52. 二つ名メーカー『ヒナ』
人前で読まないことを推奨します!
今回は長めになってしまいました。
銀翼のフェンリル達が魔の森で戦っている時、
アレクとヒナは、冒険者ギルドのギルドマスターの部屋に突撃していた。
コンコンッ!
ギルドマスター室の扉を叩く。
「ギルドマスター入っていいですか?」
「ギウマス、いいです…かー!」
「あ?アレクとヒナか。いいぞー」
ギルマスの返事を聞いて、中に入ろうとする。
だが、背が小さいので、ノブを回すのも大変だ。
手が滑ってうまく回せない。
『カチャッ……カチャッ……カチャ……』
「あれぇ……?」
「ひなが、やる……!うーーーーん」
ヒナの手は、ノブにも届かない……。
「そもそも、てがとどかないじゃん……」
「う~」
(2人の一生懸命さが伝わってくるな……)
ギルマスはそれだけで癒された気がした。
中から「ぷっ……くくくっ……!」と笑い声が聞こえてきた。
と、思ったら、中からノブを回してドアを開けてくれた。
「あ、ギルドマスターありがとうです」
「あいがと」
中に入れてもらうと、デスクの上に書類の山が出来ていた。
「いそがしかったら、ほかのひとに、きくよ?」
「あ?いや、大丈夫だ。気分転換したかったんでな」
「ありがとう」
ソファーに座るように勧められ、
2人してギルマスの隣によじ登る。
「それで、聞きたいことってなんだ?」
「うん。あのね。銀翼のみんなの二つ名ってどうやってついたの?」
「なんだ?二つ名に興味があったのか」
「うん!だって、かっこいいし!」
「アレクも男の子だな!わははっ!
二つ名ってのはな、そいつの強さや特徴、能力とか武器、そして性格から作られたり、組み合わせて作られるもんだな。と言っても、何か功績をあげたものが、『いつのまにか言われるようになってた』って
しろものだな」
「ふーん」
「ふ~ん」
アレクの真似をしてわかったように言うヒナ。可愛い。
コンコンッ!
「失礼します」と言いながらお菓子とフルーツジュースを持ってきた事務員。
「ありがとうございます!」
「あいがと…ごじゃます!」
「ふふっ。どういたしまして」といって、事務員さんはすぐに出て行った。
「銀翼の二つ名についてだったな」
「はい!」「あい!」
ギルドマスターは、コーヒーを飲みながら、一息はく。
「じゃあ、ジークから話そうか。」
「じーくのらいえんてい!」
「らいえんていってなに!?」
「つよそう!!」
「かっこいい!!」
子供たちの目がキラキラしてる。
やっぱり、二つ名というのは子供の憧れなのだろうか。
ギルマスはそう思いつつ、暖かな目で微笑む。
「ジークの適性は、雷と火魔法なんだ。
しかし、ジークはあまり魔法をそのまま使うのが得意ではなかったんだ。
そこで、愛用の大剣に魔法を這わせて使うことにした。
そのスタイルがジークにぴったり合ってな。
もともとの大剣での豪快な戦いに、魔法をプラスしたら、
飛んでもなく派手で豪快な攻撃技になったんだよ。
それからというもの、どんどんその実力を伸ばしてな。
見る者を魅了するその豪快な戦いに、
いつの間にか冒険者たちの間で
「雷炎帝ジーク」と呼ばれることになったというわけだ。」
「ジーク、かっこいい!」
「ふわわ~!」
お子様2人は目を輝かしている。
(面白い……)
「次はオルガか」
子供たちが反応する。
「「おるがーー!!」」
笑いながらギルマスは話し出す。
「オルガの二つ名は『神速のオルガ』。
あいつの戦い方は、
”風魔法を駆使した超高速のアクロバティック接近戦”でな、
魔物を翻弄しながら戦うスタイルなんだ。
冒険者たちからみたら、早すぎてオルガを目で追えねえんだよ。
それで、冒険者たちの間で「神速のオルガ」と呼ばれるようになったんだ。
ヒナがうんうん言い出す。
「……ひな……おるが……みえなかった……」
「だろ?」とギルマスが笑う。
「……おるが……にんじゃみたい……!」
「『にんじゃ』とはなんだ?オルガみたいな戦闘する者か?」
アレクは、はっとしたように一瞬固まり、
「うん。そんなかんじ!」とうなずく。
(極秘情報だが、アレクは転生者だったな。
転生前の世界でもオルガみたいのがいたのかと、転生前の世界に興味をもった)
「次はエルミーだな」
「「えるみー!」」
「エルミーの二つ名は『疾風のエルミー』」
「「しっぷう?」」
「そうだ。エルミーは精霊たちに力を貸してもらって戦う弓使いだ。
特に風精霊との相性は抜群で、矢が疾風のごとく飛び、
魔物をあっというまに討伐するんだよ。
そこから冒険者たちの間で「疾風のエルミー」と呼ばれるようになったんだ。
ヒナがキラキラした目でギルドマスターを見ている。
「えるみーのまわりにはね、いろんな……せいれいしゃんが……いっぱいいるの!
