53. 魔の森での戦闘(フリード編)
戦闘シーンがあります。苦手な方はスルーしてください。
フリードは森の中を――
「ひゃっぽーーーーい!!」
……飛んでいた。
いや、正確には“飛ばしてもらっている”に近い。
風魔法で飛ぶ研究をずっとしていたが、
少し浮くことはできても、飛ぶのは難しい。
風の向き、魔力の流れ、姿勢……全部バラバラになる。
(うーん……精霊に頼めたら楽なんだけどなぁ)
でもフリードには精霊が見えない。声も聞こえない。
親和性もゼロ。
そこで、ひらめいた。
「妖精なら……仲良くなったら力貸してくれないかな!?」
妖精は好奇心旺盛で、楽しいことが大好き。
しかし、人間があまり好きではないらしく、あまり人前に出ない。
でも、仲良くなれば力を貸してくれるかもしれない。
フリードはすぐ行動した。
クロムがちびたちにクッキーを作っているのを見て、
フリードは隣で妖精用のクッキーを作ることにした。
「妖精って甘いもの好きだよな……よし、卵なしのはちみつクッキーを作るぞ!」
クロムのサポートもあり、
『フリード特製はちみつクッキー』が完成した!
クロムには、
「妖精って人があまり好きじゃないし、
力借りれるかわかんないから、みんなには秘密な!」
と、秘密でやることにした。
ダメだったら、後で笑われそうだしっ!
パーティーホーム裏の庭へ行き、
妖精がいそうな草花の茂みに向かって、
あまり驚かせないくらいの声でかける。
「妖精さーん!遊ぼうよー!お菓子持ってきたよー!」
(まずは……えづけ作戦!!)
……返事はない。
しかし、フリードは待つ。
ワクワクしながら、じーっと待つ。
すると――
葉っぱの陰から、
ひょこっ と小さな顔が出た。
『……はちみつ?』
『はちみつクッキー……?』
『どうする?』『どうする?』『どうする!?』
妖精たちのひそひそ声が聞こえる。
(顔見えた!!かわいいー)
「おいでおいで〜!手作りで作ったんだよー!
卵なし!はちみつたっぷり!おいしいよー!」
『じゅるっ……』
『手作り……!』
『食べたい!』『食べたいけど……。』
妖精たちは警戒しながらそろそろと出てきて、
クッキーを一枚ずつ取っては、
ばぴゅんっ! と草花の陰に戻っていく。
これを何度か繰り返すうちに――
妖精たちはフリードを見ると
わーい! と寄ってくるようになった。
(えづけ成功!!)
そこからはもう、毎日が遊びの連続。
魔法で遊ぶ。
走る。
追いかけっこ。
かくれんぼ。
妖精の頭は撫でてみたり、
妖精がフリードの髪の間にズボッと入ったり出たりして遊んだり。
妖精たちはとにかく好奇心旺盛で、
面白いことがあればすぐ飛んでくる。
フリードも負けずにワクワクしていた。
ある日、フリードは妖精に相談した。
(さぁ!勝負だ!!)
「ねえ妖精さん、オレの体を浮かせることってできる?
一緒に飛んで遊びたいんだ!」
妖精たちは一瞬で反応した。
『できる!!』
『飛ぶ!?飛ぶの!?』
『楽しそーーー!!』
『競争しようよ!!』
決定が速い。
さすが妖精。
妖精が魔法をかけると、
フリードの体がふわりと浮いた。
「うわっ……浮いた!?すげぇ!!」
『すごい?えっへん!』
『飛ぼうよ!!』
『競争しよ!!』
『あっちまで行こう!!』
フリードは風魔法を追加し、
勢いよく空へ飛んだ。
「うおおおおお!!飛べたぁぁぁ!!」
空で追いかけっこ。
木の間をすり抜ける。
葉っぱを避ける。
一回転してみる。
妖精が笑いながらついてくる。
『フリード速いー!』
『もっともっとー!』
『あはははは!!』
フリードも妖精も、
空で笑い転げていた。
その中の一人――
小さな緑の妖精が、特にフリードを気に入ったらしい。
『フリード、すき!いっしょにいる!』
それが、今の相棒――
妖精のリーフ だ。
***
そして現在――
「リーフ!いる?」
『いるよ!!飛ぶ!?飛ぶ!?』
リーフは今日もテンションMAX。
「うん!今なら誰もいないから、思いっきり飛ぼう!」
『やったーー!!魔法かけるね!えいっ!』
フリードの体がふわりと浮く。
「ねえ、リーフ。仲間、何人か呼べる?
