100 戦いというのは、そういうものですよ?
ハルたちが俯いている中、神の遣いだけが首を傾げていた。
「だが、この娘が来たのは、『たまたま』ではなかったか?」
「神の遣い様?!」
「そこは、深く聞かない方がいいな」
「そうですよ、茶化したらダメなんですから」
「そういうものなのか」
レンやユミに言われ、神の遣いは腕を組んだ。
そして、考えを巡らせる。
すると、かほはレンに視線を向けた。
「それで、了承してもらえたということで、よろしいんですの?」
「あぁ、俺は構わない」
「でも、どこで特訓したら……」
腕を組んで、ハルは考えた。
しかし、思い当たる場所がないことに気づく。
なので、サラに助けを求めた。
「サラさん、どこかいい場所ないですか?」
「少々お待ちを。探してみます」
「必要ないですわ」
キッパリとかほは言い、右手を上げる。
サラは検索をやめ、かほを見つめた。
「私の家に来てくださいな」
「かほさんの家に?」
「えぇ、隣にドッグランがございますのよ」
「すごい!」
「さすがはお嬢様、といったところでしょうか」
「かほちゃんはすごいんだぞ!」
「なぜ、ニア殿が得意気に?」
「まぁまぁ、いいじゃない」
楽しげなハルたちを見つめ、かほは微笑む。
そして、ひとつ咳払いをした。
「ですので、そこを使ってもらって構いませんわ」
「ありがとうございます!」
「マサも来るんだぞ!」
「俺も?」
「おい、我も行くぞ」
「えっ、神の遣い様も?」
驚くマサの横で、神の遣いが手を上げる。
しかし、かほは首を傾げた。
「ところで、そのお子様もアニマですの?」
「我を、アニマと一緒にするでない!」
「『お子様』の方は、スルーなんだな」
「これには、ちょっと訳がありまして……」
「あら、あなたも訳ありなんですわね」
苦笑しているハルに、かほは頬に手を当てる。
そして、両手を叩いた。
「では、車を呼ぶので、その中で話しましょう」
話が終わると、かほは両手を数回叩いた。
すると、数分もしないうちに、かほの運転手がやってきたのだ。
「さぁ、早く行きましょう」
「わわっ!」
ハルは手を引かれ、マサとレンも後に続いた。
★★★
とある別荘に、柊、マイ、コバットがいた。
彼らが身を隠しているのは、ハルたちに見つからないためである。
すると、コバットが柊に尋ねた。
「一応、マサたちと知り合いの奴を襲ったが、大丈夫かぁ?」
「えぇ、それとなく彼らの所に行くよう、誘導しましたからね」
それは、かほたちを襲った時のことである。
「あいつが、マサの前の契約者だなぁ」
「いいですか、手はず通りに」
「えぇ、わかっていますわ」
柊たちは、タイミングを見計らって、物陰から現れる。
突然のことに、かほは眉をひそめた。
「やぁ、こんにちはお嬢さん」
「なんですの、あなたたち」
「お前、マサって猫のアニマを知ってるだろぉ?」
「だったらなんですの」
「答えは簡単。痛めつけるまでだぁ!」
コバットが言うのと同時に、マイが駆けだした。
「ギアーショット!」
「ニア、避けて!」
かほは叫んだが、ニアは動けずにいた。
その時、マイの拳がニアを直撃する。
その反動で、ニアは吹き飛ばされる。
「ガウッ!」
「ニア!」
「まだ終わっていないぜぇ、爆音!」
吹き飛んだニアに、コバットの衝撃波が襲う。
「がはっ」
ニアは受け身も取れず、地面に転がった。
かほは青ざめ、急いでニアに駆け寄った。
「ニア、しっかり!」
「うぅ……」
「なんだぁ、手ごたえがなさすぎるぜぇ」
「まったくですわね」
マイは、深いため息をついた。
そして、冷ややかな目でかほたちを見つめた。
「あなたたち、戦ったことがないのかしら?」
「そうですけど、これはあんまりですわ!」
「戦いというのは、そういうものですよ?」
「柊様、この方もやってしまいます?」
マイの冷たい視線に、かほは冗談ではないことに気づく。
そして、ニアを庇いながら頼んだ。
「まっ、待って、私たちの負けでいいから、もう攻撃しないで!」
「だったら、マサに助けを求めることですわね」
「マサに?」
不安な顔をするかほに、柊は微笑んだ。
「では、私たちはこれで失礼しますね」
震えるかほたちを残し、柊たちはその場を離れた。
そして、現在。
柊たちがくつろいでいると、テレビの電源が入った。
そこには、シルエットだけが映しだされる。
『やぁ、ごきげんよう』
軽快な挨拶だったが、その声は普通ではなかった。
機械で声を変えており、意図的にわからないようにしていた。
『作戦は、順調に進んでいるみたいだね』
「あの、これがうまくいけば、姉様に会わせてもらえますか!」
マイの問いかけに、少しの間があった。
『……あぁ、それは約束するよ』
「でしたら私、頑張ります!」
姉に会えることに、マイは喜びの声を上げた。
その様子をしってか、テレビの人物は含み笑いをする。
『ふふっ、いい結果を期待しているよ』
そこで、テレビの電源は切れた。
すると、コバットがマイに歩み寄る。
「マイ、あいつの言う事、信じるのかぁ?」
「姉様に会えるのでしたら、私はなんだってやります」
「マイ……」
やっと、姉に会える。
マイは、そのことで頭がいっぱいだった。
しかし、生き生きしているマイとは違い、柊とコバットは複雑な表情で見つめていた。




