凪
8月7日
カタコトカタコト
馬車に揺られ、オゼは海にやって来た。
天気は快晴で、まさに海日和だ。
釣竿を持ちながら、砂浜を駆け出す。サンダルに砂が入り込み少し痒い。海風が磯の香りを運び、海面は太陽に照らされキラキラと輝いている。
オゼは流木の上にちょこんと座り、釣竿を垂らした。
「ふわ〜」
連日の長時間のゲームプレイで少しお疲れの様だ。波が揺れ、海鳥たちが鳴き、足元に来る小さな波の冷たさで我に返る。
「眠いけどログアウトしたくない....」
オゼが目を擦っていると、麦わら帽子を被ったおじさんのプレイヤーが近づいてきた。
「嬢ちゃん、こんな浅瀬じゃ釣れないよ」
オゼはハッと目を開ける
「....魚は待ってないです」
おじさんは首に巻かれたタオルで汗を拭きながら
「何を待ってるんだい?」
「凪....」
おじさんも流木の上に座った。
「なら、夕方まで待たないとな」
オゼは首をビクンとさせ、少し驚く
「そうなんですか?....私何も知らなくて....」
「これはゲームじゃが、必ずは来ない。そういうもんじゃよ、ステラも人生も」
オゼは、少しいじけながら
「そういうもん、ですかね〜」
「うむ!」
オゼは遠く見つめ眺めながら
「私は凪が好きなんです。修学旅行で海に行った時、その頃、色々あったけど凪を見ていたら、すごく落ち着いて。少し救われたんです」
おじさんは手に持っていた麦茶を飲み干すと
「....わしも同じじゃ」
遠くで大きな波がバシャンと音を立てて跳ねた。
時間が経ち、海は夕陽で紅く染まった。
オゼはワクワクしながら凪を待ったが、来ることは無かった。それどころか、風が強まり荒れてきてしまった。
だが、オゼは海を見つめ続けた。
何時間も。
荒れた海が、自分の甘さを諭してくれている気がして。
そして、夕はログアウトした。
直ぐ様、ベッドにダイブした。
今日はまだ昼間だが、眠るようだ。
「....荒れた海もよかったな」




