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False;World  作者: 川犬
21/32

〇●の世界-1

第二章突入です!


●●●●●


 冷たい何かが頬に当たっているのに気がついて、目を覚ました。

 ゆっくり起き上がろうとする。けれどどういう訳か、体が動かなかった。

 声をだそうとしても、口が開かない。手を動かそうとしても、指すら動かない。

 まるで、僕自身の体じゃないみたいだ。いや、実際僕の体じゃないのかもしれない。

 また例の夢だ。でも、今回の夢では、僕は体を動かすことができない。これじゃあどうすることもできないよね。

 と。

 そんなことを思っていると、手が勝手に床につき、体が起き上がった。僕の意思とは無関係に。

 それから勝手に声が出る。これまた、僕の意思とは無関係に。

「いってて……」

 僕の声じゃなかった。

 この声は、


 悟朗の声だった。


 ……つまり、僕は悟朗視点で、あの夢を見ているらしい。なんでそうなったのかとかそういうのは、夢だからとしか言い用がないから聞かないでね。

 たぶん、悟朗が咲に告白したらどうしようって考えている間に、寝ちゃったからかな。まあ細かいことは気にしないでおこう。

 悟朗は、辺りを見回す。モノクロの教室。モノクロの外。

 相変わらずだ。

「俺は確か……」

 悟朗は何か、考えこむような態勢になった。

「学校の帰りに、忘れ物に気がついて、学校に戻ったら……」

 そこで、悟朗は黙った。

 しばらく静寂が続く。

「だめだ……そこから思い出せないな」

 悟朗は、このモノクロの学校に行き着くまでの記憶がないらしい。……夢だし、そんなこと気にしても仕方が無いか。

 悟朗は小さなため息をついて、教室の外へ、つまり、廊下へ移動した。

 僕は相変わらず悟朗視点だ。感覚的に言えば、悟朗と一体化したような感じ。変な意味じゃない。

 廊下は、僕の時とは違って、明かりがついていた。はっきり遠くまで見渡せるけれど、モノクロなのには変りなかった。

「ん? そういえば、なんで白黒なんだ?」

 今気づきやがった悟朗。さっきからずっとモノクロなのに、今気がつくとか、さすがとしか言い用がない。一応、輝き学園高校では、学年トップの成績を持っているのにね……。まあバカ学校だし、成績学年トップだからといって、頭が良いというわけではないから、仕方が無いことなのかな。

 悟朗は、駆け足で廊下を走った。バスケ部のエースなだけあって、僕よりも明らかに走行スピードが早い。悟朗の足がほしい。あ、今のもただ単に羨ましがっているだけだから。変な意味で取らなくていいから。うん。

 だけれど、走り続けても走り続けても、景色は何一つ変わる気配がなかった。ただひたすら廊下の一直線。曲がるところなんてもともと無いような感じだ。いや、そもそもずっと同じ場所をループしているのかもしれない。

