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2-15 観光じゃなくて、僕に会いに来てる

◇ソーダの視点


東京から戻って一週間。

そして、おこめさんがまた新潟に来るまで、あと一週間になった。


親友との飲み会に急いで向かう。

お姉ちゃんの荷運びを手伝わされて遅刻だった。


居酒屋に向かいながら、おこめさんと次はどこへ行こうか考える。

新潟の観光地も、そろそろネタが尽きてきた。


居酒屋に着いた。

中学時代からの親友、大輝と浩太郎はもう出来上がっていた。


「お。颯太、来たな!」


「お前の彼女、こないだ見たぞー」

大輝が僕の肩を抱いてきた。

酒臭い。


「ちょ、大輝。お前、言いふらしてるだろ」

お盆のときも、そのせいで大変だった。


「良いじゃんかよー。デートプランも相談に乗ったろー」


たしかに、大輝達のアドバイスは役に立った。

でも素直にそれを言うのは悔しい。


「はいはい、ありがとうな。でも実際のところ、お姉ちゃんがめちゃくちゃアドバイスしてくれてる」


「でた!颯太の姉ちゃん」


「怖いもんな。お前の姉ちゃん」

僕の家に遊びに来た友達は、皆、お姉ちゃんの洗礼を受けている。



「でさ、今度、おこめさんがまた来る予定なんだけど」


「俺、会ってみたい!」

「俺も!」


「うん。また今度ね」

酔っぱらいのお願いは流すのが基本だ。



それより聞きたいことがあった。


「デートに行くとき、地元ネタが尽きてきて。どうすれば良い?」


「地元ネタにこだわらなくていいんじゃない。映画でも行けば」

大輝が答えてくれた。


「普通に地元の彼女と行くような場所、まだ行ってないんでしょ」


「でもさ、わざわざ来てもらってるのに申し訳なくない?」

「いや別にその子はここに観光に来てるわけじゃないでしょ。颯太とデートしに来てるんだから」


「言われてみれば、確かに」


浩太郎もビールを飲んで言った。

「お互い楽しければ、何でも良いんだよ。家の中だって」


「お前、それでお家デートばっかりしてたら振られたろ」

大輝が突っ込んだ。


「うるせ! 若気の至りってやつだよ。今はそんなヘマしねー」


そっか。映画館とか今まで行ってないな。

おこめさんに聞いてみよう。


「でもほんと、颯太に彼女ができたのは良かったよな」

「ああ。あと心配なのは、遥香か?」


「え!? 遥香どうしたの?」

遥香は幼稚園から高校まで、ずっと僕と同じクラスだった。彼氏について東京に行ったはずだ。結婚間近だと思ってた。


「遥香、彼氏と別れたらしい。来月、こっちに帰ってくるんだって」


「え……、そうなんだ」

心配になる。


「タイミング悪いよな。半年前なら颯太がフリーだったのに」

「いや、まあ、そうなんだけど」


大輝が面白そうに僕の顔を眺めている。

「惜しかったかもな。颯太、遥香と昔から仲良いじゃん」


「うーん、近すぎて逆に踏み込めなかったんだよなー。まあ今はもう、おこめさんしか考えられないけどね」


「惚気ばっかりだもんな」

大輝が笑った。

「まあ、遥香はキープ失敗ってことで」


「言い方!」

浩太郎が吹き出した。


とりあえず僕も笑って、次に話題が流れていく。

僕を本当にキープしてたのか、それは遥香にしか分からない。



いつもの楽しい飲み会だった。

帰り道、コオロギと鈴虫が鳴く道をゆっくり歩いた。たぶん千鳥足になってる。

涼しい風が気持ち良い。


月のない夜空には満天の星が輝いていた。


来週のデートについて歩きながらぼんやりと考える。おこめさんは、どんな映画が好きなんだろう。どこのお店で食べようか。


悲しいことに今月は赤字だ。

つい貯金残高が気になってしまう。


でも映画館の費用くらいなら、大丈夫。


