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第六話 ミリにゃんの過去①

ミリにゃんこと籠裏美林(かごのうら みりん)


 私の両親は、信号無視して来た自動車にはねられて帰らぬ人となった。


 私たち家族は、両親、姉、私、妹の五人家族だった。

 ある夏休み、旅行で夢の国へ行った。

 ちょうど、その帰り道だった。

 私たち姉妹は、両親の前を歩きながら、今日の楽しかった思い出を共有していた。

 歩行者用の信号が青である事は、確認していた。

 しかし、横から来た車には気が付かなかった。

「危ない!」両親が叫んで、私達三人を巻き込まないように、必死に突き飛ばした。

 その直後、後ろを振り返ると

 両親が笑顔で、(生きて。)

 そう言っていたのかもしれない。


 ***


 当時のことを振り返りたくはない。

 

 私は、ルールを守らない人が嫌いだ。


 私が、中学三年生に上がった頃、姉は高校2年生だった。

 姉は、私達妹の学費、自分の学費を稼ぐため、バイトをしていた。

 交通費がかかるからと、自転車で一時間かけ通学し、少しでも"普通"の暮らしをさせようと……。

 おじいちゃん、おばあちゃんも歳だったが、自分の生活を切り詰めてでも、仕送りをしてくれた。

 とても有難いし、嬉しかった。

 それでも、不幸は続いてしまった。

 ある日の通学中。

 姉は、寝坊してしまった。

 私は、「自転車じゃ間に合わんから、電車で行きーよ!」そう言った気がする。

 姉は「電車はたこーつくから、自転車巻きで行くわ」

 いつもは、寄り道しても余裕で三十分前には着いているらしい。

 その日は、間に合うけど、ギリギリな時間だった。

 警察から電話が来たのは、姉が出て三十分後のことだった。

 姉は、ルールを守っていたと。

 信号無視したガキがいたと。

 ガキチャリが猛スピードで突っ込んできたと。

 そして……

 姉は、生きていると。


 姉からもらった小遣いを使い、姉が運ばれたという病院へ向かった。

 おじいちゃん、おばあちゃんにも連絡はしたが、来てくれるかは分からなかった。


 病院へ着くと、姉の名をいい、家族だと伝える。

 看護師さんは、優しい表情で姉は今、手術中だと伝えられる。

 そして、一命は取り留めたが吹っ飛ばされたあと、車に轢かれたことも聞いた。

 下半身不随になり、今後は車椅子生活を余儀なくされること。

 バイトも当分の間出来ないこと。

 色々聞いてるうちに、私は、涙が止まらなくなった。

 妹の方がしっかりしている。

 私の泣いている横で、悲しい顔をしながら、私の背中をさすってくれた。

 泣きたいのは、姉の方だろう。


 ***


 月日は流れ、姉が家に帰って来る日になった。

 

 それまで、なんどもお見舞いに行こうとした…けれど、お金が足りなかった。

 歩いて行こうともした。

 子供の足では、遠かった。

 すごく…ものすごく遠い世界な気がして……。

 姉からは、「私のことはいーから、二人はちゃんと学校行きな!」そう言われていた。

 もちろん、二人で言いつけを守った。

 私が、ちゃんとしなきゃ!そう言い聞かせ、妹の世話もした。

 友達には、「大変だね…」そう言われた。

 他人行儀だと思う。

 けれど、その言葉が救いになっていたのかもしれない。と今は思う。


「ただいま!」

 姉が元気よく帰ってくる。

「おかえりなさい!」

 涙をたらしながら、強く言う。

「ごめんね……ドジっちゃった!もっと周り、気にしときゃ良かったわ!」

 姉は、元気よく応える。

「そんな……そんなことあらへん!姉貴は!頑張ってる!今度は、ウチが頑張るし!家のことは任せとき!」

「数ヶ月でこんな立派になって!私はうれし~わ〜!ほなさ、動物園!気晴らしに明日行こうや!」

「なんで動物園?」

「一緒に行きたいから!それじゃダメ?」

 泣きながら私は応える。

「ダメじゃない!行こ!絶対!」


 ***


 次の日、快晴でお出かけ日和だった。

 私は、姉の車椅子を押し、妹は、姉の手を握りながら進む。

 ズーラシア。

 私が、ここを選んだ理由は一つ!オカピがいるから。

 どうせ行くなら、オカピが良い!


 動物園に入ると、最初に現れるのは、ゾウだ。

 私達がちっぽけな存在だと気づかされる。

 ライオンやサル、有名所を通り過ぎ、アカカワイノシシのエリアを通り過ぎる。

 そして、待ち受ける待望のオカピ!

 車椅子を押している手を妹に預け夢中になる。

 オカピは、見た目こそ、ウマに見えるが実はウマ科ではない。

 キリン科に属している。

 首長くないのに。

 ふと、後ろを振り返ると、はしゃいでいる私を見てニコニコする、姉と妹がいた。

 幸せだ。

 しみじみと感じる。

 どのくらいいただろう。

 後ろから美味しそうな匂いがしてきた。

 後ろを見ると、姉と妹がなにかにむしゃぼりついていた。

「なに食っとん?」

「近くで売っとった、バーガー」

「近くやったっけ?笑」

「YES、美林からしたら、遠いかも?」

「ほーか。私も買ってくるわ」

 そういうと、バーガーを買いにダッシュした。

 もちろん人がいないところを。

 人がいるところは歩いた。

 とりあえず、姉と妹分のドリンクを注文し、自分の分はバーガーのみ購入した。


 さっ、姉貴達んところへ戻ろう。


 ***


 最後にお土産ショップへ寄った。

 思い思いに、姉妹へのプレゼントを選ぶ。

 

 姉は、私に。

 私は、妹に。

 妹は姉へと渡す。

 

 妹は、南アフリカオットセイのぬいぐるみを購入した。

 なぜかって?アシカ科だから。

 

 私は、妹が好きなカンガルーのキーホルダーを購入。

 そして、姉は、私の好きなオカピのパペットを選んでくれた。

 

「オカピ!あんた好きやろ!大事にあつかってあげや!」

「もちろん!ありがとう!」

 内心、めっちゃ嬉しかった。

 そして、名前を決めた。

 この子の名前は〜!

 オカピー太郎!

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