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4-4 バンシーの館

読みに来てくださりありがとうございます。

視えている(・・・・・)というと何のことでしょうか?」

 あえてアルロフはとぼけてみせた。バンシーの方がどこまでアルロフの事を知っているか、まだ未知数だからだ。

 アルロフの変装魔法を解いた銀河の瞳には、相変わらず目の前のテーブルで仄かに火が灯っている蝋燭が映っていた。

「誤魔化さないでください。貴方は……先見の目(・・・・)をお持ちのはずだ」

 対してバンシーは焦った様子でアルロフを問いただす。

「……」

 その一瞬、静寂が部屋ごと二人を包んだ。

「フィリさんも成長したよね」

「もう、誤魔化さないでください」

 立派になったなぁ、というアルロフの感動にバンシーは昔の話を持ち出すなとばかりにムッとした。

「で、実際の所はどうなんですか」

 誤魔化されませんよ、とばかりにバンシーは卓上で手を軽く組む。

「まぁ、先見の目を持っていることは確かだな」

 仕方ないから貴女には教えてあげよう、とアルロフはテーブルの下で足を組んだ。

 先見の目、それは見たものの未来を見ることが出来る力。古代より長い月日を生きたエルフのみが持つとされる力である。

「だが、俺が見れるのは目を合わせた人物の未来のみさ」

 万能じゃないんだよ、とアルロフは悲しげに笑う。

「そうですか……。ちなみに、何か視えているのですか?」

 バンシーの問いにアルロフは、そうだねぇ、と目を伏せる。

「強いて言うのならば、妖精の森の崩壊(・・・・・・・)かなぁ。でも妖精の森のような場所であって、妖精の森とは断定出来ない」

 そう言ってアルロフはバンシーの緑の色の瞳を見すえた。

「でも、君も見えてるんでしょ」

 死の預言者バンシーは、と言うアルロフの顔は口調に反し深刻だった。

「えぇ、私も数カ月前から妖精の森のような場所が崩壊する光景を視るようになりました」

 信じたくはありませんが、と付け加えバンシーは俯く。

「ならさ妖精の森であると仮定して、なぜ崩壊すると思う?」

「さぁ……、分かりません」

 アルロフの質問にバンシーは困惑した。

「妖精王の手の者が人間を人間界から攫って来て、刻印屋に王家の刻印を入れさせているんだよ」

「?!」

 突然の情報開示にバンシーは言葉を失う。

「それは本当ですか」

「実際に刻印屋の召集で呼ばれたからね」

 危うくやらされるところだった、とアルロフはため息をつく。

「よくここに来れましたね」

「いや、逃げてきたんだよ」

 人間の女の子を一人攫って、と変わらない調子で言うアルロフにバンシーは、はぁ、と大きなため息を吐き出した。

「で、貴方は王城から追われていると」

「そういうこと」

「そうでしたか……」

 ならば早くここを出た方が良い、とバンシー鬼気迫る様子で言った。

「どういうことだ?」

 バンシーのただならぬ様子にアルロフも口調が厳しくなる。

「もう警吏がすぐそこまで来ています。きっと付けられましたね」

 だから直ぐに館に辿り着いて貰えるようにしたのです、とバンシーは続ける。

「?!」

「今は認識阻害魔法で時間を稼いでいますが、急いで下さい」

 付いてきて、とバンシーは椅子から立ち上がった。


 バンシーについて行った先は、屋敷の角に当たると思われる小さな地下室だった。

 ただの使われていない物置きらしく、部屋に入ると埃とカビの匂いが鼻腔をくすぐった。

「タヒュ、いますか?」

 バンシーは何もない壁をノックした。

 すると、ノックした部分の壁が奥に凹みスポッと抜ける音がした。

「なんだい、フィリ」

 そう言って空いた壁の穴から、レプラホーンよりも少し背が高いと思われる毛深な女の妖精が現れた。

「このエルフの方をこの屋敷から逃がしてあげたいの」

 地下道を案内してあげて、とバンシーはタヒュと呼ぶ女に頼んだ。

「タヒュ……あぁ、ブラウニーの一族の方でしたか」

 店の片付けやらなんやらで先代とは仲良くさせてもらいました、とアルロフは軽く挨拶をする。

「その言いようだと、貴方はアルロフ=エイシン殿か」

 ブラウニーの言葉に、そうですよ、と営業スマイルを振りまく。

「私はタヒュ=ブラウニーさ」

 よろしくな、と彼女はアルロフに手を差し伸べた。

「こちらこそ」

 その挨拶に対しアルロフも手を握って握手をする。

 ブラウニーと呼ばれる妖精は人間のやり残した仕事をやってくれたり、作物の刈り取りや麦うちの手伝いを夜な夜な行う妖精だ。稀に農家の羊や鶏の番を行うこともある。

 人間は手伝ってもらった場合、茶わん1杯のミルクかクリーム、または大麦の粉で焼いたパンに蜂蜜を付けたものを窓辺に置くことが絶対とされている。いくつかの伝承では、お礼をしないと人間の服を奪っていったりするとも伝えられている。


「タヒュさん、案内よろしくお願いします」

 専門店街の地下道は専門店街に居を置くものしか知らない。専門店街の自治制を守るためのものだ。 

 アルロフとて地下道を利用することがないから、きっと一人だったら道に迷ってしまうだろう。

 そう思い、二人に促されながらアルロフがブラウニーの出てきた穴に足を突っ込んだ時だった。

「妖精王陛下直属の警吏の者だ! アルロフ=エイシンが居るな!」

 出てこい! という館前の警吏の怒鳴り声が地下室にまで響いた。

「アルロフさん急いで逃げて」

 ここは私に任せてください、そう言ってバンシーは急いで一階の玄関へと続く階段をドレスの裾を掴んで駆け上っていく。

「アルロフ殿、行くよ」

「分かりました」

 バンシーが心配ではあるが、折角の逃げる時間を無駄にするわけにはいかない。

 そう思い、アルロフはブラウニーがでてきた穴を内側に引き抜いていた壁の一部で塞いだ。

次回の更新は5日の21:00です。

お楽しみに。


引き続き、作品評価&コメントお待ちしています。

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