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第91話 スレギナの町 ダンジョン

 またダンジョンに入れる興奮を抑えられずに眼が覚めた。

 嬉しさ半分、怖さ半分と行った所か。

 両隣でくっ付いて寝ているユキナとファイガは、まだ寝ているようだけど、可愛い耳だけが一度、右に左にと動いた。

 俺が起きればすぐに動ける体制は整っているようだ。

 早めに起きようとしていたのは事実だけれど、まだ早すぎなので、眼を閉じたまま柔らかい腹を両手でモフッた。


 頃合いを見て起き上がり、ファイガたちをそのままに食堂に行くと、ダンジョンに行く人なのか混んでいて満員だ。

 少し待っていたら席が空いたので、座るとすぐにビクテマさんが忙しそうに料理を運んできた。

 昨晩に出て来た同じ形のパンを横から切って有り、薄く切った肉と野菜がタレで炒めて中に入れてある。食べるとパンの中のアツアツな肉が野菜と絡まって何ともいい味を出しているね。

 パクパク頬張って、美味しくいただきました。


 部屋に戻り、まだ寝転がっていると思ったら扉を開けた瞬間に、ベッドを下りて大きくなったので、朝食を出して食べさせて宿を出た。

 ファイガたちには、ギルドの入口から昨日よりも少し離れたところで待ってもらったよ。

 でないとまたいろいろと面倒な事がありそうだからね。

 ギルドの中に入ると混んではいるが、順番を待って受付のテスタさんに証明書を見せた。


「おはようございます、テスタさん。ダンジョンの登録をお願いします」

「おはようございます、ミツヒさん。本日からの登録ですね。はい、出来ました。お気をつけて」


 ギルドを出てファイガたちを呼び、他の流れに合わせてダンジョンに行くと、やはり此処でも順番待ちは必然と言ったところか。

 なので当然後ろに並んで待つこと少々、順番が来てダンジョンに入り進んで行く。

 徐々に冒険者が消えるように減って行けば、俺の番も回って来て、霧の中に一階層への入口が現れる。

 降りて行けばすぐに一階層の何処かに出た。

 まずは魔法収納から、魔剣ギーマサンカとスロウソード、そしてガントレットを取り出して、今現在装備している物と交換して装備し直す。

 周囲感知したら何の気配も無いので、ファイガ、ユキナは従来の大きさになって進み始めた。


 一階層

 体長一mほどの銀色のメタルスライムが現れた。

 メタルスライムは、ファイガたちを見ても動じるそぶりも無く、逃げる様子もない所を見るとかなり強いのかな。

 さっそく魔剣ギーマサンカで飛びかかって来たメタルスライムを、切り飛ばすと真っ二つになって落ち、灰になった。

 魔石が落ちていたので拾う。

 なんだか相手の攻撃と言う攻撃も無いまま倒したけどいいのかな。

 少し進んだら、体長二mほどは優に超え、筋肉隆々の黒褐色をしたオーガキングが盾と剣を持って現れた。

 オーガキングは威圧を掛けた咆哮を上げて来たけど、俺はスロウソードを手に持ち、大きく振りかぶって勢いよく投げた。

 スロウソードは弧を描かず、一直線に飛んでオーガキングが瞬きする間に音も無く額に突き刺さって石化する。

 手を曲げるように引く動作をすると、一直線に来た道を戻るが如く握り手が俺の掌に納まった。

 ただ、石化したはいいけれど、灰になってはいない。

 ハネカ曰く、石化とはすぐに死に至らず、魔物であれば数日は掛かる。

 完全に倒すのであれば、石を破壊すれば、単純に壊せばいい。

 ならば、とガントレットを撃ちこんだら粉々になって灰になった。

 ――あ、そう言う事なのか。

 灰の中に魔石が落ちていたので拾った。


 二階層

 体長二mほどの灰褐色の硬そうな鱗を持つリザードマンジェネラルが、鎧と剣を装備して現れた。

 俺たちを発見するや否や、剣を振りあげ攻撃して来たけれど、ファイガは既に牙を鳴らし、赤い魔方陣を展開させていたので、勢いよく射出されたファイアランスで串刺しになって燃え上がり、攻撃も何も出来ずに灰になった。

 当然魔石は拾った。


【ミツヒ様。今回は魔石を拾って行くのですか】

【ああ、単体の魔石なら拾うのもすぐだし、残すとまた後々面倒になるからね】

【成る程。知られないように、ですか】

【うん】


 三階層

 体長一mほどで、体が硬そうな昆虫型魔物のロックビートルが三体で飛んで来たが、気配を察知していたユキナが、既に牙を鳴らし青い魔方陣を重ねて展開させて、アイスランスブリザードを放っていた。

 ロックビートルも、吹雪の中、何の攻撃も出来ずに氷の矢が何本も突き刺さり、凍りつき地面に落ちて 粉々に粉砕されて灰になった。

 ――灰の中の魔石を拾う。

 しかし、ユキナ、ファイガも、こうもいとも容易く簡単に倒すなんて……本当に強いね。

 よし、次に行こう。


 四階層

 この階層は俺にやらせてもらおう。

 体長二mほどの銀色の蜘蛛、メタルスパイダが突進してくるが如く現れて、いきなり酸を吐いてきたが、既に軌道を見ていたので横に飛び、踏み込んですれ違いざまに横一線、振り切れば何の抵抗も無く切り飛ばした。

