61. 朝の習慣と洋服屋さん
「朝飯だぞー」
フリードが起こしに来て、また新しい一日が始まる。
「ん~。あと5分」
「うにゃ~。う~。くぅー」
伸びはするものの、その伸びたままの姿でまた寝る幼児2人。
フリードはため息を一つはいて、
「朝ごはん、全部食べちゃうぞ~!」と大きな声で言うと……。
「だ~め~~~~!」
起きたのはヒナだった。
その声で起きたのはアレク。
「ん~。おはよ~ふりーど」
「はい。おはようさん。
着替えて、ダイニングにこいよ」
そう言って出ていこうとすると、
ヒナがばんざいをする。
フリードがくすくす笑う。
「あー。ギルドでは受付嬢達が交代で着替えさせてくれたんだったなー。
はいよー。わかったよー」
2歳のヒナは”朝飯たべちゃうぞー”で一瞬起きたが、またうつろうつろしてきた。
「ふりーど、おれ、やろうか?」
フリードはアレクの頭を撫でた。
「大丈夫だ。ヒナの方はやっておくから、アレクは自分で着替えられるな?」
「うん!できるよ」
そういうと、アレクは着替え始める。
ヒナの寝巻はワンピースみたいなものなので、
ばんざいのポーズをしていると、そのままスポッと脱がせられた。
そして、洋服のワンピースを上からスポッと着せればOK。
着替え終わるとヒナのポーズが変わる。
手を横に広げて、”はい!ぎゅ~!”のポーズ。
ギルドの受付嬢たちが毎朝やっていたため、完全に習慣になってしまっていた。
フリードは、しょうがねぇなぁーとばかりに近づくと、
ヒナが、ガバッとホールドしてきて、びくっとするフリード。
自分が罠にでもかかったような気分だった。
ヒナは『ぎゅーは?』と上目遣いでおねだりしてくるので、
フリードは「はいはい」といって、ぎゅーっとする。
「うきゃ~!」
ヒナは実に楽しそうである。
フリードもそのはしゃぎように楽しくなってしまい、
今度はアレクに手を広げて、”カモン!”な姿勢をとる。
アアレクは一瞬迷ったが、そっとフリードを避けてダイニングへ向かった。
すると、「はっはっは。アレク、あまいな!!」といい、
フリードが横からアレクをガバッと抱き上げて、「ぎゅ~~~~だ!」
と左右にふりふりしながら、アレクをぎゅ~っとする。
「うにゃ~!!」
胸の奥がくすぐったくて、思わず変な声が出してしまうアレク。
そして、フリードはそのままアレクを抱きかかえてダイニングに移動した。
後ろから、ヒナが、
「ひなも~~~~~~!!それやって~~~!!」
と走ってついてきた。
ダイニングに着き、やっと解放されたアレク。
「ちょっと面白かった……」
顔を赤くして、はぁはぁ言っているアレク。
後ろからヒナにしがみつかれているフリードが、
今度はヒナを持ち上げて、左右ふりふりしてぎゅ~をする。
ヒナは大喜び。満足したようで何よりです。
みんなで朝食を済ませてから、
今日は何をするかを話した。
そこで、洋服の話がでた。
実は、アレクとヒナが今着ている洋服とパジャマは、冒険者ギルドの受付嬢が用意してくれたものだった。
洋服の方は2着ずつ急いで用意してくれたもので、交互で使っていた。
依頼も終わったことだし、子供服を買いに行こうということになった。
アレクとヒナと、一緒に行くのは、フリードとクロム。
帰りに幼児達が寝てしまったことを考えると2人付き添いが必要だろうと言って、
フリードとクロムが立候補した。
さっそくパーティーホームを出て、中央通りと言われる冒険者ギルドがある通りに出る。
この通りにはいろいろなお店がある。奥に行くと、広場があり、露店も出ている。
その中央通りにある、洋服屋に入った。
