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五話 完封



 さっきまで僕のそばにいた五人は次の瞬間には不良たちを姉さんのように駆逐していった。


 しかし、姉さんとこの五人は違う。


 姉さんは武術の天才。


 圧倒的な強さを持つ。


 しかし、僕のこの場にいる部下五人は違う。


 言わば、戦闘の天才、プロだ。


 姉さんのように動けなくするだけではなく、確実に意識を刈り取っていく。


「なんだよ、コレ」

 

 多部はその圧倒的な光景に震えながら呟く。

 

 そして、僕は杉山さんと多部に向かって歩き出す。


「なんなんだよ、コイツらは」


 多部はどこか虚ろな目で僕を見つめてくる。


 そんな多部に対して僕は笑顔で返す。


「お前は一体、何なんだよ‼」


 杉山さん達のいる場所から二メートルほど手前で止まり、僕は言い放つ。


「これが僕の頼りにしている部下達だ。これが僕が信じている仲間達だ。ちょっと荒事専門のだけどね」


「動きが明らかにプロじゃねえか!ありえねえ。たかが高校生が雇えるレベルの人間じゃねえぞ!」


 おや?


 多部はどこかで本職の人たちを見たことがあるのかな?


 まあ、いいや。

 

 多部はガクブルと震えだす。


 杉山さんも多部の様子と言葉で状況を理解したのか、同じく震えだした。


「君たちは僕のことをただのお金を持っているだけの子どもだと考えていたようだね。だけど、それは君たちにとって甘い考えとしか言いようがない。君たちはおそらく、彼ら五人は僕が今回のために雇った戦闘集団だと思っているかもしれないけど、それは違う」


 その僕の言葉に多部や杉山さんは意味が分からないといった顔をした。


「彼らは僕の会社の社員さ。つまり、元々雇用関係にあるのさ。ちょっとばかり特殊だけどね」


「夏月様。今川さんがいらっしゃいました」


 多部に語り掛けていたら到着したようだ。


「ん。了解」


 サルの報告に僕は頷き、「あそこを見てごらん」と僕が最初に入ってきた体育館の入り口を見るように促す。


「彼を杉山さんは知っているよね?」


 今川さんを認識した杉山さんは顔を青くする。


「どうやら学校で僕の悪い噂を流して報復しようと考えていたみたいだけど、彼が僕の無実を証明してくれるからね。無駄だよ。むしろ噂を流した杉山さんを糾弾するだろうね、全校生徒の前で」


「なっ⁉」


「そういうわけだ。杉山さん・・・だったかな?」


 彼は僕と杉山さんが通っている学校の生徒会長だ。


 彼は学校では生徒、教師問わずかなり信頼されていて、二年連続て生徒会長を務めている。


「高波君への報復は全て無駄だよ」


「どうして?どうして生徒会長がコイツを庇うわけ⁉」


「そりゃ、将来、お世話になる上司だからね。色々優遇してもらっている分は恩返しするよ」


「なっ⁉」


 杉山さんはありえないといった顔だ。


「『なら、今日のことを公表して道連れに』って考えているよね。それも無駄だよ」


 僕は再び杉山さんの思考を視る。


 杉山さんは血の気が引いたせいか、少し冷静になってきていた。


 そして、僕がさっきから杉山さんの思考をお見通しとばかりに当てていることに気がついた。


「どうして・・・」


「内緒さ。それと、どうして道連れが無駄かと言うと彼にも今回は協力してもらっておいたからね」


 僕はそう言うと今川さんの隣を見た。


 杉山さんも僕の目線の先を追う。


 そこには少し年配の男性がいた。


「彼のことも知っているよね?」


「校長先生・・・」


 杉山さんの表情は絶望一色だ。


 だが、許さない。


 僕はまだ怒っているんだ。


「そう。この人は僕の協力者ってところかな。どう?もう何も出来ないでしょ?」


 杉山さんはその場にペタリと座り込む。


 自分がすでに詰んでいることに気がついたようだ。


 多部も僕と杉山さんのやり取り、そして僕の部下の暴れっぷりを見て顔面を蒼白にしている。


 イヌたち五人を相手にしている不良たちも仲間が次々に容赦なく意識を刈り取られている様子を見て、逃げ出し始めた。


 そして、最後にその場に残ったのは多部と杉山さんのたった二人のみ。


 ここまで来ると憐れを通り越して滑稽だ。


「これで分かったかな?これが僕と君たちとの差だ。これに懲りたのなら今度からはしっかりと見習って善良な人間になるんだね。もし優秀な人材になったらスカウトするかもよ?」


 僕はこれで終わりだと一息ついてキビ返して帰る。


「うらぁ――!」


 と、僕がちょうど体育館のステージと入り口の中間地点辺りに差し掛かったところで多部は自棄になったのか、僕に向かって駆けだした。


 そして背を向けている僕に殴り掛かった。


「危ない!」


 イヌに拘束していた縄を解いてもらったのか、高原さんはその場に立ち上がって叫んだ。





読んでくれて感謝です。

次の話もよろしくお願いします。

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