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遭遇

新しい異形の登場です。

高台を拠点に村付近に出没していた野生の異形をちまちま狩りながら、周囲を歩き回って過ごしていたら三日ほど過ぎた。

「今のところ・・・特に何の変化もないな。」

よし、村は大丈夫そうだな。今日はどこを探索するか。

「昨日はここから見える森の果て・・・森がどこまで続いているか確かめようとしたんだが・・・」

結局森の果ては無かった。ていうか、どんだけ広いんだよこの森・・・七時間ぐらい歩き回ってなんもなかった・・・野生の異形しかいなかったよ。てか、あいつら、自分よりも遥かにデカい相手でも何の躊躇いもなく向かってくるけど、恐怖心とかないのか?

「昨日と反対の方向に行こうかな。」

そう決めて、歩き始めた。小一時間ほど歩くと水の音が微かに聞こえ、音の方に行ってみると、川があった。

「おぉ。川だ。久しぶりの水辺だな。」

とも思って川を覗き込むと、何か黒い影が見えた。

「ん?なんだ魚————」

瞬間、黒い影は水面から何かが飛び出してきた。

「なっ!魚類型!?」

咄嗟に左腕を盾にすると前腕に齧りついてきた。

「このっ————!?」

空ていた左手で掴んで無理矢理引きはがし、地面に放り投げる。

地面に叩きられてビチビチ飛び跳ねるそれは、ヤツメウナギを彷彿とさせる丸い口に無数の人間の歯が生え、額の辺りには大きな目玉があり、太刀魚のような長い流線形の胴体には鱗の代わりにおびただしい数の魚類の目がそれぞれ不規則に動いていた。しかも優に四メートルはありそうなサイズだった。

「でっか・・・」

今の俺は八メートルぐらいあるが、それでも自分の腰辺りまで長さがある魚類が襲ってきたら普通に怖い。

というか、今まで見た野生の中で一番デカいのではと思うんだけど。

「魚類もいるのかよ・・・クゥはそんなこと言ってなかったよな————」

と思ったがよく考えてみれば、クゥが住んでいた村の付近にはそもそも歩いて行ける距離に川がない。

野生の異形に襲われる危険性を考慮すればわざわざ川に行く理由がない。そう考えるとクゥが魚類型の存在を知らなくても無理はない。

「水の中にもいるとかおちおち水も汲めないな。」

俺だからどうにかなったもののこれが人間だったら丸吞みだろう。

川に視線を戻すと、無数の魚影が見えた。どうやらかなりいるようだ。

「可能性なら避けたいが・・・」

川はどうやらかなり長いようで、とてもじゃないが迂回できそうにない。

この前通った川には、何も居なかったのにどうしてここにはこんなにいるんだよ・・・

「仕方ない、飛ぶか。」

川の中に入りたくないし、飛び越えるのが現実的では無いだろうか?

幸いにも俺は異形だ。人間だと、どう考えても無理だろうが今の身体なら行ける気がする。

俺は二十メートルほど下がり、陸上選手のようにクラウチングスタートで走り出して水につかるギリギリの所で踏み込み、走り幅跳びの要領で身体を前に倒し飛ぶ。俺の身体は弧を描きながら水に触れることなく宙に舞っていた。

おっ、行けそうだな。なんて思っていたのだが、川を三分の二を超えたあたりから、バシャという水音が無数に耳に届いた。

なんか嫌な予感がするとおもったら、視界の端に水の中から飛び出した無数の魚類型異形が飛んでいて、俺の足腰めがけて飛んで来ていた。が、嚙みつくより速く俺は反対側の岸辺に着地した。後ろでは、追いかけて来ていた魚類型異形たちが次々に打ち上げられていた。ざまぁ見ろ、魚野郎。

「ふぅ・・・越えれたな。」

ちょっと焦ったがどうにかなった。

「さて、散策を————」

「グギャァァァァァァァァァァァァァ————」

突然の凄まじい絶叫に思わず耳を塞ぐ。あっ、俺耳無かったわ。

「なっなんだ今の・・・」

恐らく声からして野生ではなく複合型ぽいけど、誰か戦ってるのか?