すると、すぐにお店の人が出てきた。
「あら、フリードくんにクロムくん、いらっしゃい!」
その声にはじめに反応したのがフリード。
「ミミカさん、おはようございます!」
クロムは、挨拶をして、今日の要件を話す。
「ミミカさん、おはようございます。今日はこの子たちの洋服を買いに来ました。」
アレクとヒナはフリードの右足と左足に後ろから抱き着いて
左右からひょこっと顔を出している。
「ほら、おまえらも挨拶しような」
フリードがそう促すと、まずアレクがフリードの横にちょこんと立つ。
「お、おはようごじゃいます!ふ、ふりーどです!おれたちの、ふく、かいにきました!」
アレクの姿をみて、ヒナもフリードの横にちょこんと立つ。
「おはよ……ごじゃます……。ひなも、かいにきまちた!」
そんな姿をみたリリアさんが目を細くて柔らかく微笑む。
「あらあら、なんて可愛いの。それに、ちゃんとご挨拶出来て、偉いわね~~。
まかせて~!可愛いの選んであげるわ!」
と、意気込む。
「あの。おれ、かっこいいのが、いい!」
「ふふっ。男の子だもんね。わかったわ!」
アレクとヒナは挨拶後も、ずっとミミカさんの頭から目が離せなかった。
頭にネコの耳がついていたからだ。
ミミカさんは、頭に可愛いネコ耳、腰にはふわふわの尻尾がついていた。
あとは人間と同じ。この街にも獣人は結構いる。
それに気づいたフリードが説明してくれる。
「ミミカさんは、獣人だよ。冒険者にもいるだろう?」
「うん。ぼうけんしゃにも、いるけど、こんな、かわいいひと、いなかったよ」
「みみかしゃん、かわい~」
褒められて、ミミカさんの猫耳がぴくっと動いた。
そう。冒険者にいる獣人は、たくましい獣人。女性の冒険者の獣人もいたが、
装備で見えなかったり、露出多めのお姉さんな感じのは見たことあるが、
普段着で、普通に可愛い獣人は、はじめてみたのだった。
「あら。かわいいだなんて。いい子ね」
ミミカは、赤くなりながら、詳細を聞き始めた。
「うんうん。
普段着数枚に、銀翼のパーティーと一緒に遠出に行くかもしれないから、
子供用の装備と、フード付きコートも欲しいと。わかったわ」
ここの洋服は、子供用の装備も置いてある。
通常の防具屋だと、大人向けの者しかない為、
子供用は洋服屋で扱っている。
ヒナの普段着は、明るい薄いピンクと、黄色と、薄いオレンジ色のワンピース。
所々にレースやリボンが付いている。そして下着に靴下と靴も。
アレクの普段着は、短いズボンを勧められたが、拒否して、七分ズボンと2枚、上にはシャツ2枚とチョッキ1枚。
そして同じく下着に靴下と靴も。
そして、銀翼のパーティーと遠出をする時用の防具は、
2人して長ズボンにブーツ。これは、森に行ったときに、足を守る為。
上着は、ヒナは可愛いチュニック。
アレクは模様がかっこいいと気に入ったTシャツのようなもの。
基本子供用の防具は、重いものを着せるわけにもいかず、
厚手すぎると重さもあるが、熱がこもりすぎて体調を崩しやすい為、
防御力向上の付与がされている物になる。
そして、最後の仕上げが、マント。
これには温度調節の付与と、防御力向上の付与がされている。
子供用は色が豊富で、ヒナはピンクに飛びついた。
アレクは、黒っぽいのを選んだが、せめてこれにしろと、紺色のマントになった。
そこで、アレクが防具とマントを羽織ってくるくる回っているヒナをじっと見て思う。
(ファンタジーってさ、やっぱり小さい女の子には、猫耳マントじゃないの?
ヒナに着せたら絶対可愛いと思うんだよなー。ないのかな?)
