109 彼の正体
「変革?」
「あいつは、なにを言っているんだ?」
神島の発言に、ハルたちは戸惑っていた。
だが、神島は不敵な笑みを浮かべる。
「前に言ったこと、覚えてる?」
問われたハルは、戸惑いながらも記憶をたどる。
そして、神島に助けられた時のことを思いだした。
『アニマを本気にさせたらどうなるか、思い知るべきだ』
「確か、アニマの本気とか言われてたような……」
「そう、それ」
すると、神島は手を伸ばしてきた。
「君たちが合体してできる大型アニマ、その力でこの世界を壊そうと思ってね」
「そんなことに、協力するとでも?」
「ははっ、怖い顔!」
レンの睨みに、神島は動じなかった。
それどころか、恐ろしい提案をしてきた。
「それならマイ君たちに、君たちの仲間を襲わせるまでだよ」
「じゃぁ、かほさんたちが被害にあったのも、あなたの指示だったんですね!」
「そうだよ」
神島は、悪びれもなく肯定した。
それに、ハルは怒りを覚えた。
しかし、神島は笑みを絶やさない。
そして、神の遣いの肩を叩く。
「まぁ、この子が行方をくらませたおかげで、君たちをここに呼べたから結果オーライだよ」
「その話、聞き捨てなりませんわ!」
ハルたちが上を向くと、裂け目からマイたちがおりてきた。
そして着地し、神島を睨みつける。
「まさか、オイラたちに指示してたのは、あんたかぁ?」
「あぁ、会うのは初めてだね」
「私たちを、利用してたんですのね」
「否定はしないね」
マイは、神島の態度に、拳を震わせる。
「なら、姉様に会わせてくれるのも、嘘でしたの?」
「あぁ、そういう約束もしたなぁ」
すると、神島は神の遣いに目配せをする。
それに神の遣いは、ため息をついた。
だが、神島の圧にあきらめ、指をパチンと鳴らす。
すると、あの扉が現れた。
「あれは、あの時の!」
「お父さんを飲みこんだ扉……」
ハルとアキナは、桂木の最後を思いだしていた。
やがて、扉が開き始める。
「あはは!」
その中から、影がひとつ出てきた。
それは形を変え、ユリアの姿になった。
「姉様!」
マイは喜び、ユリアの影に駆け寄った。
「やっと……やっと会えました!」
「マイ……一緒にいきましょう?」
すると、ユリアの影は、マイに手を伸ばしてくる。
「その影に触っちゃダメ!」
「なにを……」
「マイさんを、向こうに連れていく気です!」
「なんだとぉ?!」
ユミの焦りに、コバットはマイに呼びかけた。
「マイ、そいつから離れろぉ!」
だが、マイには聞こえていなかった。
コバットは焦り、歯を噛みしめる。
そして、二人に迫った。
「くっ、マイは連れていかせねぇ、爆音!」
コバットの衝撃波は、ユリアの影に直撃した。
そのせいで、影ははじけ飛んだ。
「えっ……」
そう、マイの目の前で。
「姉様?」
マイは、ぼう然としていた。
そして、ゆっくりと地面を見つめる。
「あっ、あぁっ……」
大きな音を立て、マイの中でなにかが崩れ始める。
また、姉を失った。
今度は、目の前で。
それは、マイにとってすさまじい衝撃だった。
「いやぁーっ!」
マイの叫びが、空間中に響き渡った。
悲しみと絶望の響きである。
やがて、マイは気を失い倒れた。
「マイ、しっかりしろ!」
コバットと柊は、慌てて駆け寄った。
そして抱き起こすが、マイはぐったりしていた。
それを見ていた神島は、大げさに肩を落とす。
「あーあ、彼女は壊れちゃったね」
「ひどい、こんなこと!」
ハルは、神島の仕打ちに声を荒げる。
しかし、神島はコバットを指さす。
「影を消したのは、あのコウモリ君だよ?」
「そうなるように、仕向けたんだろ!」
マサも、神島に怒りを向けた。
だが、神島はため息をつく。
「一緒に向こうに行ってたら、幸せだったろうに」
「それを決めるのは、あなたじゃないです!」
「娘、それ以上は……」
「あなたに、そんな権利ないはず……」
「あるよ」
ハルの意見を、神島は遮った。
そして、こう言い放ったのだ。
「だって僕は、『神』なんだから」
「……えっと、神様?」
予想外の答えに、ハルは数回瞬きをした。
いや、ハルだけではない。
マサたちも、リアクションに困っていた。
すると、猿渡が疑問を漏らす。
「でも、僕たちとあまり変わらないよ?」
「これは、仮の姿だからね」
「神よ、バラしてもよいのですか?」
「いいよ、どうせわかることだし」
神の遣いの心配を、神島は気にしない様子だった。
そして、ハルに笑いかける。
「それに、君はもっと前に僕の声を聞いてるよ」
「えっ、もっと前って……」
ハルは腕を組み、必死に記憶をたどる。
唸りながら考えていると、あることを思いだした。
「あっ、洞窟に入ったあの時!」
「確か、ハル殿にだけ聞こえた声でござるな」
「でも、もっと威厳のある声やしゃべり方だったような……」
「なんか、いろいろ失礼なこと言われてるなぁ」
「わざと聞こえるように言っているのでしょう」
「あっ、ごめんなさい、つい……」
「まぁ、いいけどね」
神島は楽しげに、神の遣いを指さした。
「あの時は、ちょっとこの子の真似をしただけだし」
口をとがらせ、神島はすねた。
だが、すぐいたずらな笑みを浮かべる。
「じゃぁ、本当の僕を見せてあげる」




