第13話 スマルクの町
一年後、ミツヒ一六歳。
身長は一五五㎝と伸びが少ない。
――深刻に悩んでいる。
早朝、東の空が紫色から青色になり始めた頃。
日の光が顔を出し始めた草原で今、布袋を肩に担ぎ、薬草を探し回っている。
以前のある時期、この辺の上位薬草がほとんど無くなっていた。
つまり、俺が、ほぼほぼ、獲りつくしてしまったのだ。
当時ミレアさんに聞いたところ、自生している薬草は約一ヶ月で成長する。と教えて貰った。
なので、取りつくして以来、薬草採取は二ヶ月前後に一度になっていた。
昼に差し掛かる頃、終始腰を曲げながら薬草を採取していたので、フゥ、と立ち上がり、一度反るように伸びをして腰を軽く数回叩く。
久しぶりだから結構あったな。
よし、今日は終わりにしよう。
【お疲れ様です】
ん、ありがとう。
【……】
「さて、入るか」
次は森に向かって歩いて行く。
実は最近、また頭の中で、ピーン、と鳴ってから、力がまた少し進化したんだ。
それは女性の声が、俺の話しかけに返事をくれる様になった。
毎回毎回ではないのだけれど、返答してくれれば嬉しくなる。
それともう一つの変化もあった。
襲って来る魔物の攻撃がくる直前に、その攻撃方法や軌道の方向が見えるようになったんだ。
森に入ってしばらく歩く。
強めの魔物はいるかな?
【進む先に、レッドキャタピラー二体います】
ああ、火を噴く魔物ね。あ、いたいた。まだ見えないけど点滅している。
進めばレッドキャタピラーが俺に気が付いたのか、既にこっちを見ていた。
気づいたな、あ、炎攻撃が来る。
炎を噴くレッドキャタピラーだけど、炎を横に回避して前に踏み込むと、更に牙の攻撃を受けて横に飛ぶ。惰性で止まれない所に横から剣を振り降ろし切り倒す。
後方で構え威嚇するように咆哮を上げていたもう一体の牙による攻撃が来るけど、予想した軌道が見えたので構え、直前で剣を滑らせるように避けて同じように横から力強く振り降ろせば、断末魔の咆哮と共に真っ二つになって倒した。
「うん。いい感じだな」
灰になった跡には、魔石が出たので拾って進む。
【リザードマンナイト二体がいます】
お、風魔法使う魔物か。うん見えた、二つ点滅している。
剣を持ち、皮の鎧をまとっている黒褐色のリザードマンナイトが俺に気づいて攻撃してくる。
風魔法のウインドカッター三連攻撃が飛んで来るけど軌道が見えているので避け、隙を見せずにその流れで踏み込んで近づく。
今度はもう一体が剣で二連攻撃してくるが、直前の軌道を見てしっかり剣で受けて避ける。
次に振りかぶって来た剣の攻撃を、流水の如く受け流し、魔物の首を切り飛ばす。
すかさずもう一体がウインドカッターを飛ばして来るが腰を低くして避け、その体勢で勢いよく踏み込み、胴体を横一線で切断すれば血しぶきを上げながら倒れ灰になった。
灰の後を見て回ったら、魔石が出たのでやはり拾って仕舞う。
こうして今日も順調に鍛錬し、魔物を退治していく。
ここでの鍛錬もそろそろ終わりかな。
どこかのダンジョンに入るか。
まあ、早急ではないけれどこれからの計画を練ろうかな。
【いいですね、行きましょう】
なら、どこのダンジョンに行こうか。
【東の町のダンジョンが最適です】
エントアの町かあ。急いでないけどそうするよ。
【最適です】
何でエントアの町がいいってわかるの?
【……】
あ、終わった。
今現在、声との会話もこんな感じになっている。
日が沈むには時間が余っているけれど、町に戻る事にした。
ギルドに入ると、少し混んではいるけど、以前とはちょっと雰囲気が違う。
それは、俺がギルドに入れば、あちらこちらから視線を受ける。
受付のミレアさんも感じ取っていたようで、先日、ミレアさんが小声で教えてくれた。
その原因は俺が採って来た薬草らしい。
買取りは隣の部屋なので周囲には見られないが、買取りのテーブルが他に数か所あるので、その時に何人かがその現場を見ていて噂になっていた。との事。
やっぱり薬草採取は終わりかな。
それでも気にする事無く奥のカウンターに向かった。
勿論、ミレアさんのカウンターへ。
何でミレアさんにするかって? 別に変な意味ではなく、やっぱり慣れ親しんだ人がいいからね。
「こんにちは、ミツヒさん。今回も薬草の換金ですね。では隣の部屋へどうぞ」
「はい、お願いします」
隣の部屋に入りテーブルに薬草を出す。
紫色草一八株 緑色草一六株 銀貨六八枚
毒消草二〇株 銀貨八〇枚 合計一四八枚
最近は手慣れたようで、スタスタ、と姿勢正しく歩いて奥に入るミレアさん。
すぐに、スタスタ、と戻ってくるミレアさん。
「はい、ミツヒさん。換金はこちらになります。受け取り下さい」
ミレアさんから、金貨一四枚と銀貨八枚を受け取り袋に入れる。
そのとき、ミレアさんがいきなり俺の腕を力強く掴んで来た。
そして、逃がすものか、とばかりに強引に引っ張られる。
油断していた俺は、勢い余ってもう少しで鼻と鼻が付きそうなくらい近い距離になっていた。
その距離で俺を見つめる、いや、睨んでいるようなミレアさんの眼が怖い、と感じてしまったことは言わないでおこう。
そのまま話し出す真剣な表情のミレアさん。
「私と結婚してください、ミツヒさん。いえ、結婚するんです、ミツヒさん。じゃなく、結婚しなくてはいけません、ミツヒさん!」
「え? ちょ、ど、どうしたんですか、ミ、ミレアさん?」
「それはそうでしょう、ミツヒさん。これだけ買取りして、いつも高額で買取りして。それもこの一年間変わらずに安定して収入があるし、いつも礼儀正しいし、私の理想だし、私より年下だけど全然、理想だし、野蛮じゃないし、ミツヒさんと結婚したら優しくしてくれるでしょうし、こんな好条件今後、絶対、二回死んでもありません! だから、ミツヒさん!」
決心が硬いのか意を決したように、まくし立てるように鼻息が俺に当たって、興奮状態で荒くなっているミレアさんだ。
ど、どうしよう……。




