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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第十三章: いよいよ最終決戦!

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013_07_二人で勝利を掴み取る#4

「守ってなんかいらない! わたしが戦うから!」


 わたしはブーストを使い、横に回り込んでセイに飛び掛かる。彼女は素早く目の前のカンを薙ぎ払うと、返す刀でわたしの剣を受け止める。


「はっ!? 何言って……何やってるんだよ!? 目的を忘れるなよ! いくらブーストが使えても、作戦からしてホーラの残高と戦闘支援システムがある俺の方が適任だ、自分の役――」


「ううん、わたしが攻撃する方が、成功する可能性が高いよ。ごめん、あとちょっとなのに、結局わたしには出来ないみたい。勝つための手がかり、見つけられなかった。こういうのはカンの方が得意でしょ? で、わたしは単純に、攻撃する方が得意。ホーラの事、心配してくれるなら早く終わらせてよね!」


 丁度さっきわたしのいた、例のゲート制御装置のあたりで体を起こしながら抗議するカンに、わたしははっきりと告げた。


「……いや、謝ることじゃない。分かった。出来る限りの事はする」


 そんないつも通り、どこか冷めた彼の声を聞きながら、わたしは一度剣を引き、構えなおす。


「それに……やっぱり、勝ちたいし!」


 ぎゅっと足に力を込めて床を蹴り、セイに渾身の一撃を叩きこむ。それでも、彼女にはわたしの刃が届くことはなく、直前で防がれた。わたしは彼女の反撃に備え、すぐに距離をとる。セイがわたしだけに注意を向けてくれると良いんだけど。


「リン!? ああもう、うっとーしい! 弱い奴が二人集まったって、ウチには勝てんし!!」


 セイは苛立ちと怒りを露わに叫び、おおきく振りかぶった大剣を勢いよく振り下ろす。わたしはそれを、横にステップしてかわす。いい加減、単調な攻撃には慣れてきた。彼女の攻撃は早いし、強いけど、前もって分かってしまえば何とか対応できる。


「強い人が二人集まってたら、もっと簡単に勝てたかもね。ジョーに一緒に来てって言えばよかったんだよ!」


 一気に間合いを詰め、攻撃後の隙をついて剣を薙ぐ。


「ジョーは次の帝国攻めイベントのために、金騎士団(ゴールドナイツ)に協力、ううん、むしろここであいつらを出し抜いて銀騎士団(シルバーナイツ)をツブさんといかんから、そっちに集中しなきゃだし!

 で、ウチらが上に行くためには運営との関係も大切だから、そっちは運営からも強さを期待されてるウチの仕事! ジョーにそう頼まれたし! ウチらはいっしょのゴールにむかって、別々にがんばってんの!! だいたいリン達みたいなザコの相手、ウチだけでじゅーぶん!!」


 セイはわたしの攻撃に合わせて、力任せに大剣を振るって迎え撃った。押し負けたわたしは後ろに飛ばされる。とはいえ何とか態勢を崩さず着地出来たので、彼女の二撃目に耐えられた。強い調子で叫ぶセイの言葉はやっぱり、わたしに対してというよりは、自分自身を納得させるためのものに聞こえる。


「でもわたし、まだ戦えてる。だから十分とは思えないよ。

 セイはジョーと一緒に戦うのが好きだったんでしょ? ホントは今も、一緒にソリドゥスの攻城戦に加わりたいんでしょ? でもジョーの望みを優先して、ここにいる。ジョーは……きっとセイのその気持ちを、言い方は悪いけど利用して自分の望みを優先させた。

 セイってさ、わたしには色々押し付けたり……まあワガママ言ったりするけどさ、ジョーには遠慮してるよね。ジョーが断りそうなことって絶対言わない。相手を思いやってるっていうより、顔色を窺ってる。ホントは一番何でも言える相手のはずなのにね!」


 わたしはためらいなく、まっすぐに剣を振り下ろす。


「うるさい!」


 それを弾こうと、セイが思い切り剣を振り上げる。ガキン、と大きな、耳障りな音がして、その後、キン、と金属が石の床にぶつかる高い音があたりに響いた。セイの手に握られた大剣は、真ん中から先が無くなっていた。


 よし、だいぶ時間はかかっちゃったけど狙い通り! これで諦めてくれたら良いんだけど……。


「はぁ? 何笑ってんの? 剣折ったくらいでウチに勝ったつもり? まだ戦えるし!