だとしたら危ないかも知れない。あれは普通の人間に対処できるレベルを超えてる。

気がつくと俺は声がした方向に走り出した。

そうするとまた、異形の叫び声が響いた。さっきより近くなったな。そう確信して、走る速度を上げると突然視界が開けたかと思ったら崖が迫っていた。

「————ッお!?」

咄嗟に足でブレーキをかけて止まろうとしたが、勢いは収まらずそのまま崖を滑り降りる形になった。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ————いでっ!?」

崖の下に着いた瞬間、足がもつれて顔面から思い切りズッコケた。

「いてて・・・顔面から行っちゃったよ。」

起き上がると地面が衝撃で僅かに陥没していた。

「って、こうしてる場合じゃねぇ。急がないと。」

戦闘音らしき音が聞こえるからすぐ近くかも。

小走りで戦闘音のする方に移動すると、そこには案の定、複合型の異形が居た。しかも、四体も。

はっ?四体とか冗談だろ!!思わず近くの木に隠れた。

流石に四体相手に突っ込むのは流石に無策すぎるので、戦ってる人には申し訳ないが様子を・・・と思い覗き込んで、絶句してしまった。

四体の異形に対立するように立つその人物は、黒い燕尾服を身にまとい、手には白い皮の手袋をし、頭部には羽飾りの付いたシルクハットを被っていた。

一見すると場違いな服装ではあるものの、人型である事が分かったが、人間では無かった。身長は三メートルぐらいはあるし、なにより、頭部が金属質で平たく懐中時計を裏から見たようなシルエットで、シルクハットは被ると言うか乗っかっているような感じで、どう見ても人間ではなく異形だった。

周囲には、まるで散弾銃を至近距離でぶっ放されたかのような蜂の巣みたいになって、こと切れた複合型異形が三体倒れていた。

「マジかよ・・・あいつがやったのか。」

俺では一体も倒せなかった複合型異形をすでに三体も葬っていることに、驚きを隠せなかった。

当の燕尾服の異形は、優雅に右手を後ろで組み左手には複合型異形の首を持っていた。

「ふむ、弱いですねぇ・・・弱すぎます。」

そう言って、異形の首を四体の異形に向かって放り投げる。

「ガァァァァァァァァァ————」

「キイィィィィィィィィ————」

転がって来た頭を見て異形達は耳が痛くなるような絶叫しながら激昂する。

「まったく耳障りですねぇ、この肉塊どもは・・・」

異形の叫び声に不快そうに呟く。

そして、四体の複合型異形は同時に燕尾服の異形に向かって襲いかかった。

「先ほどの攻撃を見ても、突貫してくるだけとは・・・なんとも芸がありませんねぇ。」

燕尾服の異形は微動だにせず、突っ立居るだけだった。

しかし、四体の複合型異形は燕尾服の異形に攻撃が当たると思われた瞬間、突然全身が蜂の巣みたく穴だらけになり、燕尾服の異形に触れることなく、静かに倒れた。

「はぁ・・・まったく汚らしい、醜悪な肉塊の血が付いてしまいましたね。」

などと言いながら、燕尾服の汚れを払っていた。

「ハッ・・・ハハハハハ・・・」

俺はもはや乾いた笑いを浮かべるしかなかった。助ける?そんな必要性は微塵もない、何をしたのかすらまるで分からなかった。

これはバレたらこっちが殺されかねない。こいつは余りにも次元が違いすぎる。

ここは撤退するに限る。そう思い気づかれないように四つん這いで、移動しよう。

「・・・さて、そこの貴方。隠れて見ていた事は知っていますよ。」

隠れていた事を指摘され、飛び上がりそうになる。

「どうでしょう?私と少々話をしませんか?」

確実にこっちを見て言っている。これは誤魔化せないな。

俺は諦めて、燕尾服の異形の元に行くことにした。














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