第二話 屋上の青春
混沌としたホームルームが終わり、授業が始まる。
一限目は、世界史Aだった。
今日やったのは、ヨーロッパの火薬庫、バルカン半島についてだ。
多くの民族や宗教が複雑に交じりあい、いつ戦争が起きてもおかしくない…そんな場所だったと。
***
四限の授業が終わり、昼休憩の時間になった。
真凜とミリにゃんは、授業が終わったと同時に立ち、目で合図を送る。
(今日は、購買行くよ!)
(OK!)
合図を送り終わると、廊下で合流する。
ミリにゃんは、デバイスを着けて誰かに連絡をしていた。
真凜に気がついた、ミリにゃんが口を開く。
「お疲れー!今日は、なに食べる?」
「おつー!今日は〜カツ丼!」
「太るぞ〜!コノコノ〜!」
真凜が笑いながら応える。
「今日は、良いのです!午後の事もあるし」
「そっか〜!忘れてたわ笑」
「ウチが忘れんなら仕方ないにしても、アンタは忘れん時笑」
そんな会話をしながら、購買へ向かう。
購買には、凄い行列が出来ていた。
発券機の待機列。
受け取りの待機列。
「昼時はやっぱり混むねー!」
「しゃあないよ!三限終わりに買いに行けば良かったね」
「そうだね〜」
いつの間にか、券売機の前に着いていた。
後ろに並んでいたミリにゃんが肩を叩いた。
「真凜!でばんだよ!」
はっ!とした表情で後ろを振り返り、頷く。
「ごめんやん、ミリにゃカツ丼でええ?」
「いいよー!」
「二枚買っとく!先受け取り列並んどってー!」
「ラジャー!」
ミリにゃんが軽く敬礼してから受け取り列にかけていった。
(なんか、今日ぼーっとしてるな…)
そんなことを感じながら、券売機でカツ丼二枚を選択し、購入する。二つで千円と激安だ。
待機列は、麺類と丼物の二列ある。
ミリにゃんの待つ丼物の方へ、交換券を握りしめ向かう。
ミリにゃんを見つけ、声を掛ける。
「あとは、頼んだ!」
握りしめていた交換券をミリにゃんへ託す。
「任せとき〜!先、屋上で待っとって」
「りょーかい!」
そう言うと、真凜は屋上へと歩みを進める。
購買から出てすぐ左に階段があり、そこから登っていく。最初から最後まで一段飛ばしで階段ダッシュした真凜は、屋上に着くとこう言った。
「ふー!こんなもんよ!」
本人は、心の中で言ったつもりになっていたのだろう…。
彼には、聞こえてしまっていた。
「おっ!真凜やん!どないしたんこんなところで」
はっ!と思い、口を覆い恥ずかしそうにする真凜に、猫町が聞いてくる。
「なんか聞こえてたん?」
猫町は、考えた末こう応える。
「いや、なんにも!真凜と屋上で会うと思わんくてさ」
「ミリにゃんと屋上でご飯食べる約束しててん」
「ホンマか!俺も呼ばれたで!あと、助信も来るって!」
「さっきデバイスいじっとったの、二人呼ぶためか…」
「なんか、残念そうだね」
少し、照れた様子で真凜が応える。
「そ、そんなんやないし…」
そんな時、ミリにゃんがカツ丼を二つ持って上がってきた。
「お待たせ〜!おっ!あと、助信だけやん!」
「待っとったよ〜ミリにゃ~、カツ丼持ってきてくれてありがと〜!」
「どういたしましてー!さっ!助信来る前に食べやんと」
「せやね〜!」
猫町は、二人のカツ丼を羨ましそうに見ながら
「あ、俺も買ってこないと…忘れてた笑」
「ちゃっちゃといってきーな!」
ミリにゃんが、階段の方を見ながら応える。
「行ってくるわ!」
そう言い終えると、駆け足で階段を下っていく音が、二人が食べている所まで聞こえてくる。
「このカツ丼、サイコーやんな」
「ホンマ!出汁もええし、具材も見た目も味も百点満点や!」
「これで、ワンコインはいかれとーよ!」
「自分らで作ったらこんな味にはならんでな!」
喋りながらも、スプーンを動かす手は止まらない。
止まらないほど美味しいんだ。
屋上で、親友と食べる食事。
学生時代にしか味わえない青春。
それを、私達は噛み締めている。
「ご馳走様でした!は~お腹いっぱい!」
「相変わらず、食べるの早いな〜ミリにゃ」
「気のせいとちゃう?真凜が遅いだけやん!」
「そんなことあらへんし、よく噛んで食べてるから、満腹中枢は刺激されるし、いい事だらけよ!」
そんな会話をしていると、階段を上ってくる二人の足音が聞こえてくる。
「お待たせ〜!助信と購買で合流してさ!一緒に来たわ!」
「待ってたよ〜二人とも!」
ミリにゃんが嬉しそうに応えた。
「ごめんね、待たせちゃったね」
これだからイケメンは困るとばかりに、ミリにゃんは顔を背ける。猫町は、真凜のカツ丼が残っているのを見ながら少し"いじわる"する。
「あれ〜?まだ真凜食べ終わっとらんやん!」
「うるさいアホ町!」
真凜は、頬を赤らめながらそっぽを向いて残り少しのカツ丼を食べる。
ミリにゃんが、そう言えば!と言わんばかりに手を叩き男子二人に聞く。
「二人は、なに買ってきたとー?」
男子二人は目を合わせ、ニヤニヤしながら同時に応える。
「カツ丼!」
「オマエら真似しよったな〜!」
「美味しそうだったからさ〜!助信もそうやろ?」
「そうだね!」
食べ終わった真凜から「ご馳走様でした!」と聞こえたと同時に、男子二人は、「いただきます」と言い、食べ始める。
(男子が食べる量としては少ないけど…私達が食べるとちょうど良い量だから、食べ盛りの男子達には少し物足りないよな〜!)と感じながら真凜は二人を見つめている。




