○●の世界-2
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聞こえるのは、小鳥のさえずえとセットで、ドアをカチャカチャといじる音。
目が覚めた。目がさめてしまった。実に切りの悪いシーンで、目がさめてしまった。
僕は勢い良く、起き上がった。
目を覚ましたばかりなのに、全然眠さを感じない。僕の脳は覚醒しているみたいだ。
それにしても。
なんであんな中途半端で夢が終わるんだ。意味が分からない。まあ夢だから、いつ途切れても仕方が無いんだけどね。でもね。
そうか。これはたぶん、嫌がらせだな。誰だ僕にこんな嫌がらせをやっている奴は。おいこら。
「あわわわっ」
ドア方向で声がした。
僕は、ドキリとしながら、とかそういうことはなく、普通に声のした方向を向いた。
見る方向は、ドア。やっぱりドア。
「しんちゃんびっくりさせないでよー」
「…………」
パジャマ姿の咲だった。360度どこからどう見ても、おそらく咲だと思う。
「咲」
「なにー?」
僕はニコッと微笑む。
「嫌がらせしないでね」
「い、いやがらせー? なんのことー?」
咲は、頭上にクエスチョンマークを浮かべている。
僕は、満面の笑みを浮かべながら、時計を確認した。
5時40分。起床時間より若干早い。
「僕は、もう少し寝ていたかったんだ」
「早起きは三メートルの得ー」
「何を三メートル得するんだッ」
普通は『早起きは三文の得』だよね。常識だよね。2週間前に授業で習った。
「といれっとぺーぱーかなー?」
「いらねえッ」
三メートルのトイレットペーパーをどうしろと言うんだ。ミイラ男になれって? ジョーダンキツイね!
って、よくよく考えてみたら、三メートルのトイレットペーパーじゃ短すぎて、ミイラ男にすらなれないじゃないか。
「じゃあ、身長?」
「身長3メートルも伸びたら、一発でギネス更新だねッ!」
「そうなのー? なら、明日はもっと早くに起こしに――」
「やめてください本当にやめてくださいお願いしますやめて」
僕の睡眠時間は、これ以上減らさせない。
もっと身長を伸ばすためにも!
とか言ってみたけれど、実際は睡眠をよく取ることも大事だけれど、バランスの良い食事をする方が、身長は伸びるって聞いたことがある。
僕は、こういうことだけは詳しい。こういう事なら僕に何でも聞いてね。
一応言っておくけど、僕の目標は、身長を170㎝超えにすることだから。まだまだだ……。
僕は座った状態で、大きく背伸びをした。
「あー、もう目が覚めちゃったなー。まあいいや……それじゃあ、咲。少し早いけど、朝食作るよ」
「わーい。それで、今日の朝食は何ー?」
僕は一時的に考えこむ。
昨日、買い物をしていなかったし、家にある食べ物も殆どなくなっているはず。あるのは、食パンぐらいかな……。
「家にあるものー……うーん……パンぐらいしかないね」
「フライパン?」
「食べられるのなら、食べてみやがれッ」
「えー、無理だよー。しんちゃんこそ食べてみてよ」
「僕も無理だよ?! ……というか、普通に食べられるパンだって……」
咲は、柔らかそうな唇をへの字に曲げて、唸っている。咲なりに、あれこれ考えているみたいだ。咲なりに。
「あっ」
咲は手をポンっと打つ。そして、僕を指さした。
「パンダ!」
「違うなぁッ!」
「パン粉!」
「惜しいッ」
「パンツー!!」
「…………」
ここはスルースキルを使うべきところだよね。
僕:ちなみにパンはパンでも食べられないパンは何か知ってる?
咲:知ってるよー
僕:答えてみてよ
咲:フラ――
僕:(さすがの咲でもこの問題は簡単すぎたね……)
咲:フラクタル構造
僕:パンですら無いだとッ
咲:ふぇ? ちがうのー??




