表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/5

02推理開始っ!

「以上が、これまで我々が知りえた事件のあらましです。ここまでで何かご質問はありますか?」

魔法使いの不審死の初期調査を担当した魔法使いギルドの事故調査委員は、魔法使いギルド内で殺人事件や迷子の保護など、様々な案件を扱う部署である『よろず課』に事件を引き継ぐ為、ギルドの会議室でよろず課の課員に説明を終えたところだった。

その説明に対してよろず課員は書き取ったメモを見ながら要点を復唱した。


「つまり事件現場は被害者の自宅で、死亡原因は圧死。通報者は被害者と小屋の売却で面識があった不動産屋で、被害者はこの不動産屋の証言により死体発見日の前日夕方までは生存が確認されていた。そして翌日のお昼前に尋ねて来た不動産屋によって魔法使いの死体が発見された。但し、その際小屋全体には強度な結界が張られていてパスワードを知っている者しか解除出来ない状態だった。以上で間違いないですか?」

「間違いありません。ただ、付け足すとすれば結界の強度はカデゴリー3でした。これは2級の上位魔法使いでも打ち破るのはほぼ無理と言われている強度です。そして被害者は2級能力上位認定を保有している魔法使いでした。あっ、後これはプライベート情報なので報告書には記載しませんでしたが、魔法使いの名前は『ミス テリーヌ・タムラ』で、戸籍上の出生地は極東の国『日本』です。」

よろず課員の復唱に事故調査委員が新しい情報を付け足した。その情報によろず課員は感想を漏らす。


「ほうっ、2級ですか。しかも上位。中々のエリートだったのですな。そして敬称が『ミス』という事は独身。でも近々結婚して『ミセス』になるはずだったと。」

「らしいですね、なのでギルド内での聞き込みでは彼女が殺されるなんてあり得ないという声もありました。」


「まっ、如何に優秀な魔法使いと言えども油断しているところを物理的な攻撃を受けると脆いですからな。今回はまさにそこを突かれたのでしょう。」

そう、実は魔法使いが一番対戦したくないと思っているのは上位魔法使いではなく剣士などの物理攻撃を得意とする者たちだったのだ。

なので魔法使いは大抵の場合『全方向防御魔法』を自らの周囲に張り巡らせて不意打ちを防ぐのが定石であった。


だが、『全方向防御魔法』は魔力の消耗が結構激しい。なので自宅などにいる場合は市販のセキュリティシステムを稼動させて、自らの魔法は切っておくのが普通らしい。そして今回はそこを突かれたのだろうとよろず課員は推測したようだ。

だが、事故調査委員は別の視点からこの事件の不自然さを指摘してきた。


「そうなんでしょうけど、それにしてもやり方が少々派手過ぎると思いませんか?殺す事だけが目的ならばナイフでザクリとやるだけでも簡単に殺せたでしょうに。」

「そうですな、まぁ、刺殺などではその刺した回数などで衝動なのか恨みによる犯行なのかを見分けたりするが、他の殺人方法にもそれは当てはまる。なので今回の場合は確かに悲惨な死に方ではあるが、検死官からの取りあえず目視だけでの簡易報告ではほぼ即死だったろうとの報告がされているから、これが恨みによる犯行だとしたら犯人はまだ気が晴れていないかも知れませんな。」


「つまり見た目の派手さだけでは犯人の犯行動機は探れないと?」

「血が飛び散り、頭骸骨が砕け、内蔵が散乱している状況だけをみれば相当な私怨を感じますが、被害者がこの状態となったのは一瞬なはず。もしかしたら被害者は自分が死んだことすら判らなかったかも知れません。それは恨みを晴らそうと犯行に及ぶ者たちからしてみると歯がゆい事でしょうからな。」


「あーっ、まぁ恨み系の犯罪者は得てしてそうゆう心理状況に陥りやすいそうですね。だから相手が既にこと切れていても構わずに何度も刺すらしいです。」

「そうですな。だが今回は動機も然る事ながら殺した方法が判らない。これは密室殺人というだけでなく、殺害方法すらも判らないというかなり面倒なケースです。」


「つまり証拠を見つけられないという事ですか?」

「そうです。仮に犯人が自首してきたとしても殺害方法を黙秘されたらお手上げです。」


「自首したのに喋らない?そんな事があるのですか?」

「世間から注目を浴びたいという動機で、自分が殺したと言ってくるやつはたまにいるんですよ。」


「それはまた迷惑なやつですね。」

「しかもそんなやつは大抵裁判で証言を覆すのです。」


「ならば尚更今回は殺人方法を突き止めないと。」

「しかし、この調査報告書にもあるように、被害者を圧死させられるようなモノが部屋にはなかった。仮に犯人が持ち去ろうにも、そもそも結界が張られていたから証拠の凶器どころか犯人すら小屋に出入りできなかったはずだ。」


「その件に関しては犯人が結界の解除パスワードを知っていたという事もあり得るのでは?」

「それはある。だがセキュリティ会社に問い合わせたところ、被害者が前日の夜に結界を作動させてから翌日不動産屋が解除するまでの間に、結界が解除された記録はなかったそうだ。」


