014_03_そんなこんなで女子トーク#2
「ってか、リンは愛されてるからいいよねー。ぜんっぜんウチの好みじゃないけどさ、戦ってたときはちょっとうらやましかったかも。だってカンっていつもやる気なくって、ムダなことしたくないってカンジで戦わんかったじゃん? なのにあんな頑張ってリンのこと守るって、ぜってー勝てんのにウチに向かってくるとか、ヤバくね?」
テーブルに肘をつき、組んだ指の上に顎を乗せて小首をかしげ、キラキラした目でわたしを見つめてセイが微笑んだ。
「べべべ別に愛されてるとか全然ないよ!? そういうのじゃないって! もう、やだなあ!! ま……まあ、たしかにすっごく頑張ってくれて嬉しかったけど、わたしを守りたいとかそんなのじゃ……」
突然の――とはいえやっぱりイヤな予感の通りだった――セイの発言を、わたしはぶんぶん手を振り必死に否定する。わたし、何でこんなに必死になってるんだろう。でもそう言ってる間にふと、思い出してしまった。
「そういえばあいつ、自分で言ってたよね。自分の方がホーラを持ってるし、システムの助けもあるからって。うん、セイの攻撃を防ぐだけなら……守りに徹するなら自分の方が向いてるからって、単純に勝つためにそうしてたんだと思う。セイに言った事も……多分そういう意味じゃなくて、セイをちょっとでも動揺させて戦いを有利に運ぶためだったんじゃないかな。
だっていつもそんな感じでさ、どうしたら上手くいくかってそればっかり考えてて、そのための手段は割と選ばない感じだし。で、そういう作戦、わたしには全然教えてくれないし……」
言っている間に何故だかどんどん気分が沈んでいき、わたしは大きくため息をついた。彼はそういう人だし、別にそれでいいはずなのに、何だかモヤモヤする。
「は? 勝つためにウソついてたってこと?」
セイが怒りをあらわに尋ねた。
「嘘じゃないよ。本当のことを言ってないだけ。考えてみたら大体いつもわざと誤解を招くような言い方をするか、全く言わないかして、聞いた人が勝手に都合よく解釈するのを狙ってる感じだったかなあ」
わたしが首を振ると、セイが途端に不機嫌そうに眉根を寄せた。
「それってリンの気持ち、利用してたってことっしょ? リン、そーゆーの嫌いじゃね? やっぱヤなヤツじゃん!」
「人を利用するのは好きじゃないよ。だけど、わたしも手段を選んでる場合じゃないって思ってた。あの時はとにかく、絶対勝ちたかった、ううん、目的を果たしたかったから、そのためになんでもしようって思ってた。だから……彼が悪いわけじゃなくって……それでいいんだよ」
実際それでうまくいって、破壊神の復活を防ぎ、ゲートを閉じるって目的を果たした。手段が良くないところもあったかもしれないけど、とにかくそっちが優先だったんだ。
「えー。ウチにはわかんね。けどそれでもゆるしちゃうとか、やっぱリンもめっちゃ好きだよねー」
セイはニヤニヤと笑って、とても楽しそうにわたしの顔を覗き込んだ。全くこの子は……! 頭の中は恋愛一色に違いない。あ、だからあの時も彼はそれを利用してたわけか。
「だから違うよ!? ただ同じチームにいただけだって! ……っていうか友達でもないらしいしさ。だいたい彼について知ってる事、ほとんど無いんだよ!? 大学三年だって聞いたくらいかな。そうだよ、連絡先どころか本名も知らないし……。わたしも教えてないけどさ」
「まぢで?」
セイは驚いたような呆れたような顔でわたしを見た。
「全然話に上がらなかったっていうか、ネットの知り合いにリアルを聞くもんじゃないって雰囲気を出しまくってるから聞けないし」
視線に耐えかねてそんな言い訳をすると、セイはふう、とため息をついた。
「なーんかはっきりしないなー。ってかどうなの? リンはカンのコト好きじゃないの? いっしょにFXやってて、楽しかったんじゃないの?」
テーブルに少し身を乗り出し、わたしの目をじいっと見つめてセイが尋ねた。そんな風に見つめられるとちょっと困るなあ。
「ええ? 一緒に頑張ってた時は楽しかったけど、それは目標があったからってだけで……。好きかって言われてもなあ……。大体向こうは、わたしになんて興味なさそうだし……」
「なーに言ってんだか。ってかリンらしくなくね? カンがどう思ってるか、とかどーでもいいし。ウチが聞きたいのは、リンがどうなのかってこと。いっしょにいて楽しかったなら、それでよくね? わかんなければ、聞けばいいじゃん! うまくいかなかったら、しょーがなくね?