お願いしたいことがあるんだ」
『よぶ!!よぶよぶ!!』
リーフは一瞬で仲間を4人連れてきた。
『きたよー!』
『なにするの!?』
『遊ぶ!?遊ぶ!?』
『仕事!?仕事もする!!』
フリードは笑って説明する。
「今日は依頼で来たんだ。
浅い場所にいるはずのない魔物、群れ、若い冒険者の戦闘……
そういうのを見つけたら教えてほしいんだ。
みんなで木に当たらないように避けながら探してね!」
『わかったーー!!』
『任せて!!』
『飛ぶよー!!』
『競争しながら探そー!!』
そして、みんなで森を飛んだ。
木々を避け、
葉っぱをくぐり、
枝の間をすり抜け、
時々アクロバット飛行をしながらも、
ちゃんと仕事はする。
『フリード!見つけたよ!群れがいる!!』
『たまに、いるやつー!』
フリードが見ると、
十数頭の熊の魔物が集まっていた。
「……あれは危ないねー。
半分以下……じゃ足りないな。
2〜3頭くらい残して後は討伐だな!」
『討伐、討伐!』
「よーし、サクッとやっつけちゃうぞー!!」
『いっけーー!!』
『フリード、いくよ!!』
妖精たちのテンションは最高潮だった。
『フリード!あれあれあれ!!』
『くまー!くまー!でっかいのいるー!』
『こわいけど、ちょっとワクワクするー!』
妖精たちが空中でぐるぐる回りながら指さす先には、
十数頭の熊型魔物が集まっていた。
フリードは空中で体勢を整え、
風をまといながら言った。
「よし……2、3頭まで減らすよ。危ないからね」
『やっちゃえー!』
『フリードいけー!』
『まほうまほうー!すっごいの見たいー!』
妖精たちは空中で、手足をいっぱい振り回し、完全に“観客モード”。
フリードは手を前に突き出し、
風と水の魔力を同時に練り上げる。
「――《風水・斬波弾》!」
空気が震え、
風の刃と水の衝撃波が混ざった弾が放たれた。
ズバァァァンッ!!
熊の魔物が一撃で吹き飛び、
後ろの木にめり込む。
『きゃーー!!すごーーーい!!』
『つよっ!!めちゃつよっ!!』
『もう一回やって!!ザパーン!』
『木にめり込んだっ!!』
フリードは笑いながら次の魔法を放つ。
「《風刃・連衝》!」
風の刃が連続で放たれ、
熊の魔物が次々と倒れていく。
数秒後――
残ったのは、わずか2頭。
「よし、間引き完了!」
フリードは空中でくるりと回り、ドヤ顔で完了ポーズ!
