからハルはマサにおぶってもらい、家に帰ることにした。
三人が帰っていると、前から見覚えのある人影が見えた。
「あっ!」
「げっ、お前らなんでここに!」
それは、マサを襲っていた三人組のアニマであった。
「あんたら、こりずによく俺たちの前に現れたな」
マサが怒りを露わにしていると、ユキが首を傾げる。
「お知り合いでござるか?」
「あの人たち、マサを襲っていたんだよ」
「なんと!」
ハルに教えてもらったユキは、戦闘態勢に入る。
すると、三人組は慌てだした。
「ちょっ、ちょっと待て! 俺らに戦う気はねぇよ!」
「なんだと?」
「お前もう契約したから、俺たちはもう襲ったりしないさ」
「どういうこと?」
ハルの問いに、三人組の一人がため息をついた。
「俺らはメル、メラ、メロ。俺たちも契約したアニマさ」
「おぉ、そうでござったか!」
ユキが驚いていると、メルが話しだした。
「まぁ、俺らの契約者はふらふらしていて、今も探しているんだがな」
「それは、大変だね……」
「契約するといろいろ苦労するから、そんな奴らを少しでも減らしたかったんだが……」
「もっと他に方法があったんじゃないの?」
ハルが呆れていると、メラが怒りだした。
「しょうがねぇじゃねぇか! 俺たちはそれしか知らないんだから!」
「ご、ごめんなさい!」
「ハル、謝ることじゃねぇから、気にするな」
ハルがほっとしていると、メルがメラの頭を叩いた。
「こら、メラ。いきなり怒鳴るんじゃない!」
「いてて……ごめんよ、メル」
「それよりも、あいつを早く見つけないと。あの大型アニマに襲われでもしたら大変だ」
「そうだ、こんなことしてられねぇ!」
三人は急いで走っていった。
その際に、メロが振り向き手を上げた。
「あんたたちも気をつけろよーっ!」
残されたハルたちは、呆気にとられていた。




