表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/10

霊魂




8月13日


「ウチはね、どんな人でも、たとえ何の関係のない人でも、死んじゃったら寂しいよ」



森の奥深くで、ポキポキッと枝を折る音が聞こえる。辺りには朝靄が立ち込めており、立ち並んでいる木々は遠く人を寄せつけない、神聖なオーラを放っている。


「ではでは、オゼさん。神樹にお礼をして」

オゼは手を合わせお礼をした。

「あの霊魂、成仏できるといいねー」

「きっとできますよ」

オゼは深呼吸しながら言った。

二人はアイテム、神樹の枝を手に抱えながら森を出た。


このゲームでは、死んだ魔物が時々、霊魂になる。でも特に成仏させようが、放っていようが何も起きないので、皆お構いなしだ。


森を出ると二人は、少し離れた竜の巣へ向かった。

「この前のレイド凄かったみたいやねー」

お尻に生えた尻尾をクルクル回しながら言う。

「私は参加はしてないのですが、空が紅く染まる程、激しいものでした」

オゼはバックから取り出したサンドウィッチを分けて差し出す。

「ファンシーさんは見なかったんですか?」

「ウチはそういうの興味ないねん」

ファンシーはサンドウィッチを頬張っている。

「混沌のドレイクが可哀想やわ。あんなレベル高い奴らが寄ってたかって....」

オゼは物憂げな表情で

「はい。最後は悲痛の唸り声を上げていて、見ていられませんでした」



二人は竜の巣へ着いた。

周りの岩場には大量の血しぶきが付いていて、ドレイクが倒れた今でも、禍々しいオーラを放っている。その中心に霊魂はあった。


「これが、混沌のドレイクの霊魂....」

霊魂は紅く、まるでお化けの様にゆらゆらと漂っていた。

「なんか、寂しいもんやな」

ファンシーは岩場に腰をかける。

「今まで街や集落を襲っては、みんなに憎まれとったのに」

「死とは....こんなものなんですかね」

オゼは遠くを見つめながら言った。

「そうやなー。死んで悲しむ者もいれば、喜ぶ者もいるわな」

オゼは透き通る様な蒼い空を見上げる。

「でもな、ウチはどんな人でも、たとえ何の関係のない人でも、死んじゃったら寂しいよ」


二人は神樹の枝を天に掲げると、霊魂はほのかに光を放ちながら、空に舞い上がり消えていった。


その後二人は、しばらく空を見上げていた。

ファンシーの蒼い瞳に薄っすら涙が滲んでいた。




夕はログアウトした。

辺りはもう、黄昏時になっていた。

下の階から、お線香の匂いがする。


「今年もお盆か....」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