01殺人事件ですっ!
ここは異世界。なので当然魔法が存在する。そして舞台はそんな魔法の一種である強力な『結界』で守られた小屋の一室。事件はその部屋の中で起きた。
そう、なんと蟻一匹出入りできないはずの部屋の中で、小屋の住人である魔法使いが何者かの手により『圧殺』されたのであるっ!
因みに圧殺とは凄く強力なチカラで対象者を押し潰して殺す方法であり、検死報告書の死因欄には『圧死』または『圧迫死』と書かれる。
で、その凶器となる物体は大抵大きな質量を持つモノか、または人間のチカラでは押し返せないくらい強力なパワーでモノを挟む機能を持った機械などだ。
ただ、骨が潰れるほどの圧力ではないが胸部などを圧迫され続ける事により呼吸困難が引き起こされて死亡した場合は『圧迫性窒息死』という表現になるらしい。
これは多くの人々が集まった場所でパニックなどが起こり、人々が逃げる為に出口に集中した場合などに起こりやすい『群衆雪崩』という現象で頻発する死亡原因らしい。
しかし、この魔法使いが『圧殺』された部屋は、先にも言ったが小屋全体が強力な結界によって守られていた。つまり外部からこの小屋に出入りするのはサンタクロースや上位魔法使いでも不可能だったのである。
かと言って部屋の中には倒れてきて魔法使いを押し潰せるような大質量の物体はなかったし、プレス機もなかった。いや、それどころかテーブルや本棚、ベッドなどの大型生活用品すらなかったのである。
勿論天井にシャンデリアなとは吊るされてなかった。ミラーボールも同様である。
また、実は壁が大理石で造られていて、その壁が倒れてきて魔法使いを押し潰した訳でもない。
なので今回の事を事故で片付けるのは少し無理があった。しかし、他殺と断定するにも色々と辻褄が合わない事が多い。
そう、これぞまさに『密室のミステリー』。そしてそんな事件が起こると何故か呼ばれる人物がいた。その者の名は『隅田川コロン』。ちびっ子探偵である。
さて、それでは時系列に沿って今回の事件を振り返ってみよう。
まず魔法使いが死んでいるのを一番最初に見つけたのは、事件が発覚した当日の午前中に、小屋で魔法使いと会う約束をしていた不動産屋の買取担当者であった。
因みにこの買取担当者はAI搭載のロボットである。そう、なんとこの世界には魔法だけでなくロボットまで存在しているのだ。
更に不動産業界が導入しているロボットは業務内容が接客業なので、お客に嫌悪感を抱かれないようにその姿はちょっと見くらいではロボットと気付かないほど人間そっくりな姿に作られており、仕草さえ人間と見まごうほど完璧に振舞うようプログラミングされていた。
因みに小屋の結界に関しては、魔法使いが小屋を購入した時にホームセキュリティ会社と契約して小屋全体に掛けていたものであり、魔法使いが自身で施したものではない。
そして不動産屋の買取担当者はその結果の一時解除用パスワードを魔法使いから事前に聞いていたので小屋の中に入れたと証言している。
そして小屋の中で魔法使いの圧死死体を発見した不動産屋の買取担当者は、狼狽しつつも直ぐに魔法使いギルドに連絡した。
そう、この世界には『警察』という組織はないのである。なので揉め事や犯罪への対処は、被害者が所属する組織や、事件が発生した場所の自治会、もしくは被害者と関わりがある者が単独で調査解決しなければならなかった。
そうゆう意味では、通報さえすれば税金を使って事件を調査してくれる警察と言う組織は大変ありがたいものだと感じられるだろう。
とは言え、この世界には警察は存在しない。なので魔法使いの圧死死体を発見した不動産屋は、魔法使いが所属する魔法使いギルドに助けを乞うたのである。
その後、連絡を受け駆けつけた魔法協会の事故調査委員は今回の件を事故ではなく殺人と断定し関係者への聞き込みを始めた。
その結果、魔法使いは近々結婚する予定になっており、その為この小屋を売却して引っ越す事になっていた事を知る。
なので家財道具などは既に引越し先へ運んだ後だったので部屋の中に何もなかったらしいのだ。
そして被害者は住まなくなる小屋を売る事にし、その仲介をする不動産屋に小屋の状態を最終確認してもらう為に、前日の朝から小屋とその周辺を掃除して部屋で待っていたらしいのである。
ただ、外回りに関しては突風魔法かなにかでかなり大雑把に片付けたらしく、小屋を中心にして放射状にゴミや小石などが吹き飛ばされていた。
なので敷地周りはそれなりにきれいになったが、舞い上がった土埃が小屋の壁や屋根にうっすらと降り積もった事までは目が届かなかったようだ。
そしてその後、魔法使いは画像通話にて不動産屋と打ち合わせを行なったのが前日の夕方であった。




