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False;World  作者: 川犬
11/32

〇〇の世界-10

●●●●●


 僕は、眼を覚ました。

 周囲を見渡す。

 漫画に小説に勉強道具にPCにテレビ。それに咲。よかった。僕の部屋だ。

「しんちゃんおはよー」

「おはよう」

 夢から一転して、とってもすがすがしい朝だった。小鳥のさえずりが聞こえてきて、思わずテンションが上がる。

 だから、これから顔を洗って、朝風呂にはいってから、朝食を作って、それを食べ終え、すばらしい一日を送ろうかと思う。

 まあ、その前に。

「なあ、咲」

 咲は、パジャマ姿で、僕の部屋にいるのが当たり前だとでもいうように、違和感なく僕のベッドの前にいた。

「何?」

「今日は僕が厳重にロックしたドアを何分で解除した?」

「2分ぐらいでー」

「……ッ」

「し、しんちゃん?! な、なんで、泣きそうになってるのー?」

「泣きそうになってないやい!」

 僕は昨日よりもさらに時間をかけてロックしたはずなんだ。それなのに、昨日よりも早い時間で解除されるなんて、何これ悲しい。悲しいよ!

 咲はわたわたと慌てふためいている。

「感動して泣いちゃったのー? それなら、私照れちゃうよー」

「その発想はどこから来たッ!」

 僕は涙をぬぐいながら(ガチ)、ベッドから立ち上がった。

「えー? 頭からー?」

「そりゃそうだろうね! 聞いた僕が悪かったですごめんなさい!」

「なんで、私謝られてるのー? ……っは?! これは罠なのっ!?」

「なんのだよ!」

「しんちゃんが、私を、……てごめ? にしようとしているんだねっ! お見通しなんだからー!」

 手ごめの部分だけ、疑問形なところからして、咲は手ごめの意味を知らないで使ったのだと思う。

「……よし、朝食にしようか」

「ふぇー? あ、うん!」

 僕は咲の発言を軽くスルーして、キッチンへと移動した。そうしたほうが、無駄なイベントを起こさないで済む。

 今日の朝食は何にしようか。昨日が手抜きのバターブレッドだったから、今日は昨日の残りの食パンを使って、サンドウィッチでも作ろうかな。

 冷蔵庫を開く。冷気が僕の顔に当たった。ひんやりとしていて、気持ちがいい。

 冷蔵庫の中で、サンドウィッチにはさめそうなものを取り出す。

 それから、取り出したものを確認した。

 ソーセージに卵にレタスにわさび。

 わさび。

 わさび。

 わさび?

 僕は、何で取り出したんだろうと不思議に思いながら、冷蔵庫に戻そうとする。

 が、戻す手を止めた。

 ……いいこと思いついた。

 ひとつだけ、わさびONLYのサンドウィッチを作ろう。これを何も知らない咲がぱくりと食べて……クックックック。

 あ、わさびだけだと、すぐばれちゃうかな。いや、外周をレタスとソーセージと卵でカモフラージュすれば問題ない。

 このときの僕の目は、今世紀一番輝いていたと思う。

 いたずらって楽しいよね。


「咲、できたよー」

 僕は満面の笑みでテーブルの中央にサンドウィッチの乗った大きめのお皿を配置する。思わず、鼻歌まで歌ってしまった。いやはは、お恥ずかしいですな。

「まってたよぉー。あー! サンドウィッチだー!」

 咲が来たかと思いきや、その咲が目をきらきらに輝かせ、サンドウィッチを眺めていた。

 その様子を見て、僕はただにこにこしている。

 よし、何にも悟られていない。

「食べようか」

「うん! しんちゃんいただきまーす!」

「しんちゃんいただきま……じゃなくて、いただきます」

 いつもよりテンションが高いせいか、普通ならつられないようなことに、つられそうになったけど、なんとか僕は耐えた。まだセーフ。

 咲が、「どれにしようかなーどれにしようかなー」なんて、楽しそうにサンドウィッチを選んでいるけど、そこに一つだけ刺激的なサンドウィッチがあるということを忘れてはいけない。

 さあ、地獄のお時間だ。

 一応僕も、適当にサンドウィッチを手にとった。何も食べないわけにはいかないしね。

 大きな口を開いてサンドウィッチをほおばろうとしている咲の様子をじっと見つめながら、僕は、手に取ったサンドウィッチをほおばった。

 咲はどんな表情をするんだろうな。楽しみ。

「辛―――――――ッ!!」

 …………盛大に火を吹いた。

 そう、僕が。そう、僕が。大事なことなので2回言いました。

 おいしそうにサンドウィッチをほおばっている咲は手をピタリと止めて、僕をまんまるにした目で見ている。

 なんで、僕がわさびサンドウィッチを口にしているんだ!? よく分析する必要が――っと、それどころじゃない!

「しんちゃんどーしたのー?」

「水――――――ッ! 水―――――――ッッ!!」

「み、水? 牛乳ならあるのに、水がいいのー?」

「いくない! 牛乳でいいよッ!」

「は、はいどうぞっ!」

 咲が咲自身の牛乳を僕に手渡してきたので、それを受け取り、お酒だったらぶっ倒れてしまうんじゃないかってぐらいの勢いで一気飲みする。

 牛乳はとってもマイルド。

 鼻につーんとくるような辛さが徐々にひいてきた。

「はぁっはぁっはぁっ」

 僕のHPはもう0だ。

 なんで、僕がこんな刺激的なサンドウィッチを食べる羽目になったのだろうと考えてみれば、すぐに結論が出た。

 サンドウィッチをカモフラージュしていたせいで、どれがわさびサンドウィッチなのか判別できない状態だったよね。それで、僕は間違えてわさびサンドウィッチを手に取ってしまった。……自爆したってことか。僕ってなんて馬鹿なんだ……。わさびサンドウィッチに何か僕にだけ分かるようなしるしをつけておくべきだった。

 と。今、手にしている牛乳が入っていたコップが目に入る。

 咲から手渡されたコップ。ちなみに僕のコップじゃない。

 そう、このコップは……、咲のじゃないか!

 僕の顔が、さらにぼんっと赤く染まった。

「ささささ咲」

「なーにー?」

「ここここここのコップに口付けた?」

「2口飲んだかなー」

「……うッ」

 僕の精神的ダメージは限界値を突破した。地獄を見ているのは僕のほうじゃないか。咲と間接キスとかやめてほしい。咲はただの居候なのに。

「咲、今のはなかったことにしたいんだ」

 なかったことにすれば、もともとなかったんだから、まあなかったことになる。って、自分で説明しておきながら、何を言ってるんだろ僕。

 対する咲は、にこりと微笑んで、

「何をなかったことにしたいかよく分からないけど、いいよー」

 それを聞いて僕は、安堵した。

 嗚呼……今だけ咲の笑顔がまぶしいよ……。


僕:もう二度とこんなことはしません

悟朗:どうした、神治

僕:聞かないでくれ……

咲:えっとねー、朝食の時にしんちゃんが苦しそうにして、私の牛乳を飲んだのー

僕:なんか、言い方おかしいよねッ!?

咲:ふぇ? どこがー?

僕:なんで、私の牛乳なんてこ――

ガシッ

悟朗:オイ神治

僕:は、ハイ

悟朗:ユルサナイゾゴルァァァァァ!

僕:え、ええ?!

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