霊魂
8月13日
「ウチはね、どんな人でも、たとえ何の関係のない人でも、死んじゃったら寂しいよ」
森の奥深くで、ポキポキッと枝を折る音が聞こえる。辺りには朝靄が立ち込めており、立ち並んでいる木々は遠く人を寄せつけない、神聖なオーラを放っている。
「ではでは、オゼさん。神樹にお礼をして」
オゼは手を合わせお礼をした。
「あの霊魂、成仏できるといいねー」
「きっとできますよ」
オゼは深呼吸しながら言った。
二人はアイテム、神樹の枝を手に抱えながら森を出た。
このゲームでは、死んだ魔物が時々、霊魂になる。でも特に成仏させようが、放っていようが何も起きないので、皆お構いなしだ。
森を出ると二人は、少し離れた竜の巣へ向かった。
「この前のレイド凄かったみたいやねー」
お尻に生えた尻尾をクルクル回しながら言う。
「私は参加はしてないのですが、空が紅く染まる程、激しいものでした」
オゼはバックから取り出したサンドウィッチを分けて差し出す。
「ファンシーさんは見なかったんですか?」
「ウチはそういうの興味ないねん」
ファンシーはサンドウィッチを頬張っている。
「混沌のドレイクが可哀想やわ。あんなレベル高い奴らが寄ってたかって....」
オゼは物憂げな表情で
「はい。最後は悲痛の唸り声を上げていて、見ていられませんでした」
二人は竜の巣へ着いた。
周りの岩場には大量の血しぶきが付いていて、ドレイクが倒れた今でも、禍々しいオーラを放っている。その中心に霊魂はあった。
「これが、混沌のドレイクの霊魂....」
霊魂は紅く、まるでお化けの様にゆらゆらと漂っていた。
「なんか、寂しいもんやな」
ファンシーは岩場に腰をかける。
「今まで街や集落を襲っては、みんなに憎まれとったのに」
「死とは....こんなものなんですかね」
オゼは遠くを見つめながら言った。
「そうやなー。死んで悲しむ者もいれば、喜ぶ者もいるわな」
オゼは透き通る様な蒼い空を見上げる。
「でもな、ウチはどんな人でも、たとえ何の関係のない人でも、死んじゃったら寂しいよ」
二人は神樹の枝を天に掲げると、霊魂はほのかに光を放ちながら、空に舞い上がり消えていった。
その後二人は、しばらく空を見上げていた。
ファンシーの蒼い瞳に薄っすら涙が滲んでいた。
夕はログアウトした。
辺りはもう、黄昏時になっていた。
下の階から、お線香の匂いがする。
「今年もお盆か....」