せいれいしゃん、えるみーが、だいしゅきなんだって!」
ヒナが興奮気味に教えてくれる。
アレクも思い出した。
「たまに、えるみーが、たくさんのせいれいに遊ばれて、だきつかれて、せいれいだんごになってる」
「団子?」
「せいれいに、もみくちゃにされて、だんごになってる」
「もみくちゃって。くははっ。本当に精霊に好かれているんだな」
「「うん」」
「さて次は……年少組の片方のフリードか。
フリードの二つ名は『魔精霊フリード』という」
「……ふりーどが……“ませいれい”……?」
「ふりーどって”せいれい”なの?」
「あははっ。精霊ではないが、精霊みたいに魔力量がかなり多い。
それに、あの性格が、天真爛漫で精霊みたいだと言われてな。
あと、攻撃魔法は、魔法研究とやらで、見たこともない魔法をいくつも作って使いやがる。
それがまたすごい威力でな。人間にそんなのムリっていう奴もいる。
それでいつのまにか、
冒険者たちの間で『魔精霊フリード』と呼ばれるようになったんだ。
「てんしんらんまん!あははっ!たしかにせいれいみたいだね!」
「おぉー!せいれいしゃんがみえたら、
すぐなかよく、なっちゃいそう、だね!」
「だははっ!そうだな!
もしかしたら、もう見えてるかもしれんな」
「そして、最後はクロムだな。年少組のもう片方。
クロムは聖魔法が得意だ。見方にサポート系の魔法をかけたり、回復魔法をかけたりする。
中でも、回復魔法は欠損も修復するほどの使い手だ。これはなかなかいないんだぞ。
ギルド内でも、クロムに命を助けられた冒険者がたくさんいてな、
いつのまにか冒険者たちの間で『聖天使クロム』と呼ばれるようになったんだ。」
「くろむって、せいてんしなのに、くろくなるよな!!
いつものが”せいてんし”なら、くろいときは”だてんし”かな」
「だてんし……たしかになっ!わはははっ!」
「……みんな……すごい……!
おれも……いつか……ふたつな……ほしいな……!」
「……ひなも……!」
「2人にもそのうちすごい二つ名がつくかもな」
ギルマスはそういうと優しく2人の頭をなでる。
「フェンリルのリオンは、まだ二つ名は聞こえてこないから
まだついていないんだろうが、そのうちつきそうだな」
「「どんなのになるんだろうね」」
「楽しみだな」
「ねえ、ほかのぼうけんしゃも”ふたつな”あるんでしょ?」
「あぁ!既に二つ名持ちはいるぞ!」
「よし!ききにいこう!」
「わぁ!!ひなもいくー!」
2人は元気よく立ち上がると、
ドアの方へ走っていく。
『カチャッ……カチャッ……カチャ……』
そして、やっぱりノブに手が届かない……。
「だははっ!いってこい!」
ギルマスがノブを回して開けてくれた。
急いで隙間からでて、振り向き、
「ギルマス、ありがとう!!」
「ありが…と!」
一言ずついうと、再び走り出して、階段を下りる音がした。
「あいつら、すっかり冒険者たちに懐いたな。あははっ!」
***
「すいません!ふたつな、おしえてください!」
「くだしゃいっ!!」
受付カウンターの近くで、2人が急に冒険者たちに声をかけた。
すると、冒険者が面白がってわらわら集まってきた。
「俺の二つ名は『寄り道』だ。パーティー名とお揃いだ」
「おるそーさん!じゃあ、『よりみちのおるそー』なの?」
「そうだぞー。のんびりしてていいだろー。気に入ってるんだ。あははっ!」
「俺の二つ名『俊足』だっ!」
「え~!それ、自分でつけたやつじゃん、お前より俺の方が足早いし!」
「うぐっ!」
「なーんだ!ずるしちゃだめだよー」
「うぐぐっ!」
「じゃあ、おれとひなでつけてあげる!!
