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03ちびっ子探偵 隅田川コロン登場っ!

「となると私としては八方塞りお手上げです。よろず課としてはこゆうケースは前にも扱った事はありますか?」

「あるにはあるが思い出したくもないよ。なんせそれらは我々もお手上げと降参した事件ばかりだからな。でもまぁ、そんな事件は結構ある。なんせ我々よろず課が扱った事件の検挙率は88%でしかない。残りの2%は迷宮入りだ。」


「えっ、数字が合わないんですけど?」

よろず課員の言葉に含まれた数字を暗算して合計値が合わない事を事故調査委員が指摘する。

だが、その事はよろず課員のプライドを甚く逆撫でる事だったらしい。


「我々が解決できなかった12%の内、10%は被害者の近親者が別の組織に依頼して解決させている。ちっ、忌々しいちびっ子探偵めっ!」


「ちびっ子探偵?ああっ、もしかして『隅田川コロン』の事ですか?」

「そうだ、あいつは我々の天敵だよ。なんせあいつは『過去見魔法』が使えるからな。」


「らしいですね。でも残りの2%は隅田川コロンでも解決できなかったんでしょ?」

「いや、そうじゃない。2%は隅田川コロンが敢えて犯人を明かさなかったんだ。」


「えっ、何故?」

「やつの口からは説明されていないが、多分やつ的にはその事件では加害者よりも被害者の方が悪いやつだったんだろう。つまり残りの2%の被害者はやつ的には殺されて当然な人物だったって事だ。実際我々の調査でもそいつらはそろいも揃ってロクデナシだったしな。」


「あらら、それはまぁ、心情的には理解できますが、我々のような公正をモットーとしている者たちからしたら許されない事ですよね。」

「だな。だがやつは公僕ではない。だからそれを咎める事はできん。いや、こじつければ犯人隠匿を問えるかも知れないが、仮にそれで口を割らせて犯人を捕まえても、多分世間からは我々が弱い者イジメをしたと捉えられてバッシングされかねない。全く忌々しいやつだ。」


「法ではなく、情けを重んじるって事ですか・・。ははは、ドラマとかだったら弱者のヒーローってとこですけどね。でも確かに我々のような捜査機関からしたら面目は潰されるは、犯人は横からかっさわれるはで、泣きっ面にハチもいいとこですなぁ。」

「そうだ、なので今回はなんとしてもあいつが出しゃばってくる前に事件を解決しなければならないっ!」


「う~んっ、私としてはとっとと『過去見魔法』で解決して貰いたいという気持ちも無きにしも非ずですが、あまり簡単に解決されても私たちの存在意義が揺るぎそうです。」

「そうなんだよ、あいつは探偵と名乗ってはいるが推理なんかしないんだ。そこが気に入らんっ!」


「推理モノの小説でも証拠の後出しは忌み嫌われていますからねぇ。そうゆう意味では『過去見魔法』は究極の違反ですよね。」

「まっ、推理モノの物語は過程と推理を楽しむものだからな。でもリアルな世界ではあいつの能力は捜査する側にとっては喉から手が出るほど魅力的だったりする。そこは認めるんだが、やっぱりなぁ。俺たちが地道に情報を集めて犯人を捜している横で、あいつが「てくにか、てばにく、どろんぱぁ~っ!」と過去見魔法を発動させて「整いました、真実はひとつっ!翌日は日曜日っ!」とか言われたら、カチンとくるよなぁ。」


「なんかすごい決め台詞ですね・・。と言うか、隅田川コロンって毎週土曜日にしか働かないんですか?」

「いや、そんな事は無いはずだがまぁ、言われて見れば今まであいつが事件を解決した日って土曜日だった気がする。」


さて、世間には『噂をすればなんとやら』という言い回しがあるが、今回もふたりが件の人物の名を連呼した為なのか、はたまた偶然か、ふたりが話をしていた部屋にひとりの少女がテレポーテーションしてきていきなり自己紹介を始めた。


「はぁ~いっ!呼ばれて飛び出てじゃ~じゃ~め~んっ!どんな事件も魔法で解決。見た目は美少女、頭脳はそれなり、その名は迷探偵、隅田川コロン!只今参上っ!」

「・・。」

両手を高々と掲げて決めポーズをとる少女に対して、事故調査委員とよろず課員は無言であった。だが傍からは無言に見えたが、ふたりの脳内ではテレパシーでの会話がなされていたのだ。所謂『心の声』と言うやつである。


