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False;World  作者: 川犬
13/32

〇〇の世界-12

 特にいつもと何の変化もなく、放課後がやってきた。部活の時間だ。

 僕は、咲と別れてから、早速パソコン室のドアの前までやってきた。

 そして、何のためらいもなくドアを開く。

「神治くぅ~ん!」

「ッッッ!」

 突然何かにガバッと抱きつかれた。二つの大きなふくらみが押し付けられ、ほのかにシャンプーの甘い香りがする。

 僕は、硬直した。動けない。あまりに唐突なことだったし、まあ誰でも動けなくなるだろうね。

「あぁあ~~かわいぃ~~!」

 今の声を聞いて、だんだん落ち着いてくる。

 状況をほとんど理解した僕は、小さくため息をついた。

「……こころ先輩。抱きつくのはやめましょう。ここは学校です」

「知ってるわ~。知っててやってるんだも~ん」

 こころ先輩。氏名は月下こころ。高校3年生で、パソコン部の部長さんであり、生徒会長の彼女さんだったりもするお方だ。身長は、僕より少しだけ小さいってくらいで、僕とほとんど変わらない。

 僕に頬ずりをして、背中の真ん中辺りまで伸びているの赤いポニーテールがゆっさゆさと揺れる。

「……離れてください」

 こころ先輩は、僕の言葉を無視する。むしろ手に込める力を強めてきた。

「っふ~」

「……ッ!!」

 こころ先輩が僕の耳に息をゆっくりと吹き掛けてきた。ゾワワワワワワッと全身に鳥肌が立つ。

「やめてくださいッ!」

 僕は耐えきれなくなって、こころ先輩を押した。こころ先輩は、あっさりと離れて、残念そうな表情で僕を見てくる。

 あ、押した場所は、肩らへんだから誤解しないように。例のあの場所は触ってない。触ってないって。

 それと、別に押し倒したりしたってことでもないからね。

「むぅ~、残念~。あ、生徒会長には内緒ねっ!」

「……はい」

 内緒にするくらいなら、こんなことするな、って言いたい。こころ先輩は何がしたいのだろう。

 僕は、いつもの定位置にある席に座って、PCを起動した。

 僕の周囲にいる人たちは無関心で、PCと格闘している。こころ先輩が僕を襲ってくるのは日常茶飯事なので、誰も興味を持たないってだけ。

 そんなこころ先輩はって言うと、僕を襲うことをあきらめて、鼻歌を歌いながら、自分の席でPCをいじっている。

 時々、はぁはぁとかそんな感じの色っぽい声が聞こえるけど、聞こえないふり。

 こころ先輩が、僕がパソコン室に入るたびに襲いかかってくるのは、僕が『可愛い』からってことだかららしい。……違うよね。僕はいたって普通の容姿だよね。ね。ね! って、そんなことを聞いてもどうせ「そうだよ」って返答しか来ないだろうし、どうでもいいか。

 PCが無事起動し、僕はいつも通り2ちゃんねるを徘徊した。


 しばらく、2チャンネルを徘徊していると、誰かが立ち上がる時の椅子のずれる音が聞こえた。ちらっと、音が聞こえたほうを見てみる。

「……うぅぅ~~ん!」

 こころ先輩が立ち上がって、背伸びを気持ちよさそうにしているところだった。

 PCをシャットダウンした時のあの音楽も聞こえてきた。そんなところからして、たぶん今日はもうおしまいなのだろう。

 僕は、腕時計で時間を確認した。

 4時30分。

 部活終了時間が6時なので、終えるのにはかなり早い。

 僕は、こころ先輩に声をかけてみることにした。

「こころ先輩」

 こころ先輩は、声に反応して、僕のほうを見る。

「んん~? なぁにぃ~?」

「もう終わりですか」

「そうよ~。これから、生徒会長とデートだしね~~」

 デート、か。でもデートするのには、時間的に厳しい気がするけどどうなんだろう。

「今からですか?」

「ええ~。これから、泊まりに~~。とっても楽しみぃ~~」

「……」

 泊まりに。泊まりに。泊まりに。

 間違いなく、デート以上のことをしようとしているッ!

 ふふ、ふふふ深くは探索しないでおこう。聞いても、こころ先輩は、ダメージ皆無なのかもしれないけれど、僕は精神的に深刻なダメージを受けてしまう。

「それじゃぁね~~。神治君、次はほっぺにちゅーしちゃうからぁ~」

「……断固拒否しますお疲れ様です」

 ほかの部員たちもぽつぽつと「お疲れ」との声が聞こえてくる中、こころ先輩が鼻歌を歌いながら、パソコン室を退室した。


こころ:神治君かぁいい~

なでなで

僕:……こんなところでやめてください

こころ:へぇ~じゃあここじゃなきゃどこでもいいの~?

僕:いえ、そういうわけではないですけど、でもここはやめてください

こころ:ほぉ~なんでかな~?



僕:ここが男子トイレだからですッ

周りの男子A:神山、俺は気にしてないよ

周りの男子B:俺もさ!

周りの男子C:俺もだ!

僕:え、何をいって――


こころ:もふもふ

僕:ギャーッ!!

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