魔物の死骸を魔石ごと収納袋に吸い込ませた。
『はやっ!!』
『フリード、すごすぎ!!』
『ねえねえ、次は!?次は!?』
『もっと飛ぼうよー!』
妖精たちは興奮状態で大騒ぎ。
フリードは笑いながら森の奥へ飛んでいく。
その後も、妖精たちが次々と発見する。
『あっちにいたー!』
『こっちにもー!』
『あれ浅いとこにいないやつー!』
「わかったからー。ちょっとまってー!」
フリードは空中で止まり、魔法を放つ。
「《風水・斬波弾》!」
「《風刃・連衝》!」
「《土槍・穿突》!」
風の刃と水の衝撃波が混ざる高速弾、
風の刃を連続で放つ高速連射、
地面から鋭い土の槍を突き上げる魔法。
全部一撃。
魔物が見えた瞬間、
次の瞬間にはもう討伐している。
『はやっ!!めっちゃ早い!!』
『え、もう終わった!?』
『フリード、かっこいい!』
『すごいすごいすごい!!』
妖精たちは空中で大はしゃぎしながら、
フリードの周りをぐるぐる飛び回る。
また森を飛んでいく。
『フリード!あっち!やばいのいる!!』
『ひとが飛んでった!!』
『しんじゃうしんじゃう!!』
「えぇ!!」
妖精たちが慌てて指さす方向へ向かうと――
若い冒険者が、
シカ型の魔物の立派な角に弾き飛ばされていた。
「わぁ!!飛ばされた!!」
『シカの魔物の角、すごい大きい!!』
『あれは痛いーーーー!!』
『シカの魔物、体がすごく大きい!見てるだけでこわい』
『若い子たちがあぶない!!』
地面に倒れ、動かない。
でも、呻いているから大丈夫。
仲間らしき冒険者たちも傷だらけで、
武器を震える手で構えている。
その正面には、
角を構えたシカ型魔物が4匹。
土を前足で蹴っている、今にも突撃しそうだ。
妖精たちは一瞬で姿を消す。
(妖精は、基本人に見られるのを嫌がるからな……)
フリードは風魔法で加速し、
空中から声をかけた。
「大丈夫かー!?
オレはA級冒険者パーティー『銀翼のフェンリル』のフリードだよ!
加勢する?それともオレに任せる?」
若い冒険者は驚きで口を開けたまま固まっていたが、
やっと声を絞り出した。
「……!」
(動けないのかな?)
フリードはにっこり笑う。
「じゃあ……全部オレが倒していいかな?」
「お、お願いします!!」
若い冒険者は、はっとして答える。
「おっけー!まかせなさーい!!」
次の瞬間――
フリードは空中で魔力を爆発させた。
「――《風水・連閃砲》!!」
ドガガガガガッ!!!
風と水の魔力を高速で圧縮した連続砲撃が
シカ型魔物4匹を一瞬で貫き、
全てが倒れた。
若い冒険者たちは――
「……え?」
「……は?」
「……う、浮いてる……?」
「……一撃……?」
「……全部……?」
完全に固まっていた。
フリードはふわりと降りてきて、
倒れた冒険者に回復ポーションを渡す。
「大丈夫?
魔石と魔物は、収納袋に入れられるだけ持っていっていいよー。
オレは依頼中だから、残りは回収しておくねー」
「……あ、ありがとうございます……!
俺たち、C級冒険者パーティー『新緑の息吹』です。
助けていただき、ありがとうございました!!」
「すご……すごすぎる……」
「魔法使いって……あんな……かっこいい……」
「フリード様……かっこいい……」
「空……飛んできた……すげーー!!!」
憧れのまなざしがフリードに向けられる。
フリードは照れくさそうに笑った。
「じゃ、気をつけて帰ってねー!じゃーねー!!」
若い冒険者たちが去ると、
隠れていた妖精たちが、待ってましたとばかりに
一斉に飛び出してきた。
『フリードすごーーい!!』
『かっこよかった!!』
『びゅーんってして、どーんってして、ばーんってした!!』
『もう一回やって!!』
大はしゃぎである。
フリードは笑いながら空へ飛び上がる。
「すごかっただろう!えっへん!
よーし!まだまだ間引きは続くよー!
みんな、また教えてねー!」
『おっけー!!』
『フリード楽しい!!』
『競争しよ!!』
『あ!フリードまってよーー!!』
「ねぇ。今度、オレの仲間に紹介したいなー」
『かんがえとくーー!』
リーフは少し考えて保留にした。
こうしてフリードと妖精たちは、
その後も森の空を自由に飛び回り、魔物の間引きを続けるのだった。




