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4-5 地下道

読みに来てくださりありがとうございます。

 地下室の壁の先は綺麗に整えられた小さな部屋に繋がっていた。天井から下げられているランタン、並べられている人間の物と思われる洋服には一切埃は無く、掃除好きのブラウニーの部屋と言われれば納得出来る部屋だった。

「あの、ここからどこへ?」

 正直、何のプランも考えずブラウニーの穴に足を突っ込んだため、アルロフはどこへどう向かうかさえ分からない。

「取り敢えず、あんたの店の地下室に向かおうと思ってたけど……」

 そこまで言って、ブラウニーはアルロフの様子を見る。対してアルロフは、何を言っているんだ、とばかりの困り顔をした。

「その様子を見ると自分の店に地下室がある事を知らなかったようだね」

 専門店街にある店には全て地下室があるんだよ、とそんなアルロフの態度に呆れた様子で大きなため息を漏らす。

「なんせ完成した物を購入したもので……、各店に地下室があるなんて初めて知りました」

 なんかすみません、とアルロフは呆れるブラウニーに謝ることしかできない。

「地下室を知らなかったってことは、地下道と地下室を繋ぐ通路の鍵番号も分からないってことかい」

「まぁ、そうですね」

「はぁ」

 再び深いため息をつくブラウニーにアルロフは項垂れる。

「なら取り敢えず、あんたの店の裏手にある地下道の出口へ行こうか」

 流石に店の裏手までは警吏も行くまい、とブラウニーは言い、バンシーの地下室とは逆の壁にある小さな扉を開いた。どうやら、この先が地下道になっているらしい。

 身体をかがめて抜けた扉の先は、決して暗闇ではなかった。なんならランタンが等間隔に吊るされていて歩くのには困らない。雰囲気としては鉱物の発掘場といった所だろうか。

 強いて困る事と言えば、道の分岐が異常だと思えるほど多い事くらいだ。

「分かれ道が多いですね」

「そりゃ各店の地下室に繋がっているんだ」

 当たり前じゃないか、とクスクスとブラウニーは笑う。

「なにか?」

 こんな非常事態に笑える余裕があるのだろうか、とブラウニーの笑いに苦笑いしながら頰を掻く。

「いや、天下のエルフ様でも知らない事は山ほどあるのか、思っただけだよ」

 気にしないでくれ、と言ったブラウニーは更に口の端を上げてニヤニヤとした。

「はぁ……」

 ブラウニーのその様子に対し、アルロフはただ彼女について行くことしかできなかった。


「さて、そうこうしているうちに、もう出口だよ」

 私の案内もここまでだねぇ、と言う彼女の表情は先程までのニヤニヤとアルロフを馬鹿にするようなものではなく、出口とアルロフを見比べてこの先を憂うような厳しいものだった。

「アルロフ殿、私らの妖精の森は消えるんですかい?」

 そう言ったブラウニーの細められた瞳はアルロフの瞳をしっかりと捉えていた。

「私には何とも言えません。ですが、出来る限り食い止める所存です」

 今はどうしようもないが出来る限り時間を稼ぐ。それしか言えないのがもどかしいと思いながらアルロフは正直に答えた。

「そうかい……」

「まぁ、どうにかいい方向に向かうことでも祈っていてください」

 結局はどうにもできないんですから、とアルロフは空笑からわらいをした。こんなのただの強がりであるのははなからブラウニーも知っている。

「そうさせてもらうよ」

 しかしブラウニーもそれを承知の上でアルロフの背を叩く。

「行ってきな、あんたが妖精の森の命運を背負っているんだろう?」

 頼んだよ、そう言ってブラウニーはアルロフの身体を地下道から地上へと押し上げた。

「え、あ……」

 急に身体を地上に持ち上げられて、アルロフは困惑した。

「わたしゃ、あんたの生きた時間の十分の一も生きていないただの妖精だが、だからこそ分かるものがある」

 ブラウニーは地上道の出口の穴から地上のアルロフの事をじっと見つめた。

エルフ(あんた)にはエルフ(あんた)にしかできないことがある。絶対にだ」

 年寄りからのありがたい言葉を受け取りな、とブラウニーは笑った。今度の笑いは本当(・・)だ。

「出来る限りをやって来い」

 今なら警吏は居ないはずだ、とブラウニーは耳を覚ませて言った。

「……はい!」

 半ば背中を押された感じでアルロフは自身の店の裏に足を着いた。


 もう、アルロフに迷いはない。

次回の更新は6日の21:00です。

お楽しみに。


引き続き、作品評価&コメントお待ちしています。

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