雷雨の街
7月27日
オゼは蒼風の街から東へ遠く離れた街に来ていた。
ここは、雷雨の街。
その名の通り、昼も夜も関係なく、一年中雷雨が起きている。
「....雨の音いい。雷の音すごくいい」
オゼはクエストで入手したレインコートを着て、街を散策してはスクショを撮っていた。
だが、やがて雷雨が耐えられない程強まり、大きな窓のあるカフェに入った。
入ると、コーヒー豆を挽いた香ばしい良い匂いがして、オゼはとても心が落ち着いた。
窓の前のテーブルに腰を下ろし、コーヒーを注文した。
「お客さん、砂糖は要りますか?」
「ブラックで」
暫くすると、コーヒーが運ばれて来た。
オゼは外を眺めながらコーヒーをゆっくり味わった。
「あなたもこの街、好きなの?」
隣を見ると店員さんが座っていた。
「は、はい。え?」
「プレイヤー表示隠してるけど、私もプレイヤー。クルスです」
小人族の可愛らしい格好をしている。
「私はオゼです。この街....というか雷と雨が好きなんです」
クルスは角砂糖をペロペロ舐めながら
「へぇ〜。私と同じだ。でもなんで?」
オゼは落ち着いた表情で話す
「雨は世界中の罪を洗い流してくれている様な気がして。雷は私の怒りや本音を代弁してくれている気がして」
クルスは角砂糖をガリガリと頬張ると
「わかる〜。だから私もここが好きなの。そんで誰も来ないのに店を構えたってわけ」
その後、二人はオゼとクルスだけの女子会を楽しんだ。
朝になりオゼは、帰るため女神像のワープポイントに来た。
すると、クルスがレインコートを着てこちらに走って来た。
「すっ、スクショ撮ろ。ここじゃなんだから、この街の御神体である、雷樹に行こう」
二人は雷雨の中、トボトボと歩いて雷樹に向かった。
「おっ大きいですね....」
オゼが雷樹を見上げた。
「千年生きてるらしいよ」
太い幹からなる雷樹は、とても強い生命力と威圧感を感じた。
オゼは遠くを見つめながら
「千年....この雷雨に耐えて来たのか....いや....」
二人は雷樹の前でスクショを撮った。
「また、来てね」
クルスが小さな手を振る。
オゼは優しい声で
「また来させてもらいます。何度も。ね!」
蒼風の街に戻り、ログアウトした。
カーテンを開けると外は夏の暑い太陽が照り付けていた。
「やっぱり、雷雨好き」




