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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第十四章: ただいま日常生活!

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014_01_終わったことは嘆かない

 頬を何かが伝うのを感じて、慌てて指で拭う。いつもならすぐに係の人が来てくれるんだけど、今日は中々来なかった。まあ、今はその方が嬉しいかな。これでもう、この装置を使うこともないんだし……。あ、だめだ、そんな風に思うとまた涙が出そうになる。


 ……やっぱり、早く来てここから出してほしいな。何だかちょっと落ち着かない。


「お待たせして申し訳ありません! 少々立て込んでおりまして……」


 ようやく係の女の人が来てくれて、慌ててVR装置のふたを開け、繋がれたセンサーをぷちぷちと取り外した。わたしはうーん、と体を伸ばし、装置から這い出る。


「申し訳ありません、突然システムトラブルが発生しまして現在原因を解析中ですが、今のところ復旧の目途が立っておりませんので、本日はお引き取り頂けますようお願い致します。原因等が分かり次第、別途ご連絡致しますのでしばらくお待ち下さい」


 彼女は早口に言って頭を下げると、縋るようにちらりとわたしの顔を覗いた。大丈夫、問い詰めたり文句言ったりしないで、早く帰るよ。だって原因は知っているから。わたしは「わかりました」とうなずいた。


 彼女は全く文句も質問もなく、黙々と帰り支度をするわたしを意外そうに見つめていたけれど、やがてほっと一息つくと、笑顔でわたしを見送ってくれた。



「一体どうなってるんだ! 何も説明が無いなんてどういうつもりだ!!」

「いつ復旧するんだよ! 次の予約は取れないのか!?」

「今回分のホーラはどうなるの!!」

「最近トラブル多すぎだろ! 高い参加料取ってんだからちゃんと働けよ!!」

「え!? サービス停止!? せっかく貯めたホーラ、どうなるんだよ!!」


 受付に人々が詰めかけ、怒りの声を浴びせていた。聞くに堪えないような罵詈雑言も時々飛んでくる。センター内は大騒ぎだった。まあ、そうだよね。突然プチっと接続が切れちゃって、強制的にログアウトさせられたんだから、プレイヤーが怒るのも当然だよね。


 対応に追われる係員さん達は、とにかく後で連絡するから落ち着いて、今日のところは帰ってくれと、さっきわたしに言ったのと同じ事を繰り返していた。誰の顔にも疲れが浮かんでいる。


 この対応は、運営の本部から特に説明もなく、こう言えって言われたから言っているだけみたいに感じるな。きっと、ここの係の人達は何が起きたか――今まで何が起きていたのかも――知らないんじゃないかなあ。


 プレイヤーも、運営も、多くの人にとってはただの「とてもリアルな仮想の異世界を探検するゲーム」だったんだと思う。


 こんな騒ぎが起きたのは、わたし達がゲートを閉じたからだ。だからここの人達にはなんだか申し訳ないな、と思う。でも、わたし達じゃなくてショウさんが勝っていたとしても、いずれ噴火が起きたらゲームは続けられなくなる。遅かれ早かれ終わるものだったんだ。突然かそうじゃないかって違いはあるけど。


 そう、もう終わっちゃた事なんだ。いくら考えたって元に戻すことはできないし、戻したいとも思わない。わたしは終わらせるべきだって思って、そうしたんだ。この状況を見たからって、やめておけば良かった、なんて後悔はしない。だからもう考えないことにする。さ、帰ろう。


 あ、そうだ。帰る前にちょっと寄り道しよう。ふと閃いて手芸用品店に行き、きれいな色の皮紐と天然石――色がキレイだったから、紫水晶――を買った。ミライから空き時間にちょこちょこ教えてもらってた飾り結び、もう一回やってみようと思うんだ。


 家に帰って、さっそくチャレンジしてみる。確か、こうして、ここをこう通して……と、思い出しながら頑張ってみるけど手元が怪しい。先生がいないと中々進まないな。でも、何とか形になってきた!


---


 翌日。日曜日。昼過ぎまではバイトして、その後ログインっていうのが最近の過ごし方だったけれど、サービス終了しちゃったしなあ。だから今日の予定は普通にバイトだけだ。収入の一つがなくなったから――といってもホーラを換金したことは無かったし、無いまま終わっちゃったんだけど――、これからはもうちょっとシフト入れて稼がないとね。って、もとに戻るだけだけど。


「おはようございます、成田さん!」


 先に来ていた成田さん……行雄、もしくはユキとは現実でもフォルトゥナでも色々あったけど、今はもう気にしてないので元気ににこやかに挨拶する。


「あ……おはよう」


 行雄の方はちょっと気まずそうな感じだけど、気にしない。


「あのさ、凛……」


「なんでしょうか?」


「あ……ごめん、やっぱいいや」


 怖い顔してたのか、それとも向こうが先輩ってことで敬語を使ったのが余計に怖い感じになったのか、行雄はそそくさと視線をそらし、何か言いかけていた口をつぐんだ。


 言いたいことがあるなら言えばいいと思うけど、わざわざ聞くほどでもないからそのまま放置。彼らがどうなったか、なんて別にどうでもいいし、万が一――絶対無いけど――やり直そうとか言われても答えは「ノー」に決まってるしね。


 そんなことより仕事、仕事。


「お疲れ様でしたー!」


 日曜の昼ということで忙しかったし、いつも通り店長は嫌な感じで余計に疲れたけれど、無事にアルバイト終了。さてと、帰ってアクセサリー作りの続きでもしようっと。


 ちょっとずつ、ゲームのない日常に慣れよう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 『014_01_終わったことは嘆かない』 ゲームのない日常、(あっちの人もこっちの人も)みんなどうしてるんだろ? セイとはこっちでちゃんと仲直りできるのかな? (そしてセイとジョーはどうな…
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