あいつがどうかなんて考えてたら、向こうから言われるの待ってたら、百年たっても何も進まんくね? 好きならリンのほうから言わんと!」
セイがぎゅっと拳を握りしめ、もう殆ど体をテーブルの上に乗せ、ずいっと顔をわたしに近づけて力説した。確かにセイの言う通りだ。わたしらしくなかったな。向こうの出方をうかがってたら絶対進まない。わたしから距離を詰めてみなきゃいけないんだ。だけど……。
「でもなんにしても、もう会うことないし……」
それが一番の問題だ、とわたしは再びため息をついた。その時、セイとわたしに同時にメールの着信があった。
「あれ? なんだろう?」
メールを確認すると、Fortuna社からだった。Fortuna eXplorerで特に活躍したプレイヤーを呼んで、一夜限りでカフェ・フォルトゥナを復活させ、ささやかなパーティを行うから、という招待状だった。要するに公式のオフ会ってこと? セイのところに来たのも同じメールだったようで、彼女はとても嬉しそうにニンマリした。
「おー、めっちゃいいタイミングで来たし! これ、行ったらカンに会えるんじゃね? 行くっしょ?」
「え、こういうのに来るかなあ? 来ないと思うけどなあ。セイは行くの? でもこれってきっと……ええと、ジョーにも送られてるよね?」
FXで活躍したプレイヤー、でセイに来てるんだから、当然リスクオンのギルドマスターであるジョーにも来てるはずだ。だとしたら会いたくないかな、と思って聞いてみた。聞かないほうがいいのかもしれないけど。
「そんなん気にしんしー。ってか新しい恋、探せばよくね!? そーだ、黄金騎士団のシンさんとか、ウチわりと好みなんだよねー」
「えっ!? シンさん!? それは……やめた方がいいんじゃないかな。めちゃくちゃ自己中心的だし、トゲトゲしいし」
「えー? でも強いし、カッコいいし。見た目ちょいワルそうだしコワそうだけど、けっこー良い人だし」
ゲーム内での傍若無人な対応を思い出して眉根を寄せるわたしに、セイは頬を膨らませて抗議した。セイの好みはわからないなあ。確かに強かったけど、良い人ではないと思うな。
とはいえわたし達は敵だったからああいう感じだっただけで、シンさんも仲間には優しかったのかも。あれ、でもそれって結局ジョーと同じタイプじゃない?
それはともかく、セイはFXプレイヤーたちのアイドルだったし、その気になればすぐ見つかりそうだよね。だけどそれでいいのかな、ちょっと無理してるような気がする。ま、わたしが言う事じゃなくて、本人が決めることだけどさ。
誰が来るか分からないけど、わたしもマドカさんやアマネさんにカレンさん、お世話になった人達に会えたらいいなと思うし、カフェ・フォルトゥナのおいしいごはんがもう一回食べられるのも嬉しいな。
「よし、行ってみよう!」
「よっしゃー! じゃ、一緒に行こうぜぃ!」
ということで、さっそく出席、と返信する。みんなにまた、会えるといいな! それとカフェ・フォルトゥナのパーティメニュー、どんなのだろう? 立食形式って話だからたっくさん……うひひ。
おっと、女子力ゼロの変な笑いが浮かんでしまった。いかんいかん!




