〇〇の世界-11
僕と咲は学校からそれほど離れていない位置に家があるので、基本徒歩で通学する。ちなみに10分ぐらいで学校に到着する。まあ咲のゆったりとしたペースで行くと、だけどね。
というわけで、今、学校の校門をくぐろうとしているところだ。
「あ、悟朗」
僕の横に咲が並んで歩いているさらに横にある体育館から、ちょうど悟朗がバスケの朝練から解放されて出てきた。
僕の声に気がついたのか、悟朗が汗をタオルで拭き取りながら、こっちに寄ってくる。
それから、悟朗は手を挙げてきた。
僕もそれに応答しようとする。が、応答しようとしたその時、悟朗が笑顔になって、
「よう咲」
「おはようー悟朗君」
「今日もいい天気だな」
「今日もいい天気だねー」
「好きな色は?」
「うーん、ピンクかなー」
「奇遇だな、俺もだ」
「えー、すごい偶然ー」
…………。僕を素通りして、悟朗は咲と楽しそうに会話していらっしゃる。
「悟朗」
「ん? ああ、神治いたのか。わりぃ、気がつかなかった」
「いたよ! なんで、僕の影に隠れていた咲に気がついて、僕に気がつかないんだよ!」
「そりゃ、気がつかなかったんだから仕方がないだろ」
仕方がないのか……。
僕は空気を一気に吸い込んだ。ためるためるためる。
それから空気を勢いよく吐き出すように、
「それに、咲と悟朗の会話がテンプレすぎるよッ!」
「結構楽しい会話だったじゃないか」
「どこが!」
「咲の好きな色がピンクだったあたりがな」
「それの何が楽しいのか僕に説明していただけませんかね! できるだけ、簡潔に!」
「簡潔に説明しようっていっても、俺の会話力だと1時間はかかるがいいか?」
「いや、1分で説明してくれ」
「不可能に等しいな。俺と咲の膨大な量の物語だからな」
「物語って……説明どこいったッ!」
悟朗は、時々よく分からない。いや、正確にはいつも意味わからないけれど、もっと分からなくなる時がある。
特に咲との会話。悟朗と咲の会話はものすごく平凡でどうでもいいような会話なのに、悟朗にとってはものすごく楽しい会話らしい。
「しんちゃん!」
咲が頬をハムスターのようにふくらませて、僕を可愛らしい目で睨みつけてくる。正直いって、全然威圧感がない。むしろ、一部の人にとっては『萌』ポイントなところだろう。
「何?」
「悟朗君をいじめちゃダメー!」
「……いじめてるように見えるのか」
これがいじめなら、世の中いじめだらけだ。
「そうだ、神治。俺をいじめちゃいけない」
「おまえは少し黙ってろッ!」
「こら、俺をいじめるな」
「……」
スルースキル発動。
僕は、会話を断ち切って教室へ足を速めた。後ろで、咲が悟朗に手を振ってから、「しんちゃんまってー!」と叫んでくる声が聞こえてくる。たぶん、僕を追いかけてきているんだと思う。
……カルシウムが欲しい。
僕:あー、カルシウムがほしい……
咲:はいどうぞー
僕:ありがとーってこれ魚の骨じゃないかッ
咲:冗談だってばー! こっちが本当に渡したかったものだよー
僕:ありが……おい
咲:ちゃんとしたやつでしょー?
僕:これは、ティラノサウルス・レックスのオスの胸骨じゃないか!
咲:そうなんだー
僕:これどうした……?
咲:拾ったー
僕:そ、そうか
悟朗:カルシウムの話はどこにいったんだよ