<よろず課員、こいつウザくないですか?>

<だよな、折角ここまで俺たちふたりだけでやってきたのにいきなり乱入だもんな。空気読めてないよ。>


<そもそもこいつ、自己紹介で名前を発表しやがりましたよ。私たちだって肩書きでしか呼び合っていないのに、後から名前付きで出てくるなんて優遇され過ぎでしょう。もしかしてこいつ、主人公なんですか?>

<まぁ、一応推理モノの主人公は探偵と相場が決まっているからなぁ。でも前にも言ったが、こいつは事件の犯人は言い当てるけど推理はしないんだから探偵ではないよな。>


<ですよねぇ、『過去見魔法』はいわば時間移動なんだからジャンルはSFですよね。もしくは『魔法』と言っているのだからギリ異世界ファンタジー系。>

<SFは今や斜陽だからな。本来ならば時間移動はSF的には『タイムスリップ』と言うべきなんだが、それだと一般の方々が理解しないから漢字表記にしているくらいだし。>


<タイムスリップ・・、直訳すると滑った時間。あー、確かに今時の子たちには判らない表現かも知れません。だとしたら俺たちのこの会話をテレパシーと言うのも駄目ですかね?えーと、漢字表記だとなんて書くんでしたっけ?>

<あーっ、確か『念話』だった気がする。>


<念話・・、なんかいきなり昭和30年代の海外SF作品の和訳みたいになりましたね。>

<あの頃はまだ英語が浸透していなかったからなぁ。大人向けはかっこいいという事で、そのままカタカナ表記にしていたらしいけど、子供向けのSFは日本語に言い換えていたんだよな。>


<そうなんですか。でも今だと逆に念話って言葉の方が意味が通じない気がします。>

<だよなぁ、世の中カタガナ表記が溢れているからなぁ。>


<でも探偵の英語表記である『detective ディテクティブ』は普及していませんよね?何ででしょう?>

<リアルでは探偵と言う職業自体がマイナーなものだからな。小説家も英語表現では『ノベリスト』だが、やはり職業としてはマイナーな職種なので使われていないんだと思う。>


<私の肩書きである『事故調査委員』も英語だと『accident investigation member アクシデント・インヴェスティゲーション メンバー』ですからね。>

<長過ぎるよな。でも俺の『convenience agency member コンビニエンス・エイジェンシー メンバー』も別の意味に取られそうだから使いづらい。>


<コンビニって『よろず』って意味だったんだ・・。>

<もしくは『便利』とか『好都合』って意味らしい。つまり『何でも屋』だな。>


<あっ、そろそろお喋りを止めてリアルに戻らないと、私たちに無視された形になっているちびっ子探偵が泣き出しそうです。>

<ちっ、面倒だが相手をしてやるか。うん、ここはとっとと事件を終わらせて飲みにいくとしよう。俺の行きつけの店を紹介するよ。勿論俺のおごりだ。>


<あざっすっ!>

1千200文字近くも使い脳内通話で現実逃避の無駄話をしていたふたりは、漸く諦めてちびっ子探偵、隅田川コロンの相手をする事にしたようである。

その間、じっと決めポーズで突っ込みを待っていたちびっ子探偵はハブられたのではないかと涙目だったのだが、よろず課員が声を掛けた途端復活した。


「あーっ、時間が勿体無いので挨拶と前置きは抜きにして本題に入るが、お前は今回の事件の犯人と犯行方法を突き止められるんだよな?」

「モチのロンロン、コロンちゃんっ!それでは皆さん、ご一緒にっ!てくにか、てばにく、どろんぱぁ~っ!殺人事件のあった時間へレッツらGoっ!」


ぐにゃり


ちびっ子探偵、隅田川コロンが『過去見魔法』を発動すると、3人がいる周囲の空間が歪んだ。そして次の瞬間、かき消すように3人は消えてしまったのだった。

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― 新着の感想 ―
あらすじにとても共感し、惹かれました。「結構真面目にトリックを考え」ての圧死。そして、ジャンル「異世界恋愛」を思い出して慌てて恋愛要素付け足し……わかる、と思ってしまいました。思いついたトリックで、着…
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