012_11_次の作戦立てちゃおう#3
「あ、お帰り。銀騎士団との交渉はどうだったかな?」
銀騎士団との会合の後、ソリドゥスからゲートで拠点に戻ると、レイさんが声を掛けてきた。さも当然のようにここでくつろいでるけど、良いのかなあ。仕事中じゃないの? 運営って暇なの?
「やだなぁ、そんな顔で見つめないでよ。僕だってずっとここにいた訳じゃないよ。ちゃーんと仕事もしてるさ」
不信感が顔に出ちゃってたのか、レイさんはわたしを見ると、苦笑いで弁解した。いや、仕事もってダメなんじゃ……。ま、この人の事は気にしないほうが、精神衛生上良さそう、かな。うん、スルーして話を進めようっと。
「話はまとまりましたよ! アマネさん達もゲートを閉じようとしてるって話でしたし、心強いです! レイさんが言ってた当てって、銀騎士団のことだったんですね。早く言ってくれれば良かったのに。みんなで協力してゲートを……あれ?」
答えながら、ふと色々おかしなことに気が付いた。
アマネさんはゲートの正確な場所を知らなかった。閉じ方も、何も言っていなかった。ゲートを閉じるにも、ミライが遺跡の封印を解いた――制御装置を動かした――後の方が良いって話だったけど、そこにアマネさんは触れていなかった。そうだよね、わたし達だって何も伝えなかったし、きっと運営だって伝えてない。
そうか……アマネさん……銀騎士団はあくまでも、金騎士団が拠点に宝物をため込んでて、それを持ち帰らせないためにゲートを閉じようとしてるんだ。ゲートを閉じる、ってトコだけ見たら一緒だけど、実際にやろうとしてることは違う。ようやく理解した計画の裏側に、わたしは眉根を寄せた。
「協力ってわけじゃないんだ……」
「まあ、そうなるかもしれないわ。銀騎士団を利用している、と言われればそうね。リンは不満かしら?」
マドカさんは事もなげに肯定すると、逆にわたしに問いかけた。
「いいえ。わたしの目的――噴火と、プレイヤーの略奪から、この世界を守ること――を叶える方法、今はそれが一番良いと思います。それに、方法が違うだけで、アマネさん達の目的に反するわけじゃないですし」
わたしがきっぱり即答すると、マドカさんは「そう」と口元をゆるめた。
「でも、結局銀騎士団もゲートの正確な位置や、閉じ方を知らなかったわけですよね。わたし達も、まだ分かってません。分からないけど、とにかく探す……ぶっつけ本番、って感じですか?」
「まあ、そうなるね。位置は運営の中でも情報統制が敷かれててね、僕も頑張ってみるけど。閉じ方に関しては完全にこっちでしか分からない事だね。それも出来る限り僕も調査してみるけど。そうだ、君の見つけたIDカードなんか、何かの役に立ちそうだよねぇ。ま、君の閃きに期待してるよ!」
レイさんがいつも通りごく軽い調子で答えた。ま、最後までがんばってみるしかない、か。
「わかりました! 見つけてみせます!
それと、色々準備とか整えてくれてありがとうございます。わたし、やらなきゃって思うけど空回りばっかりで。どうしたらできるかは、いつもみんなに任せっきりで――」
「そんな顔するんじゃないわ。前にも言ったかもしれないけど、誰しも得手不得手があるものなの。他の人の方が得意なことは、そっちに任せたらいいのよ。
アンタの優しさとひたむきさがあったからミライもツバサも協力してくれたんだと思うわ。それに……。
まあとにかく、そんな事で悩むヒマがあるなら修行かしら」
謝ろうとしたわたしにその言葉を言わせる間を与えずに、マドカさんはぴしゃりと言った。そしてパキパキと指を鳴らし、獰猛な笑みを浮かべた。そうだね、弱音を吐いてる暇なんてなかったし、謝ったって仕方ない。大丈夫、きっと何とかなる! 何とかする! 根拠はないけど!!
「ありがとうございます! 少しでも強くなれるように、お願いします!!」
わたしは笑顔で元気よく答えて、頭を下げる。よぉし、また頑張るぞ! と、気合を入れて修行のため中庭に出ようとしたら、
「あ、そうそう。その意気込みに水を差すようで悪いんだけどね」
ふいにレイさんに呼び止められた。なんだろう?
「騎士団の報酬って、知っての通りレポートと引き換えなんだよね。その内容によって経費+αを支払ってるわけなんだけどさ」
くるりと振り向くわたしにレイさんが言った。知ってるけど、何で突然そんなこと言い出したんだろう? よくわからずパチパチと瞬きを繰り返すわたしに、彼は事務的に続ける。
「ゲートを閉じた時点でゲームは終わりなわけで、レポートも出来なくなるから、次の戦いの分は完全な持ち出しってことになるよ。
いやぁ、もちろん君はそんなこと気にしないと思うけどさ、一応、念のため、伝えておかないと、ね?」
彼はそう言って小首をかしげ、にこやかにほほ笑んだ。白騎士団に入ってからホーラの事気にしてなかったけど、そっか、そうなるのか。別にお金のためじゃ無いし、ミライとツバサのためにも全力を尽くすつもりだよ。
だけど、そう言われちゃうと気にならなくもないのがわたしのような小市民というもので。
「も……ちろん! ゲートを閉じること、そのためにとにかくやるだけです!!」
ふわっと浮かんだ煩悩を追い払う意味も込めて、わたしは大きな声で、元気よく、高らかに宣言する。口に出してしまえば……誰かに聞かせてしまえば、後には退けないってもんでしょ。有言実行、だよね!
微妙な間が開いちゃったけど、それくらい大目に見てよね!