 魔石を拾い、魔剣を背中に納める前に、切っ先を上にして一度眺める。


【この魔剣ギーマサンカって凄い能力だな。サクサク切れるよ。扱いやすいしさ】

【ミツヒ様の強さがあってこそ、魔剣の真価が発揮できるのです】

【ありがたいよ。大事に使わせてもらおう】


 五階層

 体長四m程で、銀色の鱗を持つミスリルリザードが現れた。

 今度はファイガの番なので、俺とユキナは後方から見ている。

 ファイガがゆっくり、無防備に近寄って行くと、動じる様子も無いミスリルリザードは、間合いに入った途端に立ち上がり、鋭い爪を振りかぶって来た。

 ファイガは直前に見切るように体を捻りながら飛んで反転し、反対側に着地した、と同時に爪斬で切り飛ばして倒した。

 切られた魔物は、振り返りながら断末魔の咆哮を上げ仰向けに倒れ灰になった。

 ファイガの爪斬って、ミスリルも切れるんだな。

 この分ならユキナの爪斬も同様だろうね。

 魔石を拾って進む。


 ――横穴を発見した。

 あ、そうか。この階層はセーフエリアがあるんだっけ。

 横穴に入り、奥が広くなっていたけど、数組の冒険者パーティが体を休めていたり、就寝していたので、静かに撤退して次に進んだ。


 六階層

 次はユキナの番なので、先頭を優雅に歩き進んでいる。

 体長四mほどで、鉄の体毛を持つメタルドックが現れた。

 何だかユキナと同格に見えるね、と独り言のように言ったら聞こえたのか、メタルドックと相対しているにもかかわらず、すぐに振りかえり、え? 、みたいな表情をしてから悲しい表情になった

 あ、やばい、地雷を踏んだと思った俺は、嘘嘘、冗談だよ、ユキナは強いし可愛いよ、と言い訳したら、急に嬉しそうに何の抵抗も出来ないメタルドックを切り飛ばしていた。

 余計なひと言だったけれど、チョロくて良かったと思うよ。

 勿論その後は、頭を大雑把に撫でてあげた事は言うまでも無い。


 七階層

 体長二m程で、剣を持ち、鎧を装備したスケルトンジェネラルが現れた。

 俺は期待しながら構え強いなら鍛錬しようと相手から振りかぶって来た剣を真面に受け、受け、え? 相手の剣が俺の剣に簡単に切られ折れてしまい、急に熱も冷めた。

 そのまま踏み込んで鎧ごと振り切れば、何で出来ているのか不明だったけれど、簡単に切り飛ばして倒した。

 灰の中の魔石を拾いながらある疑問を抱いた。


【なあ、ハネカ。このダンジョン、おかしくないか? ギルドでは強い魔物って言っていたよな。確かに単体が多いけど、いくらなんでも弱すぎだろう】

【他のダンジョンに比べたら強い魔物ですが、ミツヒ様がさらに強くなっているのです。その証拠にこのダンジョンの魔物はファイガ、ユキナを見ても襲ってきます】

【確かにそうだけど、でもこんなに簡単に倒せていいのか?】

【いいのです、ミツヒ様ですから】

【そ、そうなのか?】

【そうです、ミツヒ様】


 よく分からないけど、ハネカに説き伏せられた感があった。

 後ろのファイガ、ユキナを見れば、呑気に伏せて欠伸しているし、ダンジョンなのに緊張感全く無しだね。

 悩んでも仕方がないから次に行こう。


 八階層

 体長三mで、黒褐色のキングミノタウロスが、剣と盾を持って現れすぐに攻撃してきた。

 片手剣で振りかぶって来たので、あえてガントレットの甲で受けて見たら、ぶつかり合う鈍い金属音と共に、反動を受けたミノタウロスは、後方にひっくり返った。

 同時に俺に来るであろう反動は、ガントレットに新しく付けた魔石が圧縮した空気に換え、魔石から勢いよく吹き出された。

 お、いいね。何の反動も無いよ。

 注文にすぐに答えを出すガンドさんは本当にいい職人だよな。

 あ、まだ戦っている最中だった。

 すでに立ち上がっていたキングミノタウロスが、次の行動を起こす前にスロウソードに手を掛ければ、すぐに外れそのまま下手投げで振り切った。

 一直線んに飛んだスロウソードは、キングミノタウロスにへ見えていないのか、持っていた盾も意味をなさず、胸に突き刺さり石化した。

 投げた手を引けば、スロウソードは意志を持っているかのごとく、握り手が手の平に戻り、鞘に納める。

 そして石化した、キングミノタウロスにガントレットで撃ち込めば粉砕されて灰になった。

 また魔石を拾って次に進む。


 暫く進んだら、戦闘をしている気配を察知した。

 ファイガ、ユキナを見たら、同調したので気配遮断を掛けゆっくり静かに進むと、丁度その奥で他の八人のパーティが、キングミノタウロクと戦っている最中だった。

 他の冒険者の戦いを観戦できるなんて、またとない機会だから、俺たちは気配遮断を掛けたまま、近くの岩陰に隠れて顔だけ出して、静かに観戦することにした。

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