三話 人質
僕に不良たちの拳が届こうとするその瞬間。
「私のナツに触れるな‼」
最初にいた場所から消えたと錯覚するほどの速度で姉さんが僕の前に現れる。
そしてはっきりと分かるほどキレた姉さんが手始めと言わんばかりにまず僕に拳を出した男達を吹き飛ばす。
それも一撃でだ。
そして姉さんが牙をむく。
そしてここからは言葉にするのは簡単だった。
僕を中心にして、姉さんが襲い掛かってくる不良どもを一掃していく。
僕はなにもしていないのに、僕の周りには制空圏でも出来ているかのようになっていた。
そして、気づけば残りは杉山さんと多部、そしてその周りに守るようにいた不良数人だけとなっていた。
この結果に杉山さんたちは茫然となっていた。
まあ、当たり前だよね。
見た目完全な美少女の姉さん(ここは姉さんには絶対に言わない。調子に乗りすぎるので)に瞬く間にほぼ自軍の勢力が制圧されているんだから。
「さて。僕たちはここでやめてあげてもいいんだけど。僕とその関係者に関わらないのならこのまま帰るよ。どうする?」
僕が挑発気味にそう言うと多部が声を荒げながら叫ぶ。
「なめんな‼こっちには念のために用意していた切り札があるんだよ‼」
そう言うとステージの裏から二人出てきた。
一人は僕の周りに転がっている不良たちと同じ、普通の不良だろう。
一瞬、姉さん相手にいい勝負でもする奴が出てきたのかとも思って見てみたけど、普通だった。
何の変哲もないそこらの不良だ。
しかし、もう一人が問題だった。
そのもう一人は・・・・・・・高原さんだった。
縄で縛られていて身動きが取れない高原さんは歯を食いしばって何か内から湧き上がる感情を堪えていた。
「「なっ⁉」」
「ちょうどラッキーなことに部下の奴が捕まえてな。お前の家の前をうろちょろしていたから捕まえておいたんだ」
僕が多部のその言葉を聞きながらも高原さんを見る。
「夏月。・・・ごめん」
高原さんは悔しそうに呟く。
「ぐっ‼」
姉さんも動けなくなった。
高原さんの首筋にはナイフが当てられていたからだ。
「おい!あの化け物女を動けなくしろ!」
多部が不良たちに指示を出す。
『ウッス‼』
姉さんの一番近くにいた不良二人が姉さんを押さえつける。
姉さんは何とか抵抗しようともしたが、そこで『バチッ』という音が体育館に響く。
音がした方向、姉さんの方を見ればスタンガンが姉さんの首に当たっていた。
「姉さん!」
「な、つ。ご、めん」
さすがにいくら強い姉さんでも女の子なのだ。
姉さんはひとたまりもなく気絶してしまった。
「さあ、改めてもう一度だけ聞くわ、高波君。私たちのグループに入ってくれないかしら?ねえ?どうかな?」
杉山さんは勝ち誇った顔で僕に聞いてくる。
「断ったらどうなる?」
僕は悔しそうな表情をしながら聞く。
「そりゃ~、お前をボコボコにして動けなくした後にこの二人を楽しませてもらうぜ。この二人、かなりの上玉だしな!」
イヤらしさと憎たらしさを合わせたような顔で笑いながら言うリーダー。
と、ここでさらに僕にとって悪いことに姉さんにやられていた不良たちが復活してきた。
さらにいつの間にか増援を呼んだのか、最初よりも目で見て明らかに不良たちが増えていた。
「さあ、どうする?」
この多部の問いに僕は・・・。
「じゃあ・・・」
僕は俯いた。
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