03 三人の影
新キャラ登場です!
「来い」
フィランダーが言うと、いつの間にか目の前に三人の男が立っていた。
「この三人はこの旅の護衛として連れて行く影達だ。顔合わせも兼ねて紹介するよ」
「シェリル様、お久しぶりです。今回の護衛をさせて頂きます、クリフです」
「久しぶりクリフ! 元気そうで良かった」
彼は以前執事見習いだった男だ。見目が良いと言う理由で執事見習いになったが、あまり適性はなく悩んでいた。ストレートの紫色の髪に水色の瞳を持つひょろっとした彼は、美形なのに困り眉なのが残念な印象だった。
「えぇ。身体の調子も良くなったんですよ」
困り眉だった眉は弓なりに戻った様でスッキリしている。本当に嬉しそうで何よりだ。
「だからコリーンが見送りに来たのね」
「もちろんシェリル様のお見送りのついでですよ」
コリーンはクリフより五つ年上の奥さん。少しうっかりなところがあったクリフにぴったりのしっかり者。聞いた時は驚いたけどこうして見るとなかなかお似合いな二人だ。
次に紹介されたのはどことなく誰かに雰囲気が似ている男だった。
「初めましてシェリル様。サミーと申します。兄のジェレミーとトミーがお世話になっております」
「え……三人兄弟だったの?」
「はい。僕は二人に比べて劣る容姿ですから、影の仕事をしておりました」
サミーは髪色や瞳、身体つきは兄弟そっくりだけど、彼らと比べて若干小さな瞳だった。涼しげな瞳は兄達よりも大人っぽさがある。
劣る容姿と決めつけてはいるが、私より遥かに美形な部類。
十分美形枠に入れて良いと思う。
「私は格好良いと思う」
「シェリル様……ありがたいお言葉なのですが……それを言ったら僕、若に睨まれます」
ちらりとフィランダーを見ると、案の定サミーを睨んでいる。
「ご……ごめんなさい」
「いえ。……嬉しかったです」
彼の笑顔は兄達に比べてちょっとほんわかしたものだった。
「最後は俺ですね。デリックと言います」
身長はクリフとサミーの間くらいだが、若干日焼けた肌と茶色の髪と黒い瞳には見覚えがあった。
「あれ? 貴方確か……庭師よね?」
「元です元」
以前使用人の名前を覚えた時には庭師だったはず。そのあと姿を見ていないのでどこに行ったのかと思っていたけど。
「まさか影になっていたなんて……」
「俺、この仕事の方が生き生きするのでこっちに変えてもらったんです」
「そうだったの。よろしくね」
「はい」
デリックはやんちゃそうな笑みを浮かべた。
この旅行について来る使用人は私の侍女であるネル、セリーナ、ルース。フィランダーの侍従であるトミー。影であるクリフ、サミー、デリック。あとは御者の四名だ。
「先行の馬車は俺とシェリル、トミー、ルース。ネル、セリーナは後続の馬車。影達はいつも通りに」
「「「「「「「はっ!」」」」」」」
こうして、私とフィランダーの新婚旅行が始まった。
馬車に乗っている間はのんびりとした会話が繰り広げられると思っていた。しかし私が余計な一言を言ったせいで強行軍になってしまった様だ。
私のバカ。なんで余計な事言っちゃったんだろう……。
それは数日前に遡る。
「馬車のペースなんだけど、出来るだけ早くして欲しいの」
「え……」
フィランダーはその言葉に固まる。
「だ……大丈夫?」
「ゆっくり過ぎると時間がかかるでしょう? アストリー領から王都への移動もそうしていたの。なるべく早く現地に着いて、そこで療養してからパーティーに臨んでいたから」
「なるほど。さっさと先に進んだ方が良さそうだね。でも、途中で熱が出たり体調が悪そうならそこで休むよ。良いね?」
「それで良いです」
私は若干いつもより早いペースで進むと思っていた。
だけど実際は……。
「こ……この早さで大丈夫なの?」
「大丈夫。決められている速度ギリギリ守っているよ」
馬車の中は常にがたつき落ち着きがない。
揺られ過ぎて私は気分が悪くなり隣に座っていたフィランダーに寄りかかってしまった。
「あ……ごめん」
気づいて起き上がろうとすると、フィランダーがそれを阻止するかの様に私の肩に腕を回した。
「こちらこそごめん。思っていたより早かったみたい。俺もこうしている方が落ち着くから、寄りかかってていいよ」
「シェリル様。危険でしたらこの準備もあります」
正面に座っていたルースの手には紙袋が用意してあった。
「……緊急の時はよろしく」
「はい!」
自分で早く行きたいと言ったくせにこれじゃあ……早くこの状況に慣れなきゃ!
私はとにかく寝る事に集中した。
「ん……え……」
起き上がると、私はいつの間にかベッドの上だった。
「どこ……ここ……」
ベッドから出ようとすると、ドアが静かに開く。ちょっと警戒しながら見るとそこにはネルがいた。
「シェリル様。起きたのですね」
「ネル……ここは?」
「最初の目的地だった街の宿屋ですよ。シェリル様がよく寝ていらしたので、若が運んでくれたのです」
「え……じゃあここは……」
「はい。二日はかかると思っていた西の都市ツーベルですよ。まさか初日の夕刻に着くとは思いませんでした」
早くても一日半はかかるはずなのに、先行する馬車が一台も居なかったため、スムーズに進み早く着いてしまったのだと言う。
「今は出発日翌日の朝です。と言っても、もう日はかなり高いですが……」
「ごめん……」
「謝るのはこちらですよ。さすがに早過ぎたので次からはペースを落とすそうです」
「そう……。フィランダーは?」
「この街の責任者と現在視察中です」
「分かった。……ネル、食事は……ないよね?」
「ございますよ。実はスープを一杯分だけ取っておいてもらっているのです。十一時になる前ならと特別にという事で。今、セリーナに持ってきてもらいますね」
「ありがと……」
宿屋の食事を取っといてもらうのはなかなか出来ない。
有能な侍女達が居てくれて幸せだよ私は……。
そのあとセリーナによって運ばれてきたスープは温かかった。
「冷えた料理はすぐ私が温めますからね」
私の目にはセリーナが炎の女神に見えた。
登場人物紹介
使用人ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前 クリフ
所属 平民 ヘインズ家影 元執事見習い
年齢 21歳 ※20歳→21歳に訂正しました。2024.10.1
容姿
・髪 ストレートの紫
・瞳 水色
・体型 中肉中背(細マッチョ)
・顔 一重 美形 たまに困り顔
・身長 180cm
魔法 闇魔法 中
備考 コリーンの夫
名前 サミー
所属 平民 ヘインズ家影
年齢 21歳
容姿
・髪 ゆるウェーブの水色
・瞳 深い青色
・体型 中肉中背(細マッチョ)
・顔 一重 涼しげな瞳 若干可愛い系寄りの顔
・身長 175cm
魔法 水魔法 中
備考 既婚 ジェレミーとトミーは兄 三兄弟の一番下
名前 デリック
所属 平民 ヘインズ家影 元庭師
年齢 23歳
容姿
・髪 ストレートの茶髪
・瞳 黒色
・体型 日に焼けた肌 中肉中背(細マッチョ)
・顔 快活そうな顔 つり目
・身長 178cm
魔法 土魔法 中
備考 既婚 元庭師




