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06 第二回シェリル様信用回復会議

使用人視点です。

場面が変わったので※をつけております。


 ※






「それでは、第二回シェリル様信用回復会議を始めます」


 今回使用人室に集まったのは侍女、執事、侍従のトミー、そしてフィランダーのみ。その他の使用人達はこれ以上は協力しづらいとの事で参加は見送った。


「まずは……ネル」


 ユーインの振りにネルが答える。


「はい。シェリル様とのお茶会で仕入れた事柄を発表致します。まず、シェリル様の殿方の好みが判明しました」

「俺! 俺でしょ?」

「若。落ち着いてください」


 呆れ気味のトミーが立ち上がったフィランダーを無理矢理座らせた。


「シェリル様の好みは……」


・真面目の人

・顔のタイプも真面目な印象を受ける人

・一途な人


「どれも若に当てはまらない事が分かりました」


 ネルの言葉に、使用人達は全員「プッ」と吹き出しそうになる口を各々の方法で抑え、当のフィランダーは机に突っ伏した。……と思ったら、すぐに顔と手を挙げる。


「いや! 一途なのは当ってるぞ! 俺はシェリル一筋だ!」

「世間で『遊び人令息』と言われている人の発言とは思えませんね」

「くっ……過去の自分を殴りたい……!!」

「それに顔のタイプでいえば、パトリック様の顔が好みの様です」

「あんな父親に負けたのか……」

「パトリック様のポンコツぶりは顔には出ませんからね」







 フィランダーの父のパトリックといえば、剣と魔法の腕なら天下一品の王国騎士団長である。しかし他の事は全くの皆無。優秀な者が周りにいてくれるからこそ騎士団長でいられるのだ。領地経営もさっぱりで面倒ごとをフィランダーに丸投げするのはいつもの事。


「シェリル様もパトリック様が頼りにならない事は知ってますよ。あくまで顔が好みというだけです」

「そうか……なら、なるべく真面目な顔を心掛けよう」

「そんな顔が見れますかね?」


 使用人達は皆、フィランダーの顔をじーっと見ていた。


「なんだ? まるで俺にそんな事は出来ないと言っている様ではないか」

「今も真面目な印象のカケラも伝わってきませんよ」

「嘘だろ……」

「私達には分かりますよ? ただ……赤の他人が見たら、色気がダダ漏れな人しか見えません」

「……どうすればいいんだ……」

「とりあえずこれ以上浮名を流す事はない様にするしかありませんね」

「やってるじゃん」

「こんな短い期間で周りの意識を変える事は難しいと言っているのです」


 しょんぼりするフィランダーをさらに追い討ちをかける事をネルが口にした。







「シェリル様は若が遊び人時代にお付き合いしていた方々とは正反対のお身体です。なので珍しいシェリル様のお身体をつまみ食いしたかっただけじゃないかと勘違いなさっております」


 ピシッと音を立てて使用人室の空気が凍る。


「そんな訳ないだろう!?」

「事情は存じておりますが、出来れば起きた時に横に居て欲しかったそうです」

「……あれは自分が悪いのです。その日若は一日休みだったというのに……幹部達ときたら!!」


 頭を抱えながら訴えるユーイン。そんなユーインを無視してセリーナが続ける。


「それに若の隣にいるのはかなりの覚悟が必要ですからね」

「覚悟?」

「若。ご自分が『遊び人』だった自覚あります? 色んな女性と関係をお持ちになったのは事実ですよね?」

「……まぁ」

「シェリル様は若と関係を持った方から笑われる事を恐れています。シェリル様はご自分の容姿に自信がないのは知ってますよね? ……正直同情してしまいました。若は美形で目立ちますし……隣にいるとずっと嫉妬の目に晒されて、シェリル様の身体が保たないのではないかと心配になります」

「普通の女性でもきついですよ。私なら無理です」


 ネルの言葉にその場にいた女性陣全員が渋い顔でうなずいた。

 絶望的な顔になったフィランダーの目に涙が浮かぶ。


「……じゃあどうすれば……」

「シェリル様だけを愛しているというのが、周りにも分かる様に出来ればいいのですが……」






 すると一人の執事から手が挙がった。


「噂を流すのはいかがでしょう?」

「噂か」

「はい。若はシェリル様を溺愛していると言った様な噂を領都にまくのです。そうすれば少しは嫉妬の目が和らぐかと……」

「……それ、うちの出入り業者に散々言ってますけど、それでも周りの目がきついと思いません?」

「確かに……言われてみればそうですね」


 一人の侍女の言葉に肯定したのは副侍女長になったコリーンだ。

 それに案を出した執事が質問する。


「領民達は使用人達がわざと広めていると思っているのでしょうか?」

「正直、うちの領民の大半はシェリル様を受け入れている印象です。しかし独身の女性達はまだ若の愛人の座を狙っている人が多いですね」

「……その情報は確かなのか?」

「はい。出入り業者の娘が私の幼馴染なのですが、未だに諦めてはいないのです。その周辺の女性達も同様で……私は若の好みをしつこく聞かれました」


 皆がその侍女を「おつかれ様」という目で見つめた。







「良い案だと思ったのに……」

「お役に立てず申し訳ないです」

「いや……よく言ってくれた」


 フィランダーが執事を労い、ユーインが仕切り直した。


「それでは……シェリル様に若が愛しているという事を示す方法を考えましょうか」


 その言葉に真っ先に案を出したのはトミーだ。


「ですね。何か贈り物をなさったらよろしいのでは?」

「あぁ! それならとっておきのものがある」

「え? もう買ったのですか!?」

「買ってはいない。だがこれならシェリルも喜んでくれると思う!」


 フィランダーの言葉に使用人全員が察し、微妙な表情を浮かべた。


「……喜んでくれると良いですね」


 嬉しそうな主人に使用人達は何も言えなかった。




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