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79. マグリル王城会議とアレクの万能回復魔法

リシュネーゼ帝国からの、解毒薬作成の結果を受け取った。


「そうか、作り出せなかったか……」


結果を聞いた国王は、会議室へ向かった。


会議室――


マグリル王、宰相セドリック、シルヴァラント領主レオンハルト、アレク達の護衛騎士バルド


この5人で、これまでの情報の再確認と、最新情報の共有を行うことにした。


マグリル王が、席を立つ。

「現在、セイナ王国の件は、すでに皆も知っている事だろう。

情報もどんどん入ってきている。

最新の情報をおのおの把握しておいてほしい」


そこから宰相から、これまでの状況説明が始まった。


「まず……アレク君とヒナちゃんが“愛し子”である件。

アレク君は回復、ヒナちゃんは黒いオーラの浄化。

この情報は、絶対に外に漏らしてはなりません」


全員が深く頷く。

この一点だけでも、国家が揺らぐ。


「次に、セイナ王国の商人がフォレットを探っていた件。

これは、どうも黒いオーラに取りつかれた冒険者が冒険者ギルドに運び込まれる途中を

セイナ王国から来た商人に見られたそうです。

ちなみにその冒険者は、ヒナちゃんにより浄化、アレク君により回復しております。


その後、第三王子ディアス殿下が銀翼ホームを強襲。

神獣フェンリル様がアレク君とヒナちゃんを保護し、現在この王城にいらっしゃいます」


レオンハルトは苦い顔をする。

「……あれは本当に驚いたし、幼子の心に傷が残らなければいいが……」


宰相は淡々と続けるが、内容は重い。


「ディアス殿下は現在、牢獄におります。


しかし今回、彼は、彼なりに国を救おうとして暴走したものでした。

彼の妹姫は“謎の病”で現在危険な状態であり、

過去には弟王子二人も同じ病で亡くなっているそうです。

その為に、アレク君を攫ってどうにかしようとしたらしいです」


レオンハルトの拳が、机の下で静かに震えた。


「そして、独自の調査により、

その“謎の病”の正体は、混合毒であることが判明しました。


セイナ王国の中枢の古狸ども五人が王国乗っ取りを画策し、

侍女長を囲い込み、侍女と主治医を脅し、

ディアスの弟王子2人を混合毒で毒殺し、

さらに国王を追い込むために、

今度は姫様に薬を飲ませているそうです」


会議室の空気が、さらに重く沈む。


「押収した薬は帝国に送りましたが……

『解毒薬の早急な作成は困難。

引き続き解毒薬の作成に努める』とのことでした」


国王は深く息を吐いた。


「……姫は、もうかなり悪化しているそうだ。

時間がない……。

……どうにかして救ってやれないだろうか。


同じ父として、セイナ王の気持ちは痛いほど分かる。

子や孫が苦しむのを見て、何もできぬほど辛いことはないだろう……」


国王は体を小刻みに震わせ、両手を握りしめ、

会議室は沈黙した。


その沈黙を破ったのは、護衛騎士バルドだった。


「えーっと……その件で、ちょっと“びっくりする話”がありまして、

先日、アレクくんが、自分の回復魔法の金の光で、

解毒もできるのではないかと、検証の為、治療室へ行きました。


そこにいたのは、

変異個体から毒を受け、通常の解毒薬でも解毒できず、

全身の痛みで苦しむ瀕死の騎士でした。


本人の許可を得て、アレクくんが回復魔法を行ったところ、

どんなに手を尽くしても解毒できなかった毒を除去しました」


「毒を……除去した……?」


「はい。

それどころか、体の傷も、毒で傷ついた体内も回復させ、顔色も戻り、

現在は騎士団に復帰しております。」


会議室がざわめく。


「なんと……」

「金の光は、解毒不可能と諦めていた毒まで除去できるとは……。すごいな」

「これが愛し子の力か……」

「素晴らしいな……」


そして、バルドは続ける。


「また、もう一つありまして、

アレク君が、遠距離の味方への回復手段が欲しいと、

騎士団の練習場にて、”治る玉”というのを開発しました。


それを、傷を負った騎士に向けて風の力を借りて投げ、

当てて傷を治すという訓練もしていました。


はじめは、自分の腕力だけで投げようとして、

ぽとっ……と落ちました。


それがあまりに可愛くて、騎士団全員が一瞬だけ戦闘を忘れて悶えていましたよ。

本人は、一生懸命言い訳してましたけどね、それがまた可愛らしかったです。


その後、フェンリル様にアドバイスを貰い、

風の力を借りて、患者へ”治る玉”を当てることができました。


騎士団員もはじめは、

訓練途中に急に光の玉が自分を目掛けてくるものだから、