「つまり結界は作動し続けていたと。となると犯人は被害者が結界を作動させる前に小屋に潜入し、被害者を殺害した後に結界を作動させて・・、いやこれだと小屋から出れなくなるか。あっ、タイマー作動という方法はどうですか?」

「機能としてその方法はあるが、その場合もタイマーにて作動とした言う記録が残るそうだ。そしてそんな記録は残っていなかった。」


「では、犯人は犯行後小屋の中に隠れていて、不動産屋の隙をみて外に脱出した・・、いやこれもかなり無理がありますね。」

「あるな、そもそも不動産屋は魔法ギルドの指示により、連絡してから事故調査委員が駆けつけるまで一歩も外に出ていない。そして事故調査委員は現場保全の為に駆けつけて直ぐに非常線魔法を小屋の周囲に張ったからそれを突破しようとしたら警報がなる。しかしそんな事はなかったと報告書にある。」

事故調査委員が上げてきた進入及び脱出方法をよろず課員は悉く論破してゆく。

まぁ、本来ならばこんなにぺらぺらと情報を喋ったりしないのだが、よろず課員も相手が同じ組織内で共に事件を調査する事が多い事故調査委員だったので気を許したのだろう。

なのでよろず課員は情報の再確認も含めて更に収集した情報を口にした。


「更には、これは不動産屋の証言なのだが、事件発生の前日に魔法使いは小屋の周りを清掃していたらしい。ただその方法が大雑把で、突風魔法でゴミや塵を吹き飛ばしたらしいのだ。なので事故調査委員が駆けつけた時には小屋の壁や屋根、及び小屋の周りの地面にはうっすらと埃が積もっていた。これは事故調査委員であるあなたから上がってきた報告書に載っていた事だから、あなたもご存知なはずだ。」

「ええ、なので鑑識官も周囲での足跡や手を触れたであろう場所の確認が楽だと言っていました。ですが、それ故に何も手がかりが出てこなかった時は焦っていましたけどね。」


「確かに。その事は逆に犯人が現場から逃走していない事を鑑識が証明しているようなものだからな。」

「ですよね。ではその方向でもう一押し。実は今も犯人は小屋の中に潜んでいる可能性は?」

「それは仮説としてはあり得るな。一応小屋の内部はくまなく捜索したらしいが見落としがある可能性は否定できない。隠し扉や秘密の地下室があるかも知れんし。」


「自分で言っておいてなんですが、あり得ますかね?」

「ないな。あなた方がくまなく捜索した事に抜けはないし、その際には空間探知機も使われている。つまり犯人が隠れるような不自然な空間があれば見つけている。当然秘密の地下逃走路トンネルなどがあったら見落としようがない。」


「魔法はどうです?透明魔法で姿を隠していたとか。」

「事故調査委員の目は騙せても結界のセンサーは騙せんよ。不動産屋がセキュリティーを解除したと言ってもそれはあくまで小屋の出入り口部分だけだ。仮に事故調査委員が中に入るのとタイミングを合わせて入れ違いに外に出たとしても結界のセンサーは何かしらかの物体が通過した事を記録するようになっている。だが、記録にはそんなものは残っていなかった。」


「ならば転移魔法ならば?」

「駄目だね、結界はそうゆうものにも対応している。そもそも結界とはそうゆうものだろう?」

そう、結界とは魔法で構築するものなので、物理的なものよりも魔法的なものへの方が敏感に反応するのだ。

そして既製品の結界はそれらに反応した場合は防ごうが突破されようが記録を残すものなのである。


だがここで事故調査委員はとある事に気付いた。その考えが正しければ全ての点と点が結びつく。その考えとは?


「よろず課員、今突然閃いたのですが、今回の事件は不動産屋が犯人ならば全ての謎が繋がるのでは?」

「今頃気付いたのか?だが駄目だね。」


「何故です?第一発見者が実は犯人でしたというのは推理モノでも結構ありますよ?」

「そうだな、確かに不動産屋が犯人ならば全ての謎は謎でなくなる。だが、駄目なんだよ。」


「ですから何故です?確かに物的証拠はありませんが状況的には限りなくクロに近いグレーでしょう?」

「そうなんだが、それは不動産屋が『人間』ならばだ。」

「あっ!そう言えば不動産屋はAI搭載のロボットでしたね。」

よろず課員の指摘に事故調査委員は思わず声を上げた。その事に対してよろず課員が説明する。


「そうだ、不動産屋はロボットなんだよ。だからやつが如何に人間くさく振舞っていたとしても、『ロボット三原則』の呪縛からは逃れられん。」

「ロボット三原則。確か『1.人間に危害を加えてはいけない』『2.人間の指示に従う』『1と2の項目に抵触しない限り自身の安全を図る』でしたっけ?」


「そうだ。そして嘘は人を傷つける行為だからロボットは嘘がつけない。なので証言に関しては法廷でも100%信用する事になっている。」

「不動産屋は状況的に一番犯行を実行しやすいはずなんだけど、ロボット三原則がそれを不可能にしているんですね。」

犯人についての思いつきが、本当に思いつきでしかなかった事を事故調査委員は少々自虐を交えて声にした。

なので事故調査委員は自身で考えるのを諦めてよろず課員に教えを請う事にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