3-20 彼女は、僕の親友たちに相談した
◇
おこめさんと一緒にソファの上でくつろぎながら、僕達は闇鍋にログインした。
金箔のせ: おこめちゃんだーー!ヽ(★´▽`★)ノ
パッタイ: お久しぶりです。
おこめ: ちょっとログインできる時間ができたので
ポテト: ソーダ殿と一緒にログインでござるな!あちちっ!
おこめ:ペアのミニゲーム、カイザーさんから1位を奪おうかなって
金箔のせ: お、がんばれー!٩(ˊᗜˋ*)و
ポテト:天下取りでござるな!
ソーダ: いっくよー!
二人でミニゲームに挑戦する。
何回か頑張った。
「やった! 1位!」
「取れましたね」
金箔のせ:はやっ!二人の息はピッタリだね(≧▽≦)
パッタイ:おめでとうございます
ポテト:おめでとうでござる!
ソーダ: ありがとう!
おこめ: ありがとうございます
「やっぱり、闇鍋は楽しいですね」
おこめさんが、僕の肩にコロンと顎をのせた。
「うん。皆、おこめさんを待ってる!」
「あとちょっとです。来月になれば余裕ができるはずなので」
僕は、おこめさんをギュッと抱きしめた。
「お疲れ様」
そのまま、キスをする。
甘かった。
昼前になってから、ゆっくりと外に出る。
近くのカフェで軽めのランチを食べ、商店街をブラブラした。
肩を寄せ合いながら、恋人つなぎで歩く。
おこめさんがふらっと洋服屋に入った。
「颯太さんが良いと思って選んでくれたものは、買っちゃおうかな、と思ってます」
「う、うん……?」
いいのかな。
店員さんは、なぜか引きつった顔でおこめさんに服を勧めていた。
おこめさんは試着室に消えては、サッと出てくる。
「颯太さん、この青いワンピース、さっきの白いのと、どっちがいいですか?」
「うーん……青かな。でも白も似合ってた!」
「では、青がおすすめですか?」
「おすすめって言われると、うーん……」
「違うんですか?」
「いや、似合ってる。すごく似合ってるんだけど……」
おこめさんが、ちょっとだけ首を傾げた。
おこめさんが着ると、どんな服も素敵だ。
だけど、おこめさんが普段着ているものに比べると、どれも数段、見劣りしてしまう。
自信を持って勧められる服はなかったけど、色々試着するおこめさんは楽しそうだったし、僕もなんだかんだ楽しめた。
やがて暗くなり、おこめさんが帰る時間になった。良い雰囲気のまま、おこめさんを新幹線ホームで見送った。
「行ってらっしゃい」
そう言って抱きしめる。
「行ってきます!」
おこめさんがハグをしてくれる。
今朝、僕の大声に驚いたおこめさんの顔を思い出した。
二度と繰り返すまい。固く心に誓う。
そして、おこめさんの胸元のネックレスが、僕がプレゼントしたい例のネックレスだったらどうか想像した。
悪くなかった。
今日のおこめさんのネックレスに負けてない。
よく似合ってる。
貯まったプレゼント代は8万5千円。
まだ半分もいってない。
◆◆◆
◎
新幹線の席に座った。暗くなった窓の外、流れだした街の光をぼんやりと見る。
デートの終わりは、いつも淋しい。
シートに背をあずけて目を閉じる。
瞼の裏に今朝の颯太さんの顔が浮かぶ。
耳の後ろに、あの大きな声が残っている。
「無理なんかしてない!」
怒鳴られたのは初めてだった。
ショックだったのは確かだ。
でも、怒りより心配の方がずっと大きかった。
分かってる。あれは私への怒りじゃない。
あれは、颯太さんが自分自身に言い聞かせていた言葉だと思う。つまり、颯太さんが想像よりも無理していたということだ。
それだけに胸が痛かった。
颯太さんは、少し細くなってた。
もしかすると趣味だった筋トレも、最近はできていないのかもしれない。
颯太さんのことが心配だ。
自分もシンガポールに戻らないといけないけど、何も対策しないまま、信じて待つのは性に合わない。
昨晩、颯太さんの親友の皆さんと連絡先を交換できた。皆さんなら、心配を共有してくれるかもしれない。
スマホを取り出してグループトークを立てる。
細川彩夏: 昨日は、ありがとうございました。今日のデートでも思ったのですが、颯太さんは最近かなりお疲れのようです。無理してそうで心配です
少し待つと、返信が来た。
藤田大輝: こちらこそ、ありがとうございました。昨日も眠そうだったしね
細川彩夏: はい。私には大丈夫としか言わないんですけど……
藤田翠: わかる。颯太、抱え込むしね
藤田大輝: 昔から自分のことは二の次にしちゃう
宮田遥香: 颯太のご両親やお姉ちゃんとも、ちょっと連絡しとく!
鈴原浩太郎: 前回みたいなことになるとヤバいしな
読んで、胸が温かくなった。颯太さんの周りにも、ちゃんと心配している人がいる。
連絡してよかった。
お礼を言ってからスマホを膝の上に置いて、また窓の外を見た。
街の灯りが、だんだんと少なくなっていく。
暗い田んぼの向こうに山の稜線が夜空に溶けていた。
次に会うのは、プロダクトをリリースして、カンファレンスが終わった後、東京デートだ。
それまで、どうか元気にいてほしい。