デート代やプレゼント代、そしておこめさんとの旅行代を考えて、来週からスキマバイトを入れることにしている。


仕事終わりに週3回2時間だ。これくらいなら、全然問題ない。アニメを見る時間とかをちょっと減らせば良いだけだ。




月曜日の夜、筋トレを終えてスマホを見ると、おこめさんから連絡が来ていた。


週末のデートの話かな。

少し嬉しくなって、メッセージを開く。


おこめ: ペッパーさんが他星域でトラブルになって、先方のリーダーから苦情が届きました


おこめ: 先方へのお詫びは済ませましたが、ペッパーさんへのフォローをお願いできますか?


デートの話じゃなかった。

でも、こうやって僕を頼ってくれるのは、ちょっと嬉しい。



ペッパーさんは、チーム闇鍋のリクルート隊長だ。熱心に活動してくれるのは助かるけど、裏目に出ることがある。


ソーダ: 了解!任せて

おこめ: いつも頼りにしてます♡

ソーダ: 大丈夫♡ 僕の役目だし



正直、おこめさんとペッパーさんの相性が悪い。


過去のトラブルもあってリーダーのおこめさんが外交を担い、サブリーダーの僕が内紛を丸くおさめるという役割分担が自然にできていた。



ペッパーさんへのチャットは急がない。


感情がパンクしているとき、話しかけるのが早すぎると、こちらの言葉が思わぬ方向に刺さっちゃうことがある。


少し時間が経ってから、個別チャットで話しかける。



ソーダ: こんばんは!今夜の様子がいつもと違う気がして。大丈夫ですか


ペッパー: ごめんなさい。今日、他の星域の同盟と喧嘩しちゃって……


送られてきた長文によると、勧誘先から弱小同盟だと馬鹿にされて言い返し、お互いエスカレートしたらしい。


画面越しでも、怒りと申し訳なさでペッパーさんの心がパンクしかけているのが分かった。



ソーダ: なるほど。相手が先に失礼なこと言ってきたんですね


ペッパー: そう!なのに向こうがリーダーに苦情入れてきて、意味が分からない

ソーダ: それは腹立ちますよね


しばらく、ペッパーさんのペースで会話を続けた。


頃合いをみて、聞いてみる。


ソーダ: もし次に同じようなことがあったら、どう言い返すのが一番ペッパーさんらしいと思います?

ペッパー: 確かに、大人の対応でサッと引くほうが、向こうも拍子抜けするかも


ソーダ: それ、良いですね!

ペッパー: ……そっか。リーダーに謝る。ありがとう、ソーダさん


ソーダ: いえいえ。お疲れ様でした。ゆっくり休んでくださいね



おこめさんに結果を報告すると、すぐに返信が来た。


おこめ: さっき、私にもペッパーさんから謝罪と「次は一言、冷静に言ってみます」というメッセージが届きました!ありがとうございます♡


おこめ: やっぱりソーダさんはコーチングの才能がありますね

ソーダ: ちょっと聞いて一緒に考えただけだよ

おこめ: またそういうことを言う。自信を持ってください!


おこめさんは、リアルで会う前から、この点は良く褒めてくれていた。

僕には普通のことにしか思えなくて、こそばゆい。おこめさんには、何が見えてるんだろう。


ソーダ: 大したことないって。それよりも今週末、台風来るかもしれないけど、大丈夫?


おこめ: なんとかします!台風が逸れてくれれば良いんですけど

ソーダ: 本当にね。僕は、そろそろ寝るよ。おやすみなさい♡

おこめ: おやすみなさーい♡



外では、秋の虫たちがリリリ、コロコロ、と静かに合唱していた。


今週末は、東京を台風が直撃するみたいで心配だった。

今回のデートがスキップになっても仕方ないと思う。

もちろん、おこめさんに会いたい。

だけど安全第一だ。無理してほしくなかった。


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