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6. ふたりの転生

「しかし……」


セルシオスはぐぬぐぬと唸りながら、赤ん坊の八重を凝視し続けていた。


「それにしてもこの赤ん坊、魔力が強すぎるな……。

私の力のせいかな。やはり」

「だろうな」

大樹はきっぱり答える。


セルシオスは少し肩を落とした。

「大樹君と同じくらいあるな」


セルシオスは続ける。

「だが、セリシアに転生したら、この赤ん坊の魔力の大部分は大気に溶けていくだろう。

セリシアはそれが目的だったのかもしれないな。

……それにしても、ずいぶん可愛い子だな。何かの加護がついているのかもしれない」


「それじゃ、この赤ん坊は普通に暮らしていけるのか?」

「いや、それでも多いな。もう少し減らしておきたい。

でないと、精霊や聖獣は過保護になりすぎて拉致してお持ち帰りされるぞ」


「……え?」


「魔物もその力に引き寄せられ、周辺は魔物だらけの危険地帯になり、

あげく“自分のだ”と取り合いになるぞ」

(魔物同士の取り合いって……無事でいられるのか?怖すぎるんだけど)


セルシオスはさらに続ける。

「もちろん、人間もこの赤ん坊の力にあてられるだろうな。

善人ならまだしも、悪人だと……な」

「この赤ん坊、不幸一直線じゃん!

転生後くらい、愛されて楽しく生活させてやれないのかよ。

何か方法はないのか!」

大樹は思わず声を荒げた。


自分が原因の一端を担っているという罪悪感もあるが、それ以上に――

(この子には、笑顔の絶えない幸せな人生を送ってほしい)


セルシオスはうなずく。

「まあ、セリシアに転生後、その人を引き付ける力を自動で抑えるスキルを追加しておこう。

……だが、もう一手欲しいな」


大樹は考える。

前世でよく読んだ物語の“定番”が頭に浮かぶ。

「こういう場合、やっぱり守護者的なのを付けるとか?」

「そうだが……守るにしても、この強い力に耐えられなければな」


セルシオスはうーんと唸っていたが、

突然ぱぁっと顔を明るくして、手をポンっと打って俺をみる。

「いるじゃないか!!」

「どこにいるんだよ!?」

「ここにいるね。大樹君だね」

にっこり。


(俺かよ)


たしかに、今のところ大樹は八重の力の影響を受けていない。

「たしかに今の俺に影響は出てないけどさ……」

「君にも、この赤ん坊の力の自動で抑制できる力を付与しておこう」

セルシオスは満足げにうなずく。


「これで問題はなかろう。

これで“ちょっと魅力的な子がいるなー”程度で済むだろう」

「……程度で済むのか?」

「ただ、それでも……ただでさえこんなに可愛いんだからな。

成長するまでは、あまりこの子から離れないようにしてあげてくれ」


「わかった。

たしかに、力うんぬんの前に可愛い子だもんな。守ってやらないとな」

大樹はふっと笑って、八重の頭をなでる。


「むふっ。おにいちゃ……」


(大樹の手がピタッととまる。この可愛さはやばいわ!)

「そうだね、やばいね」

2人して、うんうん、うなずく。


「あと、心配なことがあったらまた話聞きたいけど……会話できるようにできそうですか?」


「神殿にくれば、私の像がある。

そこに声をかければ、会話はできよう」

(なんとかなってよかった。

結局俺も行くことになったけど……まあ、いいか)

そんなことを考えていると、


八重の体がふわりと輝き始めた。

それを見て、セルシオスは力のない笑みを浮かべた。




「セシリアが相当この赤ん坊に来てほしくて焦れているようだね。

もう転生準備に入ったようだ」

セルシオスが光る八重を見ながら言う。


「私は創造神。世界は私の子供と同じだ。

子供が欲しがっているのだから親の私は協力してあげないとね」


「俺たちの意思は?」

「……さて、準備に入ろうか!」


(胸を張って言うが、こちらの意思はまるっと無視しやがった!

まあ、今回はしょうがない。セルシオス神、残念さがにじみ出ているぞー)

そんなことを気にせず、セルシオス神は話を続ける。


「セシリアには精霊王がいてね。

精霊王を先頭に、大精霊や精霊が環境を整える役目を担っているんだ。

彼らがうまく動いてくれるだろう。大丈夫だ」


「……わかった。じゃあ、俺も行くから、なんとかっていう力をくれよ」

「わかった!」


そして、セルシオスは姿勢を正す。

「君は将来、この世界で何をしたい?

どんな職業に就きたい?希望があれば教えてくれ」


大樹はうなずき、真剣に答える。

「この子を守る力が欲しい」


「俺は戦闘なんてない世界でくらしていた。

そのうえ、この世界初心者で戦うのも難しいだろうし、

保護者がすぐ見つかればいいけど、そうでないなら魔物と戦う力も必要になるかもしれない」


「でも、小さい子連れて行くのは難しい時もあるだろうから、

魔法とか戦闘のスキルもほしいけど、

飯のタネになりそうな技術も欲しい。

魔法や錬金術、魔道具師みたいなのもいいな」


「何か作れれば生活できそうだし。

あと、回復。

この子はまだ小さいし、体調崩すことも多いかもしれない。

医療技術も心配だし」


「あぁ、それと……体小さいし力ないから、定番の収納も欲しい」


言えば言うほど不安が増していく。

(自分一人ならまだしも、こんな幼子を連れてだからな……

貰えるものは貰っておこう。あって困ることもないだろう。)


そんなふうに考えていると、八重の体の輝きがさらに強くなった。

(わ、なんか今にも転生しちゃいそうだけど、大丈夫か?)

