第12話 スマルクの町
よろしくお願いします。
父さんと母さんのいい昔話を聞いた後、外に出た俺は、昼を過ぎていたので途中の露店で焼いていた串に刺さっているホワイトラビットの肉を食べながら歩いてギルドに向かう。
ギルドの中は誰もいなかったけれど、カウンター越しにはミレアさんが座っていた。
俺は思わずカウンターに駆け寄る。
「ありがとうございます、ミレアさん。採用されました、これで暫くこの町に滞在できます」
「それは、おめでとうございます、よかったですね」
お礼を言って出て行くとき、壁に貼られている情報欄を眺めていると、上の方に、昔活躍した獄炎の記事があったけれど、パーティに関しては何も記されてなかった。
長期滞在が決まったので、ギルドの帰りに商店に寄り、衣服や必要品を購入して住み込む家、マイウ亭に帰る。
そして酒場での仕事を覚えるのに、しばらく鍛錬には出なかったが朝夕の素振りは毎日行っていた。
店にも慣れた約一ヶ月後の早朝
素振りの後、装備をして、エフィルさんに朝食を出してもらい食べた後、町の入口を出て草原に着いた。
今日の午前中は薬草採取をしようと決めていたからだ。
上位の薬草をお願いします。
【ご覧のところです】
眺めている広い草原の中に、緑の点、紫の点、灰の点が幾つも点滅している。
実は最近、また力が進化しました。
緑 緑色草 紫 紫色草 灰 毒消草
――もう気にしません。
点滅しているところを探ると、薬草が生えているので採取。
また違う点滅しているところを探ると、また薬草が生えているので採取。と、範囲は広いがすぐに見つかるので半日で終了。
昼食は適当な草の上に布を広げ、持ってきたパンを食べ、青い空を見上げながら水を飲む。
一息ついて午後は森に入り、薬草の袋を木の枝に掛けておく。
そして、女性の? 女の子の、声、にお願いする。
適度な魔物をお願いします。
【周囲には二体だけです】
普通に見渡すと、生い茂った草木で見えないけれど、俺には赤い点滅が二つ見えている。
気づかれないように赤い点滅に近づくと、魔物がいた。
【グリーンキャタピラです】
一体を背後から近寄って上段で構えて振りかぶり、切れる抵抗も無く綺麗に切断する。
気が付いた残りの一体のグリーンキャタピラが牙で襲ってくる。
そんなに速くないけどなぁ、良く見えるし。
鋭い牙の攻撃が届く前に、瞬時に横に避けその状態で上段から剣を振り降ろせば真っ二つに切断する。
倒し灰になった二体から、緑色の魔石が出ているので拾って背負い袋に入れる。
しばらく歩いていると、声、が聞こえた。
【左前方に五体います。トロールです】
あ、いたいた。持っているのは棍棒かぁ。何とかなるだろ。
体長二m程の灰色の肌をしたトロールに素早く近づき、一体の首めがけて横一線に切り飛ばし切断する。
何も出来ずに血しぶきを上げて倒れ灰になる。
続けざまに横にいたトロールの首も切り飛ばし倒す。
気が付いた三体は、威圧を掛けるような咆哮を上げながら棍棒を振りかぶるうように攻撃して来たけど、期待以上に遅いので剣で受け流しながらそのまま袈裟懸けに切り倒す。
次の上から来る攻撃も、剣で滑らせるように受け流し踏み込んで突き刺し倒す。
最後の一体は逃げようと背中を見せたけど、魔物なので背後から袈裟懸けに切り飛ばし、血しぶきが舞って倒れ灰になる。
俺は灰になった五体を確認するように見たけれど魔石は出なかった。
順調なので、更に森の奥に入って行く。
【一体います。ミノタウロスです】
うわ、でかいな。それに頭が牛だよ。また棍棒持っているし。
体長二m半ほどの茶褐色をした魔物。
近づいたら気が付かれた、強いかな?
