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12 お土産




 店の外に出ると、姉は満足そうな顔をしていた。


「良い買い物が出来たわね」

「はい」

「あとは?」

「ジャーキーと女性向けのものを……」

「ではハンカチの方が良いかしら?」

「女性の一人にはジャーキーを渡そうかと。ハンカチよりそちらの方が好きそうですし……」

「……でもね。形に残るものを渡しても良いと思うの。折角だから、両方あげましょう」

「あ……あの、お金が……」

「足りなかったら、私が出すわ。騎士団の先輩方に渡すのでしょう?」

「あ、ありがとうございます」


 悩んだ結果、女性陣には手鏡を渡す事になった。


「これなら持ち歩けるし、色んな場面で使えるはずよ」


 さすがお姉様。

 「頼りになるお姉様を持って、ポンコツな妹は幸せです!」と叫びたいくらいだった。


 思っていた以上にお安かったので、手持ちで支払えると思った私は、手鏡をもう一つ買いその場でお姉様に渡すと、「べ……別に欲しかった訳ではないのよ!」と少し顔を赤らめながらも受け取ってくれた。







 楽しい日々はあっと言う間に過ぎてしまい、私が王都へ戻る日が来てしまった。


「もう行くのか」

「うん。また帰って来ますから」

「今年の冬は冷えるから、しっかり着込みなさいよ」

「はい」


 荷物を持って家の門を出ると、父や姉、使用人達が門の外まで見送りに来てくれた。


「もう、大げさだよ」

「大げさなものか! 戦争が始まるんだぞ。心配ぐらいさせてくれ」

「お父様……必ず、帰って来ます」

「絶対ですからね」

「……はい!」


 私は少し涙をにじませつつ、王都に向けて出発した。


 馬車を乗り継いでやっと王都に戻ってくると、事前に書いていた手紙を持って真っ先に騎士団の寄宿舎に行き、ビル宛の手紙を管理人さんに預けてから、女騎士団の寄宿舎へと帰った。

 返信がないかそわそわしていたのだが、結局その日は返信は返ってこなかった。







 次の日。


「おかえりなさい。ホリー」

「ただいま戻りました」


 ジェネ様の笑顔が久々で眩しく感じる。


「あの……安物ですが、受け取ってくださいますか?」

「あら? もしかして、お土産? ジャーキーはどんな味なのかしら?」

「それだけではなくて……」

「え?」


 首を傾げるジェネ様に私は約束のジャーキーと手鏡を手渡す。


「まぁ! 手鏡!? これなら持ち歩けるわね!」

「喜んで頂いて良かったです」

「とっても良いものをありがとうね、ホリー」


 「喜んでもらえて良かった」と私はホッとする。

 この後ダーシーさんにも渡すと、満面の笑みを浮かべて抱きつかれた。


 そんな一日が終わり寄宿舎に戻ると、ビルから手紙が届いていた。


「明日、いつもの所で待ってる」


 手紙を開いていつも通りの文言を見ると、自然と私の口角が上がる。その日は良い気分でベッドに入った。








 その次の日。

 業務が終わり、私は王城の門近くの生垣の陰に向かう。着くと、そこにはもうビルが待っていた。


「ごめん、遅れた?」

「今着いた所。ホリーが帰って来たら、すぐに会いたかったんだけど……」

「忙しいんでしょ?」

「……ごめん」

「謝らないでよ。これ、約束のジャーキー」

「ありがとう! 大切に食べる!!」

「それと……」


 私はリボン付きのネックレスをビルの前に差し出した。


「あ……姉がね。折角だからアクセサリーでも贈ったらって言われて……それで……」

「……俺に?」


 恥ずかしくて、私はビルの顔を見ずにうつむきながら縦にコクリとうなずく。

 ビルは手を差し出してネックレスを受け取り、すぐにリボンを外して自分の首に手を回しネックレスを着けてくれた。


「ありがとう、ホリー。すごく嬉しい」

「実は……お揃いなの」


 私の胸元を少し開けてネックレスを見せると、ビルの目が輝いた。


「本当に……!? こういうのは男からだろ!! 俺のバカ!!」

「ビル!?」


 ビルは自分の頬に向かって拳を向けるので慌てて止めた。すると眉を下にして気まずそうにビルは口を開く。


「ホリー。俺からも贈りたいんだけど……」

「戦争の準備で大変って聞いてるけど?」


 今は自領に一旦帰っている人も多い中、王都に残った者は着々と戦争の準備に勤しんでいる。なので休みもなかなか取れない状況だし、休みは疲れ果てて一日中ベッドの上という事もあると私は聞いていた。


「またしばらく会えなくなるかも知れないけれど、それ、私だと思って」

「ホリー……大事にする」


 そういってビルは私を両手で包み込んで、満足するまで離してくれなかった。




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