〇〇の世界-16
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がばっと僕は体を起こした。目覚めたばかりなのに、呼吸は乱れていて、背中の汗がびっしょりだった。
さっきのが夢だとは、思えないぐらい鮮明に覚えている。
初めて、あの少女と少し長めの会話をした。
でも、僕はなぜだか、その少女の顔と声を思い出せなかった。会話内容は覚えている。だけれど、それは文章として。
とりあえず、呼吸を整える。
それから、僕は、時計で時間を確認した。
6時ジャスト。
いつもの起床時間は6時30分なので、まだ30分の猶予がある。
もうちょっとだけ横になろう。
と思ったところで、扉がガチャリと開いた。
誰だろう。誰だろう。誰だろう! まあ誰だか何となく分かるんだけれどね……。
「しんちゃんおこさないように、そぉーっと……あ」
「……」
僕と咲の視線がいい感じにぶつかった。いや、全然よくないけど。
「しんちゃんおはよー」
「……」
「し、しんちゃんー?」
どうしよう。このまま、無理やりにでも横になって寝てしまおうかな。いや、そうしたほうがいいなやっぱり。
僕は、横になった。そして、目を閉じる。おやすみモードオン。
「し、しんちゃん?! お、起きてよー! なんで寝ちゃうのー!?」
「……ぐぅ」
「しんちゃん~!」
僕の体がゆっさゆさ揺らされる。もちろんスルー。
このまま30分間ずっとこうしていようと思う。
「むぅ……こうなったら……」
咲が何かしようとしているけど、無駄だ。おやすみモードの僕は何があっても絶対に起きない。まあ、この設定は今作ったんだけどね。
「ふぅ~」
僕の耳に甘い息がかかった。
「ギャッ!」
一瞬何がどうなったのか理解できなかった。
やばかった。とにかくやばかった。精神的に。
僕は勢い良く起き上がった。耳だけでなく、顔全体が熱い。やばいなんて破壊力。
僕は、心臓をバクバクさせながら、咲の方を見た。
咲はにこりと可愛らしげに笑っている。
僕と5センチメートル先の空間で。咲の息遣いが僕にも伝わってくる。
「うわッッ!!」
咲から一気に距離を取る。
距離をとったときに、バコッと壁におもいっきり頭をぶつけたけれど、そんなもの気にしちゃいられない。
僕の熱はさらに上昇した。
「咲ッ! ななな何の真似だよよよよよッ」
僕の声が上ずりまくってた。最上級。
咲は、なおもにこりと笑って、
「何って、今みたいなしんちゃんのかわいい顔が見たかったからー」
「ききききききさまッッ」
心臓が大忙し。とにかく落ち着け僕! とでも心のなかで僕自身に言い聞かせない限り、間違いなく吐血する。吐血レベルだよこれ。
……ここは、一旦落ち着こう。
僕は、目を閉じて、大きくゆっくり深呼吸をする。
それから、目をゆっくりと開けた。少し落ち着いてきた。
「しんちゃんの慌てる顔かわいいー!」
「とりあえず、朝食にしようか」
「ふぇ? あ、うんー」
持ち前のスルースキルを無事に発動して、僕はベッドから立ち上がった。
朝から大ダメージだ。
咲:あ、悟朗君だー
悟朗:お、咲ちゃんじゃないか。なんだ?
咲:この前は、はちみつの話聞いてくれてありがとうねー
悟朗:あー、別にいいぞ! 楽しかったしな!
咲:じゃあ、この前の続きできたんだけど、聞きたいー?
悟朗:もちろんだ!
咲:じゃあ話すねー。
……女王蜂さんは部下たちに命じました。
「この前のはちみつをもう一度食べたいわ」
部下たちは頭を下げました。
「「「了解っすボスッ」」」
「期限は明日までよ」
「「「イエスボスッ」」」
次の日ー。
なんと女王蜂は謎の失踪を遂げた! 犯人……いや犯蜂は、この蜂蜜集めをしていた部下たちの誰かだッ!
コ○ン「犯人はお前だ!」
部下S「何で俺なんだよ!? 何か証拠はあんのかよ!?」
おしまい。
咲:どうだったー?
悟朗:……なんていい話なんだ。感動した……
咲:でしょでしょー?
僕:(何も聞かなかったことにしよう……)




