↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第十三章: いよいよ最終決戦!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

107/118

013_03_ちゃんと聞きたい君のこと

「裏切り者め! 油断も隙もあったものではないな! だが、そんなに遺産に興味があるのなら、何故我々に協力しない? 我々の邪魔をしてしまえば、遺産も手に入らない。研究も出来ない。それが分からん程馬鹿ではないだろう?」


 ゲートのある場所へ急ぐわたしの耳に、侮蔑に満ちた声がかすかに聞こえてきた。この声、ショウさんかな。


「裏切り者? 意外ですね、信じていたなんて」


 やや低い、冷めた声が、ちょっと皮肉交じりな調子で答えるのが聞こえた。聞きなれた、でもしばらく聞いてなかった声だ。でもどういうこと? わたしが戸惑っている間に、その声がさらに続ける。


「ええ、興味はありますよ。遺産の調査には現物(オリジナル)を持ち返るのが一番でしょうね。それでも――きっと葛藤もあったでしょうが――、研究用にはデータ(コピー)を持ち返ることにして、現物はこの世界に残そう、と研究者達が――俺より研究に対する知識も熱意もずっとある人達が――決定したんですから、俺が従わないわけにはいきません」


「他人が勝手に作った基準に従うなど、つまらんことだな」


 ショウさんらしき相手がせせら笑いで返した。


「ご自身のサラリーマン経験からのご忠告ですか? でも俺もそこが一番バランスの良い点だと思っていますから。

 それに、仮に遺産を持ち帰っても全部高値を付けた物好きの陳列棚に並ぶのでしょう? それが分からない程馬鹿ではないつもりですよ」


 答える声に交じって、固いものがぶつかり合う音や、強く床を蹴るような音も響いてくる。いったいどういう状況なんだろう? 裏切り者って言われてたけど……? 気になるわたしは先を急ぐ。


「より多くの対価を払えば良いだけだ。学生には分からんだろうが、金を手にするのには多くの努力が……犠牲がいるのだよ。だから最も身銭を切れる者が、最も手にするに相応しい者なのだ。それが払えんというのなら、情熱もその程度ということだ」


 また見下したような声と、何か重いものが落ちたような音が聞こえてきた。


 薄暗い廊下の突き当りに細く光の筋が伸びている。扉が少し開いていて、そこから光と音が漏れているようだった。わたしは隙間に指を差し入れ、思いっきり扉を開ける。ショウさんが勝ち誇ったような笑みを浮かべて、床に膝を着くカンを見下ろしていた。


「そうかもしれません。ただ人が払う努力と得られる金銭は必ずしも比例関係にはないでしょうから、そうとも言い切れませんよ。

 しかし……研究や文化の保全のためならいざ知らず、ただ珍しいものを持ちたいがために大枚を(はた)く、って心理はどうにも理解できませんね。ずっと持ち続けられないものに(かかずら)うのは無駄でしょうに」


 対するカンはどこか余裕を含んだ目でショウさんを見上げ、相変わらずの冷めた調子でそう言った。ショウさんは見下した感じたっぷりにそれを笑い飛ばし、手にした剣をゆっくりと振り上げる。


「ちょっと待ったぁ!!」


 カンが一方的に叩きのめされたってことは、運営の人がプレイヤーに攻撃できるうえに、そうできるくらい強いってことで、ショウさんも実は新型機とか、何か運営の特権がある、ってことになる。ううん、それより前に何でこうなったのかってことだ。それを確かるためには、ここでカンに消えて貰ったら困る。


 わたしは剣を抜きつつ思いっきり走りこんで、ショウさんが剣を振り下ろす先に体を滑りこませる。キン、と乾いた高い音があたりに響いた。ガードした上から切り伏せられることはなく、何とか受けとめられた。どうやら新型機じゃなさそうだ。一台しかないって情報が間違いじゃなくてよかった。


「お前、白騎士団(ホワイトナイツ)の……! そうか、最初からこういうつもりだったのか。ゲートの場所を突き止めるために、仲違いしているように見せかけ強硬派(こちら)に入り込み、仲間が来るのを待っていたというわけか……! 大した演技――」


「え、そうなの??」


 悔しそうに顔を歪めるショウさんの言葉に、わたしは思わず驚きの声を上げる。それを聞いたショウさんは、ちょっと驚いたような呆れたような表情を浮かべた。


 しまった、ここは最初からそういう作戦だったことにしておいて、「フッ、この程度の演技も見抜けぬとは愚か者め」みたいに振舞っておけばよかった! って、そんなのはどうでもいいんだよ。


「カン、ホントはどっちなの? これから、どうするつもり?

 ……答えしだいでは、殴らないでおいてあげてもいいけど」


 後ろのカンに振り返り尋ねる。さっきの話からして、裏切ったわけじゃなかったって、ショウさんの味方じゃなかったって、演技だったんだって今は思ってる。


 けど、彼のことだしなあ。はっきり答えを聞くのがホントはちょっと怖い。最後の脅し文句はきっと、そういう不安を隠したかったんだと思う。


 まあ、ホントに裏切ってたんなら、殴って目を覚まさせる――ゲームオーバーで現実に帰ってもらう――だけだから、ウソじゃあないけど。


 じっと彼を見つめ、細く長く息を吐き、なんとか気持ちを落ち着かせようとするわたしを、彼はしばらく黙って無表情に眺めた後、ふぅ、と軽く息をついた。


「向こうにつく気はないよ。ゲートは閉じるさ。それに……。

 それに、リンさんに殴られるのも御免蒙りたいしね」


 彼はちょっと肩をすくめて軽く笑うと、傷薬を使って回復し、立ち上がってコートのすそをパンパンとはたいた。なんていうか相変わらずな感じだけど、それが何だかとても嬉しくて、ついついにやにやしてしまった。いかんいかん。わたしはパシパシと緩んだ頬をはたく。


「だが、雑魚が増えたところで何ができる? その女を待ったところで無駄だったのだよ。もうゲートは開いた。ゲートを壊すことなど不可能だ。それに、じきに彼女が来る。それで終わりだ」


 さっきまで苦い顔をしていたショウさんは、また余裕の笑みを取り戻して、わたし達に嘲るような視線を送った。彼女って、やっぱり――


「もー!!! あと一撃であのゴリオネエに勝てるトコだったのに! いきなり呼び出すとかまぢありえんし!! ジョーがいけってゆーからきてやったけど、運営だからってチョーシのんなし!!」


 バン、と力任せに扉が開けられた。ずかずかと入ってきた黒いビキニアーマーの女が、ゆるくカールした明るい茶色の髪を逆立て、丸く大きな目を怒りでギラギラと輝かせて、たっぷりと文句をショウさんに浴びせた。


 やっぱり、そう簡単にはいかないよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。