セルシオスはうなずき、急ぎながら言う。


「欲しいスキルも分かった。あれと、これも付与しておこう。

大樹、今は時間がない。確認はセリシアに着いたら行え。


自分のステータスは、名前などの身分とスキルだけ見れる世界になっている。

これは私がなんでも数字化してそれを基準にしてほしくないからだ。


ただスキルは努力したらスキルが得られることもある。

それを知ってほしい為に、スキルだけは各自で見れるようにしている。

もちろん、可視化して見せることも可能だ。


だから、人の目を気にせず、のびのびと生きてくれ。だか、精進は忘れないように」


そう言うと、セルシオスから淡い優しい光が大樹へ飛んできて、ふわりと当たった。

(最初からこんな優しい光だったら、逃げなかったかもしれないのにな……)


光が馴染んで消えた瞬間、大樹の体が盛大に縮んだ。


「ち……!!ちぢんだぞ!なんで!?」


「スキルをたくさん使える体にするにも神聖力が大量に必要でね。

与えたられる力には制限があってそれ以上は与えられないんだ。

で、その神聖力の量では足りなかったんだろうな。

そこの赤ん坊のように、自らの魔力を使用した状態になったな。すまんすまん」

セルシオスは軽く笑って手を振る。


「先に言えよー!

あれ?おれ、なんしゃいくらいになった?」

舌が回らない。

なんか頭もぼーっとしてきたぞ。


「んー、鑑定には3歳って書いてあるね。

ずいぶん可愛らしい姿になったな!!」


「うーん。ねえ、セルシアスかみしゃま、

なんでなおじようにちぢんだのに、

おれのほうが、1しゃい、おおきいんだ?」


と、頭をよしよししてくるセルシオス神。

大樹はそれをうっとうしそうに手で避ける。


「まあ、あの子の魂が弱っていたことと、

君の魔力量がすごく多いということだ。

まあ、小さくなっても問題ないじゃないか。

こんなに可愛いんだから」


と、頭をよしよししてくるセルシオス神。

大樹はそれをうっとうしそうに手で避ける。


「スキルいっぱいつけたから、それらをうまくつかっておくれ。

あと、お守り役もつけておくから。安心してくれていい!」


またも、大樹の頭をよしよししてくるセルシオス神。

大樹もまたそれをうっとうしそうに手で避ける。


「ほんとにだいじょぶかよー……」

そろそろ転生の時が近いと感じる。

セルシオス神は姿勢を改め、大樹に向き直る。


「悪かったな。今回いろいろ巻き込んでしまった。

結局その後始末も丸投げのようになってしまったな」


「けっきょく、セルシオスしんさまの、おもいどおりに、

なっちゃったのはしゃくだけど……。

こんなにかわいい、いもうとができたとおもえば……。

それはそれで嬉しいよ。

幼児になっちゃったけどなっ!!」


一応、苦情は忘れない。

「そうだねー」


またもや、大樹の頭をよしよししてくるセルシオス神。

大樹もあきらめず、それをうっとうしそうに手で避ける。


「このこ、まもるから。

何か困ったときはお願いします」

「あい、分かった」

セルシオスは「まかせよ」と返事をし、

そのまま八重にも必要なスキルと、これ以上小さくならないように神聖力を付与する。


そして、八重のスキルを付与し終えた瞬間、

八重の体はさらに強く光り始めた。


セルシオスが急いで振り向く。

「大樹君、八重ちゃんが転生カウントダウンだよ!

違う場所に転生しないように急いで八重ちゃんにくっついて!!」


「!!わ、わかった!!」


2歳の妹になる子をそっと抱きしめる3歳児。

「まもってあげるからなー」

大樹は優しく八重の頭を撫でた。


「なんという微笑ましい光景……なんか元気出てきた」

顔を赤くしながら、セルシオスは手を振って2人を見送った。


***


その後、静寂が戻った狭間の空間で、

セルシオスは青空を見上げながら、ようやく一息ついた。


そのとき――


「セルシオス!!」

空の上から、重く響く男性の声が降ってきた。


「げっ!!」

セルシオスは一瞬で逃げ腰になる。

「げっ!!じゃない!」

声の主は、明らかに怒っていた。


「またお前か!

今度は何をやらかしたと思えば、他の神の領域から人(魂)を攫い、

あげくに勝手に何やらやったようだな!」


セルシオスは普段は気品ある“おとなしい神様”に見えるが、

実は界隈では有名な問題(神)だった。

セシリアを良くしたいという気持ちは本物なのだが、

考えるより先に行動してしまう“残念な習性”を持っている。


「あぁ!申し訳ありません!

大樹君の力があれば、きっとセリシアは良い方向へいくと思ったのです!

でも、最後は大樹君が自ら転生を了承してくれました!

八重さんの方は……なりゆきです!」


セルシオスは上級神にガミガミ怒られながらも、

八重のことを思っていた。


(来世こそ、あなたの望む通り、

人々に愛されて、

今まで叶わなかったことをたくさん叶えてほしい……)


「よい来世を。

君たちの成長を楽しみにしているよ……


思わず、2人の幸せを祈る。

「……祈りは終わったか?さ、行くぞ」

「へ?」

セルシオスが青い顔をして振り向く。


「へ?じゃない。

やらかしたんだ。説教だ。

大樹君がいた世界の上級神のところに行くぞ」


セルシオスはぶるぶる震えだした。

だが、もう遅い。


「あ、あの、ちょ……」


言い終わる前に、上級神に腕をつかまれ、

強制転移させられていった。

自業自得である。


――こうしてセルシオスはお仕置きを受け、

八重は、眠っているうちに、お守り役としていつも望んでいた「兄」(大樹)を獲得したのだった。

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