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戦友と指輪




8月4日



オゼはあるクエストの目的地に行く為、街外れの森を歩いていた。辺りは昼間なのに薄暗く、木々が擦れる音が魔物の唸り声の様に聞こえた。


「....ちょっと怖い」

貯めたゴールドで装備をワンランク上に更新して準備万端で来たが、やはり心細い。


「キャ!」

茂みからウサギが飛び出して来た。

オゼは槍を地面に刺し、安堵する。だが、安堵したのも束の間、何かがこちらに走って来る音が聞こえた。しかも、複数体。


「ワオーン」

オゼは魔物に取り囲まれた。赤い毛並みの狼、凶暴なレッドウルフだ。


「うそ!なんで?....切れてる」

強力な魔物に出くわさない為のアイテム、神聖水の効果が切れていたみたいだ。


よだれを垂らし、今にも襲いかかって来そうなレッドウルフたち。オゼは凍りつき、死を覚悟した。


その瞬間、黄色い閃光の様な斬撃がレッドウルフたちを真っ二つに引き裂いた。


「....大丈夫か?」

オゼが目を開けて後ろを振り返るとそこには、大きな両手剣を持った大男のプレイヤーが立っていた。


「ありがとうございます....」

「ここは危ねぇ。レベル上げてから来な」

大男はタバコを吸うと

「その様子だと、朽ち果てた女神像に行くのか?」

オゼは、はにかみながら。

「....どうしても、行きたくて」


大男は額の大きな刀傷を摩りながら、力強い声で

「俺が連れて行ってやる....朽ち果てた女神像はこの森を抜けた先だ」

そう言うとオゼにタバコを一本投げた。

「吸え。落ち着くぞ」

オゼがクスッと笑い

「未成年なんで」

「これはゲームだ!」

二人はゆっくり歩き出した。

「私はオゼです。よろしくお願いします」

「ヌーンだ。よろしくな」



二人は暫く無言で歩いていた。

道中現れたゴブリンや小型のドラゴンといった魔物たちは全部ヌーンが一瞬で倒した。森は午後になり、次第に暗さを増していった。だが、もう怖さは無くなっていた。二人は大きな岩の前で休憩することにした。


オゼはヌーンにサンドウィッチと水を差し出した。ヌーンは黙々とそれを食べながら

「なあ、なんでそんなに弱いんだ?みんな、この森を一人で抜けることが出来るくらいには強いぞ」

オゼは目を細めながら

「....強さとか、攻略とかあまり興味が無くて」

「何故だ?」

オゼは岩に寝転ぶと

「リアルで戦い過ぎちゃって....」

ヌーンは物憂げな表情で下を向く

「....そうか」


二人はサンドウィッチを綺麗に食べ終えた。

「ヌーンさんはどうして強くなりたいのですか?」

ヌーンはタバコに火を着けた。

「....リアルじゃ、自分でタバコも吸えないくらい弱いからな。ゲームの中くらい強くなりたい....いや、強く在りたい」



二人は森を抜け、朽ち果てた女神像の前まで辿り着いた。辺りは既に暗くなっていて、川のせせらぎだけが聞こえる。


オゼは女神像に花束を捧げて、お祈りをした。

すると、朽ち果てた女神像は眩い光を放ち、本来の綺麗な女神像に戻った。女神像の台の上には、見た目普通の青い指輪が二個、報酬として現れた。


「それが....欲しかったのか?それはただの指輪だぞ....なんの効果も無い」

オゼはにこりと笑う

「これが欲しかったのです。....これがいいんです」

「....そうか」

オゼは遠くを見つめながら、指輪をはめた。

「これ、もらってください....」

もう一個の指輪をヌーンに渡した。

「恋人って言う訳じゃないですよ。....戦友として、もらって欲しくて」

「....ありがとう」

ヌーンの瞳から涙がこぼれ落ちた。だが暗くてよく分からない。




夕はログアウトした。

早朝にログインしたが、もう夜になっていた。

夜空には星が瞬いている。夕は星を眺めながら


「....強く....か....」


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