表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
軽い気持ちで国民的アイドルと友達になったら、周りの美少女達から激重感情をぶつけられる件――え!? トップアイドルの君まで!?  作者: 沢田美


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/108

全国ツアーは続く

 次の地方公演の日、僕はいつも通り学校にいた。


 沙也加が遠くの街でリハーサルをしている頃、僕は教室で数学の問題を解いている。その事実が、妙に不思議だった。


 昼休み、スマホが短く震えた。


『会場着いた』

『裕二がいない』

『知ってたけど、やっぱりいない』


 文面から、少しだけ曇っているのが分かる。


『学校にいるからな』

『でも応援してる』


 すぐに既読がついた。


『声でほしい』


 僕は周囲を確認してから、人気のない階段へ移動した。そして、短い音声を録音する。


「沙也加、今日も行ってこい。終わったら待ってる」


 送信して数秒後、返信が来た。


『保存した』

『本番前に十回聴く』


『一回にしろ』


『じゃあ五回』


 交渉の意味がない。


 思わず笑っていると、背後から天雨の声がした。


「白須賀さん?」


「ああ」


「遠くにいても、相変わらずね」


 天雨は僕の隣へ立ち、窓の外を見た。


「寂しくないの?」


「少しは」


「正直ね」


「でも、沙也加は仕事に行ってるだけだ。帰ってくる」


 僕がそう言うと、天雨は目を細めた。


「あなた、本当に白須賀さんの帰る場所になったのね」


 声は穏やかだった。


 それでも、ほんの少しだけ寂しさが混じっていた。


※ ※ ※


 その夜、公演が終わったのは二十二時を過ぎてからだった。


 スマホが鳴り、通話に出る。


「ただいま、裕二」


 初日より疲れた声だった。


 けれど、その奥には確かな充実感がある。


「おかえり。どうだった?」


「最高だった。初日とは歓声の響き方も違って、地方まで来たんだって実感した」


「そっか」


「裕二はいなかったけど」


「そこは言うんだな」


「大事だから」


 沙也加は少し笑った。


「でも、音声を聴いたら立てた」


「五回も?」


「七回」


「増えてるじゃないか」


「だって足りなかったから」


 重い。


 でも、その重さが今は遠くから届いてくる。


「裕二」


「うん」


「次の街にも行ってくるね」


「ああ」


「ちゃんと待ってて」


「待ってる」


 電話の向こうで、沙也加が安心したように息を吐いた。


「よろしい」


 全国ツアーは続いていく。


 僕の見えない場所で、沙也加は何万人ものファンを熱狂させる。


 そして公演が終わるたび、遠くから僕へ帰ってくる。


 距離はあっても、その声だけは、いつも一番近くにあった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

このお話が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひ「♡いいね」や「ブックマーク」をしていただけると嬉しいです。

応援が次回更新の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