そこで、アレクはミミカさんに聞いてみることにした。
「ミミカさん、ミミカさんのような、かわいい、
ねこみみがフードについた、まんとはないんですか?」
リリカが自分の耳を触って、くるくる回っているマントを着たヒナを見る。
「ねこみみ付きマント?」
「はい。ヒナにとっても、かわいくて、にあうとおもうんです」
「……子猫?なにそれ、可愛い!……
ちょっとまって、ちょっとまって、ちょっとまっててね~~~~~!」
と、いって、ミミカさんが店の奥に消えた。
フリードとクロムがアレクが提案したマントを着たヒナを想像する
「確かに似合いそうだな。というか、性格的にもぴったりな気がする」
フリードは想像しながら笑っている。
「確かにね。そんな子供向けのマント作ったら売れそうだね。
まあ、獣人差別のないところならかな?」
クロムも可愛いと思いつつ、獣人差別があるところだとダメかなーなんて考える。
聞いていたアレクが提案する。
「ならさ、ふつうに、その辺にいるどうぶつとか、かっこいいまじゅうとか、
りおんにいちゃんみたいなしんじゅうの、デザインにすれば、いいんじゃないの?
おとこのこは、かっこいいほうが、すきだとおもうし」
「それもいただいた~~~~~!!
奥から声が聞こえる。
「ミミカさんのやる気に、火がついちゃったみたいだね。
どうしようか。お会計できないし、また今度来ようか……」
クロムがそんなことをいうと、奥からバタバタッと走ってくる音が聞こてきた。
「お、おまたせしました!!
ヒ、ヒナちゃん!ちょっとこれ、着てみて!」
取り出したのは、ふさふさ耳が着いた、真っ白なマントだった。
首の部分は、太めだがあまり主張しすぎない薄いピンクのリボンがあり、
マントを羽織ったら、ちょうちょ結びをする。
マントの裾には小さめのレースが縫われていた。
(な、なんだこれ!めっちゃ可愛いじゃん!!ヒナにすごい似合ってる。
それに、すごい喜んでる)
そう。ヒナは大はしゃぎしていた。
しきりにフードについている耳を触り、鏡の前で可愛いネコポーズをとっている。
フリードもクロムも大絶賛して騒いでいる。
「なにこれ、めっちゃ可愛いじゃん!ヒナにも似合ってるね!」
「うん。これは可愛いね!」
2人とも、アレクをみて思う。
(これも……アレクの前世の知識なんだろうな)
すると、ミミカさんが奥にもう一度行き、もう一着のマントを持ってきた。
そして、アレクにかける。
それは、フェンリルっぽい耳が付いた、アイスグレー色のマントだった。
こっちは首元はボタンになっていて、裾は白色でぐるっとかっこいい刺繍がされていた。
「あ、あの、おれのは……」
恥ずかしいからいらないと言いたいけど、大人3人でキラキラした目でみるものだから、
アレクも気に入ったふりをした。
アレクは耳を触られないように、そっとフードを押さえた。
「にあうかな?」
一応言ってみる。
「男の子用のも作ってみたけど、これもなかなかね!
アレク君!ナイスアイディアだわ!!マントは両方とも仮縫いだから、
出来上がったら連絡するわね!!
それでね、マントについては料金はいらないわ。
もちろん、付与込みでね。
でもね。その代わりにお願いがあるの!!
これを着て、街を歩いてほしいの!!
2人のこの姿をみたら、絶対欲しくなるもの。
あー。2人がじゃないわよ。マントの方ね。
まあ、2人とも一緒だと嬉しいけど。なんて、じょうだんよ。怒らないでね。
そのデザインは、新しいデザインなの。こんな可愛いデザイン、なんで気づかなかったのかしら。
自分の頭にもついているのにね。
それは、いいとして、宣伝してほしいのよ!お願いできるかしら!」
ミミカさん、大興奮でマシンガントークがほとばしった。
フリードとクロムは、2人がいいならいいよ。と言ってくれた。
ヒナはこれをきて街を歩けると聞くと、大はしゃぎだった。
アレクも、しょうがないなとはいうものの、嬉しそうに笑った。
「おっけ!じゃ、マントは一旦預かるわ!
しっかり仕上げるから、楽しみにしていてね!」
そういって、マント以外の買い物を済ませて、ホームに帰った。
そして、オルガの一言。
「お前ら……外に出るたびに何かやらかすよな?」
「なりゆきで、そうなっちゃっただよ」




