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1-10 僕は、相棒に告白することにした

◇ソーダの視点


今日は梅雨晴れで、朝から暑かった。


熱は下がったけど、工場の決まりで今日も休みだ。明日から復帰する。


おこめさんに「東京に行く」と言ったら、すごく喜んでくれた。日程も再来週の週末に決まった。


せっかくの東京デートだ。

できるだけ、おこめさんに楽しんでほしい。

そして、おこめさんに告白したい。


でも困ったことに、東京のことが分からない。


朝からずっと、東京について調べていた。


ネットで検索しても候補が多すぎるし、AIが作ったデートプランをそのまま使うのも違う気がする。


「東京、全然わかんないよ……」

思わず独り言が漏れた。


ランチタイムにお姉ちゃんが実家に顔を出した。


「あんた、また悩みこんで何してんの」

「東京デートで、どこ行けばいいか、わかんなくて」


お姉ちゃんが『こいつバカ?』という顔になった。

「なんでその子に聞かないの。向こうは地元なんでしょ」


「え……それ、アリ?」

「なんで無しなの。デートのプランを一緒に考えるの楽しいじゃん」


お姉ちゃんは、それだけ言って家を出て行った。

言われてみればそうだ。なんでそれを思いつかなかったんだろう。


今度のおこめさんとのビデオ通話が、もっと楽しみになった。




待ちに待った日曜日の夜9時。

時間ピッタリに僕からかける。おこめさんは、呼出音が鳴る前にとってくれた。


今日のおこめさんは、艶やかなペールブルーのボートネックに、青いストーンのイヤリングだった。


シンプルなだけに、凛とした顔立ちと肩からの綺麗なラインがいっそう映えている。


「こんばんは。ソーダさん、体調はいかがですか?」

「すっかり良くなった。心配かけてごめん」


「大丈夫です! 元気になってくれて嬉しいです」

おこめさんは本当に嬉しそうで、僕も嬉しくなる。



今日の本題は来週末の東京デートだ。

「僕、東京は修学旅行で1回行っただけで。博物館と浅草しか行ってないんだよね」


「でしたら、ソーダさんがまだ行けていない、東京らしいところに行きましょうよ。東京タワーは行きました?」


「行ったことない! ずっと行きたかったんだよね」


おこめさんが微笑んで頷いた。

「行きましょう! まずは、東京タワー。他に、どこか気になるところはありますか?」


「ネズミーランドは、どう?」

「うーん、高校の夏休みに、レイクのほうへ女友達と行ったんですけど、かなり暑くて……。屋内で過ごせる場所のほうがオススメですね」


「そっかー。だったら魔法使いの城は? 魔法使いの学校シリーズは、おこめさんも好きでしょ?」

「良いですね!」

おこめさんもワクワクした顔だ。


「私もまだ行ったことなくて、初めて同士ですね!」

初めて同士。おこめさんはそんなつもりないだろうけど、なんか照れる。


「じゃあ、東京タワーとかお台場は、おこめ教授に案内してもらおうかな」

「ふふ。東京なら、多少は任せてください」


「おお、頼もしい!」

「ただし、魔法使いの城は専門外です」

「そこは教授じゃないんだ」

「はい。二人とも新入生です!」


思わず笑った。


「じゃあ日曜日は、新入生二人で行こう」

「はい!」


そんな調子で話しているうちに、デートプランがどんどん決まっていく。


土曜は東京タワーとお台場、夜はおこめさんの友達も一緒に銀座でご飯。

日曜は、二人とも初めての魔法使いの城。


気がつけば、いつもの1時間があっという間に過ぎていた。

費用は……、しょうがない。告白費用だ。



ほとんどプランは決まった。でも、大事なことがまだ1個、残っている。


どう告白するかだ。




おこめさんとの定例が終わった後、同盟のグループチャットを開いた。

おこめさんは抜きで、信頼できるメンバーだけを招待した特別グループだ。


ソーダ: 相談! 実は、おこめさんと東京で3回目のデートするんだけど……


金箔のせ: きたきたきたーー!!ついに!!


ポテト: 意外でござる。二人でオフ会を2回もしてたとは!

クラッカー: 嘘だろ!?おこめは自分のリアルは絶対秘密なのに?

ペッパー: ソーダさんとリーダー、仲良しですもんね……


ソーダ: で、告白したいんだけど、どうしたら良いか悩んでて……


クラッカー: 俺、東京に詳しくないからパス。頑張れ☆

金箔のせ: はやっ!!


ポテト: クラッカー殿、薄情でござる!

クラッカー: いや、本当に詳しくないから。下手なこと言えないだろ


ポテト: では拙者が!ソーダ殿、デートプラン、どこまで決まってるでござる?

ソーダ: ほとんど決まってるー


僕はプランを説明した。2日目は魔法使いの城に行く予定だ。どこで告白するかは、まだイメージできてない。


ポテト: ソーダ殿!!それは、本気で言ってるでござるか?

ソーダ: え。どういうこと?何かまずかった?


ポテト: 逆でござる!大正解でござる!

ポテト: 魔法使いの城には、3年前にオープンした星の廊下というロマンチックな場所がござる。


僕は知らなかった。


ポテト: 東京では鉄板中の鉄板の告白スポット!リーダーは、絶対に期待しておりますぞ!!


ぱっと調べたら、確かにすごく良さそう。


ソーダ: わかった!星の廊下にする!

ソーダ: 告白の言葉は、どうしよう?気の利いた言葉が思いつかなくて。

クラッカー: 「愛してるぜベイベー」


金箔のせ: ちがーう!

ソーダ: ふざけないでよー!


クラッカー: じゃあ「月が綺麗ですね」

ポテト: それは夏目漱石でございますぞ!!


金箔のせ: 違う違う!告白はね、ロマンチックな場所で、相手の手を取って、目を見つめて「ずっと君だけを見てた」って言うの!キャー素敵(灬♥ω♥灬)


クラッカー: ドラマかよwそんなん言われたら俺なら引くわ

金箔のせ: えー!?女子はみんな憧れてるもん!


ポテト: 人によるでござるな

金箔のせ: なんでよ〜(´;ω;`)


クラッカー: ソーダ、無視していいぞ。素直に好きですって言えば十分だろ

ソーダ: 最初からそれ言ってよ!


金箔のせ: ま、応援してるよーー!!

ポテト: ご武運を!!!


ソーダ: 皆、ありがとう!頑張る!



僕はスマホを置いた。

直球で。僕らしく。


おこめさんが好きです、付き合ってください。

それだけだ。


そして、お付き合いするなら、無責任なのはだめだ。

おこめさんを幸せにしなきゃ。



正直、断られるのは怖い。

幸せにする自信はない。


だけどハードボイルドな紅の猫が頭に浮かぶ。

『俺は、行く。お前はどうだ』


不安でも、覚悟を決めないといけない。


窓の外で夜空が静かに広がっていた。

そろそろ梅雨が明けて夏になる。


次のデートで、僕はおこめさんに告白する。


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