【倒せます】
じゃ、こっちから軽く攻撃。
お、避けた。
ミノタウロスの棍棒の攻撃が来るが避けて、また軽く切りかかって見る、が棍棒で受けた。
ミノタウロスは結構すばやくて力もある。
でも攻撃してきた棍棒を避けて、踏み込みざまに体を低くして片足を切断すれば、切られた足の方に倒れてきた瞬間に、首を切り飛ばし、血しぶきを上げながら崩れるように倒れ灰になった。
灰の中には、光っている白い魔石が出たので背負い袋に入れる。
フゥ、ミノタウロスは結構強かったな。
しかし、この剣はサイルト父さんに手入れをしてもらったとはいえ、本当に良く切れる剣だよ。
剣を上にかざしてじっくり眺めていると、声、が教えてくれた。
【帰る時間です。仕事です】
あ、そうだった、ギルドも寄らないと。ありがとう。
【……】
やっぱり返答は無しか。
検問所の門番に証明書を見せ、町に入ってギルドに向かう。
入口に入るとやや人が多かったが、カウンターのミレアさんは丁度他の冒険者との話が終わったところだったので歩み寄る。
「ミレアさん、薬草の買取りお願いします。」
「こんにちは、ミツヒさん、では隣の部屋にお入りください。」
隣の部屋には、数か所の買取りテーブルがあって交渉している人もいる。
「では、こちらのテーブルに出してください」
薬草を出す、薬草を出す、薬草を出す。ミレアさんの顔が固まる。
あ、ちょっと引きつってるかな?
「で、でうゎ調べまする、ね」
あ、ミレアさん、噛んだ。
紫色草二二株 緑色草一八株 銀貨八〇枚
毒消草二一株 銀貨八四枚 合計一六四枚
「凄い数ですね、ミツヒさん。どうしたらこんなに沢山の薬草が獲れるのでしょうか。いえ何か秘密、不潔が、いえ秘訣があるのでしょうか」
あ、動揺している? ミレアさんまた噛んでいるし。
「いえ、偶然です、運もあったのかな」
「そのようなことはないでしょう、そうですか、そうですね。内緒の秘訣があるのですね、わかりました、もう詮索しません。では少しおまちでださい」
あ、また噛んだ。
でもそこが可愛いと思ったりして。
頭を押さえながら奥に行くミレアさん。
今度はハンカチで頭を押さえながら出てきた。
こちらになります。と金貨一六枚、銀貨四枚を受け取り袋に入れた。
今回拾った魔石は出していない。
資金は十二分にあるし、しばらくは売りに出さないつもりだ。
俺はギルドを出てマイウ亭に帰る。
表から入らずに直接裏に行き、装備を着けたまま素振りをする。
そして一度部屋に戻り、装備を置いてシャワーを浴びる。
また部屋に戻り金貨や魔石を棚に入れ、着替えて下に降りると酒場の準備を始める。
服装は自分の服でいいが、エプロンは着けろと、言われ、ゴルドアさんとお揃いの黄色いエプロンを着ける。
最初は、恥ずかしいな、と思ったけどエフィルさんが、似合っているわ、言ってくれたので安心した。
でもゴルドアさんと並ぶと、やはり変な気がする、のは俺だけなのかな。
因みにエフィルさんとリリのエプロンは水色だ。
二人こそ似合っていると思うのだけれど、ゴルドアさんは見向きもしない。
恥ずかしいのかな、奥さんと娘なのに。
店に入れば開店前の準備を始める。
テーブルを拭き、外に水をまき、窓を拭いて床を掃除する。
調理担当は昔からゴルドアさんとエフィルさんだ。
店が開店すれば、お客さんが入って来て、俺とリリは注文を聞いて運ぶ給仕の仕事になる。
そして仕事の合間の手が空いたときに、各自で賄い食を食べる。
店が終わると、残り物を片付け、食器の洗い物をする。
そして忙しなくとも楽しい一日が終わる。
薬草採取は数日に一度程度で、他の毎日は一日中魔物退治をして鍛錬している。
けれど拾った魔石はまだ一つも売らなかった。
そんな充実した毎日を過ごし、時が過ぎ早くも一年が過ぎた。
一年後 ミツヒ一六歳。