 それから悟朗は、40分ぐらい走り続けた。

 それでも悟朗は息切れを起こしていない。余裕の表情。体力ありすぎだよ……。

「なんだここ? 学校にしてはやけに広いな」

 悟朗の方でも、廊下が異常に長いことに気づきだしたみたいだ。40分走り続けて。欲を言えば、もっと早く気がついて欲しかった。

 悟朗は走るのをやめて、ゆっくりと歩き出す。

「誰かいるかー!」

 だけれど、返ってきたのは沈黙だけだった。僕視点の夢でもこんな感じだったな。

 悟朗は延々と続く廊下を歩んでいる。

 ふと、後ろからガタッと音が聞こえてきた。悟朗は、すっと後ろを振り返る。

「誰だ?」

 そこには誰もいなかった。ただ、モノクロの廊下が続いているだけだ。

 でも、教室のドアが不自然に開いていた。

 悟朗もそれに気が付き、教室のドアに向かう。

 教室の中は真っ暗だった。その暗闇の中で、微かに息遣いのようなものが聞こえてきた。

 悟朗の息遣いではない。となると、悟朗以外の誰かがこの真っ暗な教室のどこかに潜んでいるということになる。

「誰か居るのか?」

 悟朗は、慎重にゆっくりと、照明のスイッチに手をかけた。

 パチンッという音と共に、教室全体が明るくなる。

 それから。

 それから、教室の中央よりやや窓側の位置で、その息遣いの持ち主の姿も露になった。

 少女だった。

 その少女は、この学校の制服をまとっていて、セミロングのやわらかそうな髪で、どこか、神聖な雰囲気を漂わせていた。

 そう。あの少女。

 名前はまだ教えてもらっていないから僕はその少女の名前を知らない。はずだ。

 でも、もうこれで、この少女と出くわすのは3回目となる。2度あることは3度あるってね。まあ全部夢の中で、なんだけど。

 それで、その少女は、縮こまって怯えていた感じだった。机を盾にして、隠れている。明かりがついちゃったから、丸見えなんだけれどね。

 悟朗はその少女にゆっくりと近づく。

「おまえ、名前は?」

「死神じゃないの?」

「は?」

 少女は、警戒を解かず、悟朗が近づく度に後ずさった。少女の脇にあった椅子が少女に当たり、がごっと音を立てた。

 まただ。また少女は、『死神』って単語を口にした。

 僕の中で、『死神』が浮かび上がった。

 金属音の笑い声。巨大な鎌。それから、ギラギラと赤くひかる目。

 何度思い出しても、悪寒がする。

 悟朗は足を止めた。

「……死神? なんだそれ。俺は目が覚めたら、いつの間にかこんなへんてこな学校にいて、早く脱出したいだけなのだが」

 その言葉を聞いて、少女はあからさまに安心したような態度をとってから、ゆっくりと立ち上がった。

 悟朗の身長が高いので、少女が僕が見た時以上に小さく見える。

「なんだ。死神じゃないんだ」

「だから、死神ってなんだよ」

 その少女が、パンパンとホコリを払いながら、ちらっと悟朗を見る。

「知りたい?」

「ああ、全部教えてくれ」

 少女は一呼吸置いてから、語り出す。

「私が知っていることだけ教えるね。……この世界は、あんたがいた世界とは隔離された世界。ある条件を満たさないと脱出できない」

「ある条件ってなんだ? ってか、隔離された世界ってなんだよ。異次元だとでも言うのか?」

 少女は、はっきりと頷いた。

「うん。それで、その条件っていうのが――私は、『脱出キー』って呼んでるんだけど――残念ながら、『脱出キー』は人によって違うの」

「人によって違う?」

 少女はニヤリと笑った。

「うん。しかも困ったことに、本人でもその『脱出キー』が何なのかがわからない」

「じゃあ脱出できないってことになるな」

 少女はふりふりと首を横に振った。

「そうでもないよ。本人でもその『脱出キー』がなんなのか、わからないけれど、でも、『脱出キー』を手に入れられそうな場面になると、直感的に『脱出キー』がなんなのかがわかってしまう」

「それで、その『脱出キー』を手に入れられる、と」

「そうだね。……手に入れられそうな場面が来る確率は低いけど」

「なるほどな」

 少女は、ニコッと微笑む。

「へぇ、意外とすんなりと認めるんだね」

「……まあな。この世界がモノクロな地点で、あからさまに俺がいる世界じゃないってことはわかるしな」

「ふぅーん」

 悟朗は机に座った。椅子に座れって。

「他に私に聞くことはないの?」

 悟朗は考えるようなポーズを取らずに、即座に答えた。

「そうだな。そういえば、死神ってなんだ? さっき、死神がどうだとか言ってたが」

 少女は再びうつむく。

「死神っていうのは、この世界の住人みたいなものだよ。私はまだ詳しくはわかんないんだけど、知っていることだけ話すと、死神には理性のある死神とそうじゃない死神っていうのがいるの。理性のある死神は、人みたいで、普通に意思疎通とか出来るんだけど……そうじゃないほうは」

「そうじゃないほうはなんだ?」

 そうじゃない方を僕は知っている。

 知ってしまっている。

 少女は続けた。

「……そうじゃない方は、私達人間を襲う。鎌を持っていて、それで攻撃してくるんだけど、その鎌で引き裂かれたら、……消えるんだ」

 一瞬の沈黙。

「消える?」

「そう、消える」

「どんな感じにだ?」

「文字通り、消えるんだよ」

 悟朗は机に座るのをやめ、立ち上がる。

「消えるって……まあ、こんな世界だし、ありえないことはない、な」

 悟朗は再び机に座った。……なんで立ち上がったのか。

「お前のいうことを整理するとつまりこうだ。――この世界は異世界で、死神がいて、死神に出会ったらすぐ逃げろ。それで、脱出キーをさっさと見つけろ。これで合ってるな?」

 少女はこくりと頷いた。

「合ってるよ。私が知ってるのはこれぐらいだけど、他に何か聞くことある?」

 僕は、その少女についてもっと知りたい。

 いや、もっと適切な言葉があるかもしれない。

 そう、


 思い出したい……?


 そんな感じなんだ。それが、なぜかしっくり来る。

「そうだな。俺はこれからどうすればいい」

 悟朗は、僕が聞きたいことを華麗にスルーした。でも、僕のほうがスルースキルは上だ。

 少女は、意地悪そうな表情で、

「知らないよそんなの。勝手にこの学校の探検でもしてれば?」

「なら、質問を変えよう。おまえはこの世界にきてから、今までどうしてきた」

 その悟朗の質問を聞いた瞬間、少女はうつむいた。

「私は……」

「おまえは?」

 少女は、さっきまでパーだった手をグーにした。

「私は、待ってるんだよ」

「待ってる? この世界に俺以外の誰かが紛れ込むというのか?」

「うん。この世界を創り上げた化物が言ってた。…………シンジを連れてくるって」

 僕の名前がその少女の小さな口からこぼれた。

 僕の名前。

 ……え? なんで?

 悟朗は、僕の名前が呼ばれた途端、ビクッと体を震わせてから、その少女に言及する。

「神治のことか!? 神山神治のことなのか!?」

 悟朗の反応を見て、少女が驚いたような表情を向ける。

「え……シンジを知ってるの?」

「当たり前だろ!! あいつは……いやそんなことより、神治が来るってどういうことだ?!」

「…………」

 少女は、目を見開き、口をぱくぱくしたまま動かない。いや、たぶん動けないんだと思う。

 それから――


●●●●●



悟朗:変な夢を見た

僕:へえ、それはどんな?

悟朗:じゃあ話すぞ。――夢のなかで、俺は、暗闇の部屋ん中にいた。真っ暗だったから電気をつけようと思い、俺はスイッチを探したんだ。暗かったから見つけるのが大変だったよ。それで、やっとの思いでスイッチを見つけて、電気をつけてみたら……なんと……

僕:なんと?



悟朗:咲ちゃんがたくさんいたんだ

僕:!?

悟朗:幸せだった

僕:恐怖の塊でしか無いよ!?

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