「つけるー!!」
「おー!なんだなんだ?面白そうなことしてんな!」
「まだ二つ名持ってないやつに、つけてやれ!」
冒険者が面白がって幼児二人を煽る。
「ひな……あのひとは……?」
「……つける……!」
通りすがりの冒険者Aをアレクが捕まえる。
「えっ、俺?」
アレクはヒナに付け方を教える。
「ひな、ふたつなっていうのは、
さっきぎるますがいってたよね。おぼえてる?」
「うん!おぼえてる!」
ひながぐぬぬと真剣に考えている。
そして……。
「……“おおきいくつした”!」
冒険者Aがあっけにとられる。
まわりの冒険者が爆笑しだす。
「なんで!?」
「……くつ……ながい……から……(どやー)」
(ひながドヤ顔をしている。面白過ぎる)
「だははっ!お!それじゃあ、何か用がある時は、
『これはこれは、”ながいくつした”の!調子はどうよ!』
って声をかけるのかよ。くっくっく。
気が抜ける二つ名だな!あははっ」
「ほんと、気が抜ける二つ名!あははっ!
可愛くていいと思うぞー!くくくっ」
「やばい、おもろい!ひな最高!」
「確かにロングブーツだけどさ!?」
ヒナはまわりの冒険者たちに喜ばれて満足そうだ。
そして味をしめたヒナは、次を探すようにまわりをきょろきょろしだす。
そこに勇者があらわれた!
「俺は?俺は?」
「おー!勇者がきたぞ!
自分からひなに付けてもほしいだなんて!なんて勇気だ!」
「がははははっ!」
「ひな、すごい二つ名つけてやれ!」
「わかった!」
「うーん。……“もじゃもじゃのひと”!」
二つ名を頼んできた冒険者が崩れ落ちた……。
「ひーっ!!だはははっ!笑い過ぎて、腹がいたいーーー!!」
「よー!『もじゃもじゃ』!あはははっ!みんな髪型を見るぜっ!」
あれくが一応理由を聞いてみる。
あと、少し可哀そうなので、フォローも入れてみる。
「やっぱり、かみがもじゃもじゃだからか……?
ちょっとかわいそうかなー。あのひと、とってもやさしいひとなんだよ。
いつもしんせつにしてくれるから、もうすこしいい”ふたつな”にしてあげようよ」
「うーん。やさしいひと。じゃあ、……やさしいもじゃもじゃ……(どやー)」
「や、やめてぇぇぇぇ!」
「もじゃもじゃから離れてねぇ!!!ひ~!腹が~!!」
「だははははっ!もうだめだ!ひ~~!」
「面白過ぎて、腹が痛い!」
「やさしい……もじゃもじゃ……。
もじゃもじゃ……、いいと……、思う、ぞ……。
覚えやすくて……。
ぷくくくっ!ぐふーっ!」
二つ名を頼んだ冒険者が瀕死の重傷を負った。心に。
(この二つ名が広まらないことを祈ろう)
そっとアレクは祈るのだった……。
今度は珍しく髭の長い年配の冒険者が名乗り出た。
もう引退しててもおかしくない年齢だ。冒険者家業が好きなんだろうな。
そろそろ引退を考えているんだろう。思い出作りだろうか?
「俺にも頼むよ!」
「大丈夫か?とんでも二つ名が付きそうだぞ」
「それもまた面白そうだ!」
「ひなせんせい、おねがいします!」
アレクが何かになりきって、うやうやしくヒナを促す。
「ふむ。うーーーーん。……“おひげのかみさま”!」
「ぐふっ……。くくくくっ」
「とうとう人間やめちゃったな!」
「俺、神になっちまった……!」
「拝んだら、なんか加護くれそうだな!」
「髭が伸びる加護な!!あははっ!」
「剃るのが大変になるからやめてーーーーっ!」
ひなは喜ばれていると思い、
その後も何人かに、ヒナ流の二つ名をつけては、
冒険者たちを泣き笑いの渦に沈めた。
そんなヒナは、ご満悦そうに『二つ名メーカー』と化している。
気が付くと、ギルドマスターも近くで大笑いしていた。
「お前ら!いい二つ名をつけて貰えてよかったなー!がはははっ!」
「ギルマス!助けてくれ!本当に二つ名になっちまいそうで怖い!」
「いいんじゃないか?親しみやすくてよ!がははっ!」
「そんなー」
「じゃあ、最後に、俺からも2人に二つ名をつけてやろう。」
ギルマスが優しい顔で2人に話しかける。
「「ほんとー?」」
2人も期待に目を輝かせる。
「ああ、アレクは、”守護のアレク”、ヒナは、”精霊姫ヒナ”。どうだ?かっこいいだろう!」
「じゃあ、俺も!アレクは、”回復師アレク”、ヒナは”聖女ヒナ”。よくない?」
「俺もつけるー!アレクは、”みんなの弟アレク”、ヒナは、”みんなの妹ヒナ”。おれの弟妹にもなるぞ」
それ以外にも、アレクとヒナはいっぱい二つ名をつけてもらい、
どれにしようかなーとご満悦の2人だった。




