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宇宙戦争 ―遠い朝に蘇る―  作者: 鈴田在可


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2/6

2 戦

 ――暗い。


 最新人型戦闘兵器に乗り母艦から宇宙空間に射出されたヘルストは、直後、自分がどこにいるのか、上も下も、右も左もわからない感覚に陥った。しかしそれは一瞬であり、頭上に青い地球があるのを視認したのちに輝く太陽の位置を把握したことで、嫌な感覚から遠ざかった。


 ヘルストの近くには先に射出された濃いピンク色の機体があった。ユノが乗る機体だ。


 ドックでの初見の際、落ち着いた印象のユノにはあまり似合わない色だと思ったら、すぐそばにいた彼女に「妹の趣味です」と言われた。ユノには4歳下のメカニック志望の妹がいるという。


『教授、乗り心地はいかがですか?』


 通信でユノが話しかけてくる。


「悪くないよ。俺が乗ってた時より快適なくらいだ」


 90年前よりも操作盤の位置などは多少変わっているが、問題ない範囲だ。戦場に着くまでには慣れるだろう。


 位置情報を示すディスプレイには、すぐそばのユノの機影の他に、目標地付近で敵味方含めた無数の機影がひしめき合う様子が投影されている。戦闘の激烈な光はヘルストがいる位置からでも視認できた。


「急ごう」


『はい』


 ヘルストはユノを促し移動を開始した。ヘルストのいた時代よりも進化したエンジン出力により、戦闘区域まではあっという間だった。









 ユノがヘルストと戦場に到着してすぐ、近くで戦っていた地球軍の一機が、剣を模した光り輝く武器――サーベル――に胴体の中心部を突かれ、おまけに頭部にミサイルを撃ち込まれて爆発した。


 勢いに乗る敵機は、接近するユノたちに気づきミサイルの乱れ撃ちをしてきた。二つの機体はミサイルをかわし、ユノは戦闘に備えてサーベルを取り出し光を宿らせたが、彼女が何かするよりも早く、ヘルストが襲い来る敵機をサーベルで真っ二つに切断していた。


 切断面から閃光が走って機体が無音のまま爆発する。盾を出して衝撃をかわしたユノは、爆発の煙が晴れた先で、見たことがないような速さで次々と敵を屠るヘルストの機体を見た。


「教授!」


 通信で呼びかけるもヘルストからの返答はない。


 戦闘を引っ掻き回し始めたヘルストの脅威に敵陣営が気づき、それぞれが彼の機体にミサイルを放つ。しかしヘルストは盾とサーベルですべてを弾き、防御しながら信じられない速さで移動して、一体一体を確実に仕留めていく。


「教授……」


 敵機が爆発していく光と煙で肉眼ではどうなっているのかよく見えないが、位置情報を示すディスプレイでは、ヘルストの近くにいる敵機の機影が次々と消失していた。


 殺戮は、それほど長くは続かなかった。


 戦況の不利を悟った敵機が撤退を始める。するとユノと同じく状況を見守ることしかできなかった味方の機体が動き、逃げ出そうとする敵機の進路を阻む。


 抗戦しようとした敵機もいたが、すぐさま移動してきたヘルストに数秒で爆散させられた。その様子を見た敵軍は、ほぼ全員が投降し捕縛された。それでも逃げようとした敵機は、ヘルストにより宇宙の藻屑にされていた。


 ただ数機だけが、『全滅したくなければ侵略をやめろ』と告げられた上で、母星にメッセージを伝えるために逃された。

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