すごい怯えてましたけどね。


慣れてしまえば、その有用性を感じたようで、

『救世主だ!』なんて言っていましたよ」


宰相がくすっと笑う。

「”治る玉”か。名前がまた……かわいいですね……」


国王も頷く。

「そうだな……素直な名づけだね……アレクくんらしい……」


レオンハルトは冒険者の目線で言う。

「しかし……遠距離回復。

それは魔物との戦闘中に、命を落としそうになっている仲間を

遠距離からすぐに回復させることが出来るということか。」


参加者が、うんうんと納得している。


バルドが何かを思い出したように手をあげる。

「あのーー。

その件で、気になったことがあるんですが……。


”治る玉”を、地面にぽとっと落ちちゃったところです。」


「ん?」


「”治る玉”は、地面に落ち後も、割れずに、玉の状態のままでした」


まわりが静かになる。

それぞれ考えは始める。


「落とした”治る玉”をアレク君は手で拾っていました。

それを思い出して、思ったのです。


地面をに落ちても玉の状態を維持しているのならば、

アレク君意外にも”治る玉”を持てるのではないか?と」


「「「「…………」」」」


「もし……持てたら……

”治る玉”は、アレク君の金の光が伴う回復魔法で、毒の除去も出来る。


で、あるなら、姫を治すのは、

潜入する者が”治る玉”を持っていけばいいのでは……と」


ガターン!!

ガタガタッ!!

ダーン!

ガタン!


参加者勢いよく立ち上がり、

バルドを指さす。


(全員が一瞬固まる)

「…………」

「「「「それだーーーーーー!!」」」」


バルドはびくっと体を反らし

思わず構えてしまった。


国王が顔を高揚させる!

「アレクの回復魔法の”治る玉”訓練に付き添い、

アレク以外でも触れられるのか、玉の状態を維持できるのか、

持ち運びが出来るのかの検証を行うこととする!!


それにより、今後の作戦が大きく変わってくることだろう。


よし!では、次の騎士団訓練の際、

私も一緒に行って”治る玉”を投げてみることにしよう!」


宰相が肩を震わせる。

「自分が直に触ってみたいからといっても、

初回はだめです。

貴方は国王なのですよ。

何かあったらどうするのですか」


国王は宰相をにらむ。

「いいではないか!

悪いものではないのだし。

何も起こらぬだろう」


「だめです。

それに、騎士達が緊張して訓練になりません。

今回は、護衛騎士のバルドとレオンハルト様にお願いいたしましょう」


「むむむ。あいわかった……

”治る玉”が持てたら、後日、私も試しに行く」


「わかりました。

それなら良いでしょう。2人とも、頼みます」


「「承りました!お任せください」」


国王が、佇まいを整え、話に戻る。


「もし、それができるようになれば、

事前にセイナ王に、作戦内容を連絡しておき、

当日、セイナ王に動いてもらうことにしよう」


宰相も頷く。


「そうですね。

国の重鎮の古狸どもの捕縛は、

セイナ王国自身が行わねばなりません。


他国が踏み込めば、

国際問題になりかねませんからな」


レオンハルトは、もうそこまで調査が進んでいるのかと、

宰相へ現在の状況を聞く。


「もう証拠は揃っているのでしょうか」


宰相は書類に目を通しながら答える


「それにつきましては、揃っております。


薬を用意した者の特定、

その古い書物から毒の情報を得たようです。

それが真実かの確認の為に、

その古い書物を特定し、その薬の成分調査しており、一致しているそうです。


また、その薬の原料の手配や流通に携わった者と、関係者の証言、証拠。

原料から薬を生成している場所の特定と証拠。


国内の中枢機関の乗っ取りの手段と証人と証拠。

横領の証拠。


亡くなった弟王子の元侍女と主治医が、

脅されて協力させられたとの証言があり、

この一覧の犯行の手口も明らかになっております。


その二人と、現在の妹姫様の侍女の協力も得られることになっています。


古狸たちが、犯行の為に取り込んだ侍女長の部屋からも薬を発見しておりますので、

侍女長もいつでも捕らえられます。」


国王は満足げに息をつく。


「あいわかった。

皆も、これで状況を把握してくれたと思う。

一気に隣国を苦しめている元凶を叩きのめそうではないか!」


宰相は、くぎを刺すのを忘れない。

「隣国の王が、先頭に立って行うので、

マグリル王はおとなしくしていてくださいね」


「……わかっておる」


こうして、会議は終了した。

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