 何それ? 自分が何でも言う事聞いてくれる相手つかまえたって、ウチに自慢してんの? ばっかじゃね? そんなのぜんっぜんいらねーし!!」


 わたしに剣の切っ先を向けられている事なんて気にも留めずに、怒りに満ちた声で短くそう叫ぶと、セイは拳を振り上げ殴り掛かってきた。わたしは仕方なく迎え撃とうとしたけれど、もうその必要はなかった。カクンと、糸が切れたように、セイの体がくずおれる。


「ウソ……体が……動かな……? なんで! またシステムトラブル!? でもなんでウチだけ……! ウチ、ノーダメージなのに! ってかリン達のがずっとダメージ受けてんじゃん! なのにズルい!! ウチはまだ、負けてない!!!」


 何が起きたのか全く分からないまま、床にひざをつかされたセイが、混乱と、怒りと、悔しさの入り混じった様子で叫んだ。システムトラブル、だとしたら、きっと……!


 予想が正しいか確かめるため、ゲートの方を振り返る。すると、ガラスの中の真っ黒な穴が一回り小さくなっていた。そしてさらに少しずつ縮んでいっている。


 よかった、成功したんだ!


「負けてない、だって?

 どうすれば勝ちで、どうなったら負けかも理解していないのに、どうして負けてないって言えるんだ?」


 ふう、と息をつき、カンがゆっくりとゲートの方からこちらに近づきながら、セイに冷ややかに尋ねた。


 セイ、っていうか依頼元のショウさんの目的はゲートを拡大することだから、ゲートが閉じつつある今、セイは負けたって事になるんだよね。でもカンの言う通り、セイはそんなこと知らなくて、ただショウさんに言われたようにわたし達をパソコンに近づけさせないようにしつつ倒そうとしてただけだったんだ。


「セイの言う通りだよ。わたし達、二人がかりなのにぜんっぜん倒せなかった。セイはすっごく強かった。でもやっぱり……セイと戦ってたわけじゃなくて、こっちを狙ってたんだ」


 今すぐにでもカンに殴りかかりたいけど体が動かなくて、ただ彼を睨みつけるセイに、わたしはそう告げた。


「多分、そこのパソコンの事も、ショウさんの注意を逸らすためだったんじゃないかなあ。あの人がここにいたら、きっともっと難しかったと思うから。とにかく、狙い通り……ってわけでもないけど、上手くいったからわたし達の勝ち」


 言いながらちらっとカンの方を見ると軽くうなずいていたから、やっぱりそういう作戦だったんだろう。わたしが笑顔で勝利を宣言すると、セイの顔がみるみる怒りに染まっていった。


「はぁ!? どーゆーこと……あ、さっきそこで何かしてたせいってコト!? 何それ!? バグ技? チート? ってかそんなの聞いてねーし!! そこのパソコンに近づけるなってゆってたし、ウチはそれちゃんとやった――」


 そんなの認められない、といった顔でこちらを睨みつけて彼女はずっと叫んでいたけれど、完全に接続が切れたみたいで、やがてカシャン、と音を立てて姿を消した。彼女のいた場所には、骨のようにも見える黒い金属が積みあがっていた。これが新型機の正体、か。


「これで……終わったんだよね。ゲート、閉じていってるみたいだし。ゲートが閉じてるから接続が切れたんだよね。でもどうしてセイだけで、わたし達はまだ大丈夫なんだろう? それは分からないけど……とにかくこれでいいんだよね」


 終わった事を確かめたくて、わたしはカンを振り向いた。


「ああ、終わったんだ。向こうが先に切れたのは、どうしてだろう、接続の優先度を調整してくれたとかかな……? でも、俺達も時間の問題だと思うよ」


 カンが小さくうなずいて、いつも通り淡々と答えた。終わった……せっかく勝ったんだし、もっと喜ぶところのはずだけど、わたしもそうは出来なかった。別にカンの低いテンションに引きずられたってわけじゃなくて、気がかりな事がまだ一つあるからだ。


「ツバサ達は無事かな? 遺跡……火山の制御装置を直すの、上手くいったかなあ……? 最後に会えたら――」


 わたしの呟きを遮って、突然ギアから着信音が響いた。慌てて取り出してみたけど、私のじゃなくてカンのだった。彼は画面を見るとみるみる険しい顔になった。


「何やって――」


『ちょっと、貴方達どこにいるのかしら!? こっちは片付けたわ! 貴方達の言っていた街――そうは見えないけど――に来てみたけど、誰もいないじゃない! いるなら早く出て来なさい!!』


 カンが何か、たぶん小言を繰り出すより先に、ここしばらく聞いていなかった高圧的(?)な声がスピーカから響いてきた。


 え? どういう事?


 確かめなくちゃ、とわたしは急いで地上に向かって駆け出した。

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