表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
82/83

78. 隣国からの依頼と毒研究チーム

リシュネーゼ帝国は、“研究国家”として知られ、

日夜生み出される発明や薬品が、各国へ輸出されることで繁栄している。


特に冒険者の国、マグリル王国では、

リシュネーゼ帝国が開発した魔導具などにより、

冒険者達の生存率が向上している。


帝国民にとって、「研究こそ国の誇り」

という価値観が根付いており、その誇りを体現する者たちが結構いる。


そう、いわゆる――『研究バカ』。


研究に没頭しすぎて帰ってこない者、

寝食を忘れて実験を続ける者、

気づけば三日徹夜している者。


周囲は大変苦労するが、

彼らが大きな成果を出すのもまた事実。


そして今日も、

そんな“天才であり厄介な存在”が動き出していた。


***


ここは、毒研究チーム。


今回の依頼は、

隣国マグリル王国から密かに届けられた“混合毒”の解毒薬作成。


透明な液体が2本。

どちらも単体では“滋養に良い薬”であるが、混ざると毒になる。


マグリル王国からは、この混合毒の解毒薬が見つかっておらず、

現在、その毒に苦しんでいる者がいる為、解毒薬を早急に作ってほしいという依頼だそうだ。


毒は専門分野だ。

どこにも負けるつもりはない。


「古い書物の“薬の飲み合わせ”に載っていたらしい」

という情報も添えられていた。


(古い書物の薬の飲み合わせ……ねぇ……)


この毒研究チームは、リーダーを筆頭に、

研究の中心となる、天才双子研究者、”キサノ”と”ミサノ”という男女の双子と、

その2人のサポート隊4人の、計7名で稼働している。


この天才双子は、考えることも同じで、

お互い増長し、勝手に盛りあがって、暴走していく。


その暴走がいい方向に行くこともあるが、そうばかりとは限らない。


「この毒、一回受けてみようか」

「そうだねー、この毒がどんな症状をひき起こすのか、きになるね」


そういう方向に行こうとした時、サポート隊が出動。


「いやいや、現在、解毒薬、無いって言っているよね!」

「解毒薬作れなかったら、死んじゃうよ!」

「っていうか、自分で試すな!!」

「どんな毒かを味わいたいとか、毒に魅入られ過ぎだ!」


もはや、サポート隊が言う定番のツッコミになりつつある言葉たちだ。


そして案の定、今回もこの2人は、混合毒に興味を持った。

「すごいね、これ。1本1本は、滋養にいい薬だって」

「なんでも、1本1本別々に飲ませても、体の中で毒になるらしいよ」

「こわーい。それじゃあ、飲ませる前に、薬を押収して調べても、

毒じゃないから、証拠にならないね」

「だけど、ずいぶん手の込んだ事を考える人がいるんだね」

「執念深いね!」


危険な方向に向かっていないならと、

2人の会話をよそに、サポート隊は、古い書物を探す。


研究の資料集めもサポート隊の仕事。


ここは毒の研究室、書庫には毒に関する書物なら、何でもそろっていた。


サポート隊がその書庫を漁り、問題の古書を見つけてきた。


「ありました!薬の飲み合わせ注意のページです!」


それは、古い書物の、薬を扱う者へ書かれた、

薬の飲み合わせ注意のページ。


だが――


「解毒方法が……載ってない……」

「なんで一番大事なところがないのーーー!!」


ムキーっと怒るサポート隊たち。


そして、その横でわくわくし出す、キサノとミサノ。


リーダがチームに一喝いれる。

「遊んでいる暇はない!

依頼主は”早急に”と言っている。

まずは原料が書物と一致するか確認するぞ!」


『はい!』

メンバー全員で気合を入れて返事をする。


キサノのミサノ、それぞれ、解析魔法陣の上に1滴ずつ、薬を落とす。

「「解析開始」」


魔法陣が輝きだし、

空中に成分情報が浮かび上がる。


この魔法陣は、

帝国全体で登録・管理している情報にアクセスし、

照らし合わせ、原料を特定する魔法陣。


これにより、原料の特定の時間を大幅に減らすことが出来る。

帝国最大の自慢のシステムだ。


結果、書物通りの植物が使われていた。


リーダーが解析結果をメモし、次の解析を行う。

「では次、混合毒にして解析だ」


キサノの解析魔法陣に混合毒をのせる。

「解析開始」


魔法陣が輝き、結果が浮かぶ。


リーダーは解析結果を見て驚く。

「……一致する情報が……ないな……」


(飲み合わせ注意であっても、

書物にのっていたのだ、なにかしら情報があるかと思ったが、なかった)


キサノも、もとの2本の薬の結果と、

2本を混ぜた後の結果の変わりように驚いた。


「すごい変化ですね。善と善で悪になるなんて」


ミサノも戸惑ていた。

「これは……どうすればいいんですかね」


サポート隊が追加情報を持ってくる。


「過去にも何度か、

この混合毒の解毒剤作成の依頼があったようですが……

全部“研究一時保留”で終わっています」


リーダーもその現状を聞き、頭を抱えた。

「……やはり厄介な毒だな」


その後も、双子は思いつく限りの解毒薬を調合したが、

どれも毒成分を除去できなかった。


「やっぱり、飲んでみるしかないんじゃないか?」

「症状から薬となる原料を探した方が……」


「だから、やめろって……!」


(依頼は“早急に”だったが……

この毒は過去に何度も断念されている。時間がかかるな……)


そこで、リーダーは決断した。

「今回の依頼はこう返す。

『この毒の解毒薬は現在存在せず、

あらゆる素材で試したが効果はなく、

過去にも複数回作成を断念している。

解毒薬作成には時間を要する』

……と」


帝国は、申し訳ないが、と前置きした上で

その結果をマグリル王国へ伝えた。


だが――

毒研究チームは諦めていなかった。


それどころか、リーダーは燃えていた。

双子も燃えていた。


「必ず、この毒の解毒薬は俺らの手で作るぞ!」


その言葉に、双子もサポート隊も、力強くに頷いた。


研究室の灯りは、

今日も夜遅くまで消えることはなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