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この夏がずっと続けばいいのに。  作者: すくねる


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9/10

夏の終わりは




8月22日


「ベータテストも31日で終わりか〜」

「ずっとここに居たいよな....」


オゼは夜に蒼風の街を一人歩いていた。何をするわけでもなく、ただ、ぼんやりとこれまであった事、人、情景などを思い出しながら。


ポツンポツンと付いている家の明かりが、今日は寂しく思えた。


小さなベンチに座り、ヌーンに貰ったタバコを吸う。煙が静かに手から離れ、空中に消えていく。


「私の大事な物って、消えていくんだよなぁ....」


この日、ステラ運営から解決困難な問題が発生したため、ゲームの開発を中止する旨のアナウンスがされていた。プレイヤーからは失望や怒り、嘆きの声が世界中から寄せられ、一大ニュースになった。


オゼは露店でビールを一本買い、近くでヤケ酒している人たちの側で、ぎこちなく剣でビールの王冠を開けた。


「俺はなー。ヒクッ、ここに永住するつもりだったんだ」

「オイラもさ。現実なんてクソだからな」


オゼはビールを飲みながらスクショを見返した。

「素敵な笑顔....楽しかったな〜」

ビールを一気に飲み干した。


ポツポツと小雨が降ってきた。小雨は次第に大粒の雨になり、雷も鳴り出した。雨は服から染み込み、ゆっくり体温を奪っていく。鼓膜に伝う雷の衝撃に怒りを感じる。


「コーヒー飲みたいな」


オゼはカフェに入った。

カフェの中の客はまばらで、みんな、どこか浮かない顔をしていた。


「お客様、砂糖は入れますか?」

「ブラックで」


大きな窓の側でゆっくりコーヒーを飲む。

そう言えば、今日は何も食べていないことを思い出した。オゼは角砂糖を齧ってみた。


「クルスさん、まだお店続けてるかな....」


ゆっくり視線をカウンターの奥にあるスノードームに向ける。スノードームの中の雪が、まるで流星のように思えた。


「サンクさん優しかったな」


オゼは、窓に映った寂しげな自分の顔を見て、目に薄っすら涙が滲む。


「なんで....いつもこうなるの」



数時間、時間を忘れて店で物思いにふけっていると、雷雨は止んだ。店を出ると朝焼けが眩しかった。オゼはフラフラと歩き出した。



夕はログアウトした。

ベッドに座り、いつも以上に静かに感じる真夜中に、怒りと焦燥感を感じる。

机の上のおにぎりが固くなっている。


「この夏がずっと続けばいいのに....」



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